第151話理想の男性像
◆
──と、いう母親の姿は嘘であり、全てはカレンドールの母であるマーガレットが調べに調べ尽くした上での判断である。
むしろ今まで男に興味がない娘がいきなりソワソワし出し、何事かと少しばかり娘の身辺を調べさせれば一日もかからずに恋にお熱である事が分かった。
初めこそは娘は自分の恋心にすら気づけていないみたいであり、それを遠くで眺めるのは可愛く、いくらでも見ていたいと思える程であったのだが、だからこそ母親であるマーガレットは危惧した。
今まで男性に興味が湧かなかった反動で悪い男に騙されやしないかという事も大いにありる。
そういう男性は基本的に恋愛経験が豊富であり、カレンドールの想像する理想の男性像を演じる事など造作無いであろう。
その事を考えると心配で胃に穴が開きそうだと、当時は思った程である。
そしてお父様にこの話を持ちかけてみたら「クズでなければ、もうそのまま結婚してもらおう」というではないか。
その時ばかりは私も夫に「我が娘であるカレンドールが可愛くないのかっ!?」と食ってかかった程であるのだが「もう既に行き遅れと言われ始めている年齢であり、もうこれ以上今のままで蝶よ花よと甘やかして育てればそれこそ本当に婚期を過ぎ去ってしまいかねないではないか。 もしかしたら、我々親が子離れすべきではないのか? カレンドールの子供は見たくないのか?」と言われれば私も言い返す言葉が見つからなかった。
むしろ『我々親が子離れすべきではないのか?』という言葉は私の胸に深く深く突き刺さった。
そして、夫の協力のもとで調べあげる必要もなくカレンドールの意中の相手はあのカイザルであると分かった。
しかしながら、カイザルがどういう人物なのか調べようとしても一向に情報が入ってこない。
まるであらかじめ用意されているかのように『性格が最悪な人物』しか情報が入ってこないのである。
もし、少し前までの私たちであれば『性格がクズで親の権力で怠惰な生活をしている男性』として判断して終わっただろう。
しかしながら我が娘であるカレンドールは良く「あのカイザルに負けた……っ」と夜な夜な泣いている姿を見ているのだ。
そのカレンドールは、親の子自慢ではないが学園内でもその実力は上位一位であり、その娘が負けたと泣いているのだ。
それも娘の話を聞く限り手も足も出なかったというのだからその実力は相当であろう。
普通、クズで怠惰な性格をしているような性格の人物がカレンドールよりも、毎日朝も夜も練習しているカレンドールよりも強いというのにははっきり言って違和感しかなかった。
そして、それは当然この調査結果にも同様に何かがおかしいと思うのも当然であろう。
カイザルは何かを隠している。
そう判断するのにあまり時間は掛からなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます