お手軽な冒険
星埜銀杏
#01
…――フム。お前はゲームが嫌いなのか。それにしては珍しい。
目の前には閻魔大王。
今から、俺は、地獄の王であり、裁判官でもある閻魔大王から沙汰を得るわけだ。
生前、波瀾万丈ながらも数々の偉業を成し遂げてきた俺であるが、この瞬間だけは緊張した。無論、悪い事をした覚えはない。いや、むしろ人類が今まで成し遂げる事が出来なかった偉業を実現していた。ゆえに天国に逝けるとは思う。思うが……。
アレがバレてしまえば、もしかしたらとも心配にもなるわけだ。
まあ、努力が嫌いで楽して生きてきた、とバレてしまうからだ。
ゴクリ。
「お前は、どうやら悪魔と出会っているようだな。相違ないか?」
うおっ。
いきなりバレたぞッ!
予想外の展開過ぎる。
どうする? 殺すか?
たとえ閻魔であろうとも殺れるだろう。あの能力さえあればな。
黙ったままで、あれこれと思案していると。
「しかも能力を授けてもらっているようだな。外見は変わらぬが、パラメーターが変化する内面だけの変身能力か。……まあ、内面だけでも変化する以上、変身だな」
しかし、ゲームが嫌いにも拘わらず、なぜに、このような能力に手を出したのか?
しかも、
パラメーターの変化などという能力を得たとは、なんの皮肉か。
と一人で考える閻魔大王を俺はキッと睨む。
そうだ。
俺には無敵とも言える変身能力があるのだ。
目の前にいるのが、たとえ地獄の大王であろうと、その大王に変身すれば、少なくとも戦闘においての実力は互角。ゆえに勝つ事に主眼をおかず、逃げる事に注視すれば目的を達成するのは容易いだろう。……、いや、ちょっと待て。そう言えば。
生前、神に変身しようと考えた事があった。
その時。
そうか。
そうだったな。能力を授けてくれた悪魔を超える力を持つものには変身できない。
そういうルールだった。という事は閻魔大王には変身できない。
まあ、でも、このまま大人しく沙汰を待ったとしても、決して、いいリアクションはもらえない気がする。変身能力がバレているからな。だったらダメもとでワンチャン狙うのが最善手。よかろう。いくぜ、しかと刮目せよ。嵐を呼ぶ俺の変身を。
変身ッ!
喝ッ!?
俺のパラメーターが、徐々に変化していく。
そして、
変身完了と共に頭の中にステータスウインドウが浮かんでくる。
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