第114話 俺の役目

「……カレンドールさん…………?」

「ひぇっ!」

「え……っと………何やってるんだ?」

「ひぃっ!! 御免なさい御免なさいっ!! カイザル様の奴隷になりますので私を許してくださいっ! お願いしますっ!!」


 とりあえずカレンドールさんが土下座している意味が分からないので一応声をかけて土下座をやめさそうとするのだが、声をかけるだけで何かに怯えるように俺の奴隷になると言い始めるではないか。


 意味が分からない。


 寝る前は俺に噛み付いてきていたカレンドールさんが、仮眠から目覚めると土下座しながら俺の奴隷にして欲しいと懇願し始めているのである。


 どうしてこうなったか理解できる奴がいたら説明してほしいレベルで摩訶不思議な光景である。


 狐に化かされたと言われても信じれるほどだ。


「ガレット、どういう事だ?」


 流石に意味がわからないのでカレンドールさんの横にいるガレットへと聞いてみる。 


 あぁ、胃が痛い。


「簡単なことですご主人様。 僕のご主人様をここまで馬鹿にされたのにも関わらずそのまま有耶無耶にされて終わりでは僕もブリジットも納得いくわけもなく、彼女が心の底からご主人様に忠誠を誓い、奴隷になると言うまで腹を殴っては回復させるという事を繰り返したまでですっ!!」

「…………えぇ、何やっちゃってんの?」


 もはや驚く事を忘れて俺は軽く引いていた。


 だってもうこれイジメじゃん。


 ダメな奴だろどう考えても。


「ブリジット」

「はいっ!!」

「ガレット」

「は、はいっ!!」

「ここに正座しなさい。 いいか? お前たちがカレンドールさんに行った行為はただの暴力だ。 俺はカレンドールさんに暴力を振るえと言ったか? 言ってないよな? 特にガレットは俺に引き取られる前に逆らえない状態で酷い事をされたのにも関わらず、何でそれをされた側の気持ちが分からない?」


 そして俺は二人にこんこんと説教をし始める。


 当たり前である。


 今この二人は奴隷であり、その奴隷の所有者は俺なのだ。


 ならばしっかりとダメなことはダメだと、さとし、叱り、怒り、彼女たちに常識を叩き込むのも俺の役目だと思っているからである。


 きっかけはどうあれ、奴隷として彼女たちを引き取ったのならばいい加減な事はしないというのが、俺の決意でもあり背負うべき物だと思っている。


「お前たちの俺を思う気持ちが暴走した結果だとは思うから今回は許すけど、次からは気をつけるようにな? あと、俺のために動いてくれたその気持ちは嬉しかったから、次は人として恥ずかしくない行動を取るように」


 そして三十分ほど説教をし終えて、ブリジットとガレットの頭を少しだけ乱暴に撫でてやる。

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