第114話

「私が領地にいる間に、エカテリーゼのことが心配だったから、様子を報告するように頼んでおいたんだ。寂しがってふさいでいないか……もし泣いて過ごしているようならばすぐにでも僕からだとプレゼントを用意してほしいと……」

 エカテリーゼ様の顔色が変わった。

「様子を、報告?……そ、そんな」

「彼だけではない。エカテリーゼの屋敷で働く者にもお金をいくらか渡してお願いしておいた」

 エカテリーゼ様の顔色がさらに悪くなる。

「エカテリーゼが寂しがっているようなら連絡をしてほしいと。お願いした者はしっかり報告してくれたよ。寂しいようで今日はだれだれ様がいらっしゃい部屋の中でお二人で長くすごしておりました。今日も寂しがっているようで、だれだれ様とお出かけなさいました。今日は特別寂しいようで午前中はだれだれ様のお屋敷にお出かけし、そこから二人で仮面舞踏会へと向かいました……と」

 エカテリーゼ様の顔は真っ青を通り越して真っ白に変わる。

「うっ、嘘よそんなの、そう、侍女が嘘をついたに違いないわ!」

 必死に言い訳を口にするエカテリーゼ様の言葉に、お兄様の表情は硬くなった。

「……エカテリーゼ……君のところの侍女は、将来公爵家に連れて行くと言って男爵家のご令嬢や子爵家のご令嬢も多いだろう?貴族に属する物が、公爵家の人間に偽証すればどうなるかくらいは分かっていると思うよ」

 エカテリーゼ様がお兄様の胸に手を当てる。

「ご、ごめんなさい、確かに寂しくて、話を聞いていただいていたの。でも、その、やましいことは何もないわ……ただ、お友達として話をしていただけで……」

 このあたりで様子を見ていた人たちがざわざわと話を始める。

「どうやら白いドレスの女性が問題と言うわけではないようだぞ?」

「エカテリーゼ様と言えば色々と噂があったが本当だったのか?」

「いやいや、どっちもどっちじゃないのか?現にロバート様も別の女性を伴っているじゃないか」

「ざまぁないわね。いい気味よ。将来の公爵夫人に対してと、威張り散らしていたもの」

「侍女に雇われた男爵令嬢たちも随分大変な思いをしているという噂もあったわよ」

 お兄様が目を伏せて、それからゆっくりと視線をエカテリーゼ様の顔に持って行った。

 エカテリーゼ様の手をつかみ、自分の胸元から離すと、すぐにエカテリーゼ様の手から手を引いた。

「それが本当かどうかは、他の者にも確認してみようか。裁判を行えばはっきりするはずだよ。エカテリーゼ……」

 裁判?

 お兄様はそこまで考えているの?

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