第8話殺すなら絶好のチャンス






 クヴィスト家なのだが何故長男である俺がここまで家族に嫌われているかという理由なのだが当主であり俺の父親でもあるグルド・クヴィストは妻を二名娶っていた。


 最初に娶ったのは親の決めた婚約者であった俺の母親でもあるリーファ・ドミナリア、そして次に娶ったのが当時不倫関係にあった現在の妻アイリスである。


 そもそもグルドはリーファの事を愛していなかったのだが領地経営が傾きかけていたクヴィスト家は多額の資金援助を得る代わりに男爵家の長女リーファと婚約した。


 その為クヴィスト家は公爵家にも関わらず男爵家であるドミナリアに頭が上がらない──と本人達は思っているのであろうが俺からしてみればその態度はドミナリア家を見下しているのが滲み出ていたのだが──という現実に日々ストレスを抱えており、更にリーファを嫁がせる条件としてリーファ以外の妻は娶らない事を条件に出されているという事もグルドは我慢ならなかった様である。


 そして産まれた俺は魔力適正が低く、その一年後愛人が産んだ腹違いの弟、そして更に一年後に産んだ腹違いの妹は魔力適正が非常に高く、将来有望であった。


 グルドとしては愛していない女性が産んだ才能の無い息子よりも、愛している女性が産んだ才能がある息子にクヴィスト家を継がせたいと思うのは、彼にとっては自然な事だったのだろう。


 しかしその為にはリーファと俺が邪魔になってくる。


 そんな時、リーファが乗っていた馬車が山道の崖沿いを走る時のに車輪が外れて転倒し、死亡。


 原因は車輪が破損による事故死として片付けられた。


 当然ドミナリア家は納得するはずもなく抗議するのだがグルドは下手に出る理由が無くなったとばかりに横柄な態度で追い返し、更にカイザルの養育費を寄越せとたかり始めた。


 そんな父親の態度は当然子供や使用人にも伝わり、使用人達や弟と妹はそうするのが当たり前であるかの如く兄を見下し、兄は自暴自棄になり、今に至る。


 因みに馬車は捜査の手が入る前に全焼しており事故か事故に見せかけた殺人かすら、手がかりすら分からない状態にされていた。


 そして後は俺を消すだけで弟が晴れてクヴィストの家督を継ぐ事ができるという訳である。


 そんな時に俺は冒険者業を始めたのである。


 殺すなら絶好のチャンスとでも思っているのだろうな、俺の父親は。


 先程からクヴィスト家のメイドがバレずに尾行しているようであるのだが数日前からマップ上の彼女の位置を示す丸い点は真っ赤な色をしていた。

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