第118話 豹変する

「お兄様、少しお聞きしたい事が……」


 そして私はノックをしてお兄様の部屋に入るのだが、そこには何かの薬を飲んでいるお兄様の姿がそこにあった。


「お、お兄様……その薬は……?」


 まさかお兄様が、とは思うものの、嫌な胸騒ぎが消えて無くならない。


「あぁ、これかい? これは闇ギルドから譲ってもらった魔力を一時的に増幅してくれる薬んんだよ」


 そしてお兄様は、なんの悪気も無いような、むしろ私に自慢するようにその薬の効能を喋り始めるではないか。


 目の前で今私に向かって話している人間は誰なのだろう?


 本気でそんな事を考えしまう。


 あのお兄様が……あんな物を飲む意味がわからない。


 それこそ、目の前の人物が本当にお兄様かどうか分からなくなってしまうくらいにお兄様とあの薬が私の中で結び付かない。


「ど、どうしてそんな物をお兄様が……」

「そんな物? そんな物だとっ!?」

「お、お兄様……?」


 そして私がなぜお兄様がその薬を使っているのか聞くと、先程まで上機嫌であった兄様の表情は怒りの表情へと豹変する。


「貴様に、天才であるお前にに何が分かる? 薬無しで氷の華を咲かせる事ができるお前には、才能が無い俺の気持ちなど分からないんだろっ!?」

「そ、そんな……」

「俺は長男なのにどんなに努力しても薬が無いと氷の華は一つも咲かせる事ができないんだよっ! なのになんで家を継ぐ必要がないお前が俺よりも才能があるんだよっ!? おかしいだろっ! なんで俺ではなくお前なんだよっ!?」

「お、お兄様っ」

「あ……っ、す、すまん。 取り乱してしまった。 だが、お前は俺の気持ちを分かってくれるよな?」

「…………」


 そう言うお兄様に私は言葉を返す事ができなかた。





「それで、私を呼んだ理由を聞かせても良いですか? 早くご主人様の元へ戻りたいのでお早めにお願いしますね」


 私はあれから一人でどうすれば良いのか考えたのだが、結局何も答えが見つからないまま数日が過ぎ、気が付けば藁をも縋る思い出ブリジットさんを人気のない校舎裏へと呼び出していたのだが、ブリジットさんは興味なさげな視線を私に向け、早く戻りたいと言う。


「ブ、ブリジットさんは氷魔術の【氷華】という魔術を行使できますか?」

「あぁ、あれですね。 こないだご主人様が使ったのを見て、教えて貰ったんですよ」


 そしてブリジットさんは氷の華を無詠唱で咲かせるではないか。


「流石にあの時のご主人様のような数はまだ無理ですけどね。 ご主人様のあれを見てからだとショボいかもしれないのですが、今は十個同時が限界です。 ……それで、これが聞きたかった事ならばもう帰っても良いでしょうか?」



 

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