第72話ほんっっっと、使えないわね
そして俺は憂さ晴らしをする為に休日は魔獣狩りをしょうと思うのであった。
◆
相変わらず俺を見る周囲の目は変わらない。
当たり前だ。
俺自身が俺の評価を良くしようと行動に移していないので俺の評価も良くなる訳がないだろう。
「なあ兄さん、魔術の練習に付き合ってよ」
「そうね、兄さんが魔術の練習に付き合ってくれたら私達とっても助かるんだけどなぁ」
そんな俺なのだが、今日は弟と妹から魔術の練習に付き合って欲しいとお願いされていた。
普段であれば決して顔すら合わせようとしない二人なのだが今日に限っては二人とも顔を合わせるだけではなく、声まで向こうからかけてくる。
普通に考えれば、弟と妹が兄へ魔術の教えを請う微笑ましい光景なのだろうが、実際はそうではない。
そもそもこの二人にそんな考えが浮かんだことなど一度たりともないであろう事ぐらい手を取るように分かる。
「は?そんな事嫌に決まっておろう。 何で俺が貴様らの面倒を見なければならぬ」
「ぐっ、い、言わせておけば……」
「ゴミ虫のくせに……」
「ん?なんか言ったか?
「いえ」
「何も」
そして今コイツらがなぜ兄である俺を魔術の練習に誘っているかというと、ただ単に俺を的にして攻撃魔術の練習台にしたいだけであろう。
動く的というのはそれだけでいい練習になるものである。
だからと言って森に入って魔獣狩りをし、怪我でもしてしまったら元も子もない。
そして、弟と妹は来週、攻撃魔術の実技試験があるらしい。
そこで良い練習台として俺が選ばれたわけだ。
動く的で練習ができ、さらに目障りな俺へ攻撃する事でストレスも発散でき、さらに上手く行けば俺を消す事もできる。
弟と妹にとっては良い事しかないのだが、俺にとって何一つとして良い事などある訳もなく、そしてそんな事にいちいち付き合ってやる義理もない為当然断ると、二人は見るからに不機嫌になって行くのが手に取るように分かる。
こんな調子では貴族の世界で暮らしていけないだろう。
もう少し頑張ってもらいたい限りだ。
「何二人の願いを断っているんだ?カイザルよ。魔術の才能も無く、剣術の才能もなく、できる事といえば我が家に泥を塗るだけのお前が、弟と妹のお願いを断る事ができる立場であるとでも思っているのか?」
「そうですよ、兄さん。 兄さんはただでさえ僕達家族に迷惑をかけているのですから、こういう時くらいしか無いでしょう?僕達の役に立つ時なんか。 そんな兄さんに僕達がわ・ざ・わ・ざ・兄さんが役に立つような場を提供してあげているというのに」
「ほんっっっと、使えないわね」
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