第50話膝から崩れ落ちる

「ブリジット」

「はいカイザル様っ!!」

「おれ出席日数が危ない教科があるから授業受けに教室に戻るわ。 置いていくのは申し訳ないがキリが良い所で切り上げてくれ」

「分かりましたっ!! ですが既に打つ手など開始十分で無くなっておりますのでカイザル様と共に私も教室へ戻らせて頂きますっ!!」

「まぁ、ブリジットがそれで良いのならば何も言わないが……」


 クロード殿下はそうもいかないだろうな。


「ちょ、ちょっと待ってくれブリジットっ!! まだだっ! まだ何か対処法があるはずだっ!!」

「私の意見も、カイザル様の意見も聞かずに、私が好意を寄せている男性であるカイザル様が気にいらないからと、その男性であるカイザル様の周囲からの評価が低い事を良い事に半ば強引に決闘を申し込み、更には決闘に賭けた内容を後から訂正しようとし、皇族と言う権力を使い逃げ場をなくした上に、洗脳などされていないという私の言葉にも耳を傾ける事なく、典型的な解術を施しても私の好意を寄せる男性がカイザル様のままであり、自分の思い通りにならないからと駄々をこねて更に私達を引き留めるというのですか? それになんですか? カイザル様が勝ったら金貨十枚って。 それは私の価値が金貨十枚っていう事ですか?」

「い、いや違うんだブリジットっ!! 俺は君の為を思ってだな──」

「私は、そういう男性が大っ嫌いですっ!! もう私に関わらないでください。 今のクロード殿下は、以前より嫌いだと言っていたカイザル様の姿そのものではないですか。 最低です」

「そ、そんな……この俺がカイザルと同じ……だというのか……?」


 そしてやはりなおも食い下がろうとするクロード殿下なのだが、ブリジットがそれに止めを刺し、クロード殿下は絶望した表情で膝から崩れ落ちる。


「ささっカイザル様、やっと解放されましたしこの隷属の首輪を早く付けてくださいっ!! 今現在私はカイザル様の奴隷ではないと思うとそわそわして安心感が無く心もとないのです」

「分かった、分かったから落ち着け」


 そしてクロード殿下へ向けていた敵意丸出しの表情からプレゼントが待ち遠しい子供の様な表情へ一瞬にして切り替わったブリジットが早く自分を俺の奴隷に堕としてくれとせがんでくるのでさっさと首輪を付けてやると、実に嬉しそうな表情をするので思わず見とれてしまいそうになるのをぐっと我慢する。


 はぁ、明日から俺の悪い噂に『奴隷に首輪をつけて悦に浸る屑』というのが加わっているのだろうと思うと溜息が出てしまうのだが、あの無邪気な笑顔を見れたので良しとしよう。

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