ベテラン交渉人の失敗 4

「はいよ」


橘はその隙間に投げ込んだ。


小部屋の中で、がさごそと食事を摂る音が聞こえる。


橘も菓子パンの袋を破り、菓子パンを食べながら漫画本を読み始めた。


食べ終えたのか、静かになる。


橘は漫画本を読み終え、立ち上がる。


本棚から新たな漫画本を手に取り、扉を背もたれにして座った。


「毎回、何でここに来るんだ?」


犯人が話しかけてきた。


「あなたとお話したいからだよ」


橘は返答すると漫画本を読み進める。


沈黙が続く。


読み終えると、新たな漫画本を手に取り、戻る。


小部屋の扉を背もたれにして座った。


「何でここで漫画本を読むんだ?」


「あなたとお話したいからだよ」


沈黙が続く。


「なあ、話をしないか?」


漫画本を半分位読み進めた時、犯人は話を持ち出した。


「あなたは一切話さないと言っていたが?」


「立て篭もった理由は話さない。ここから出るつもりも無い」


「立て篭もった理由について話したくなったら教えてくれ」


「ああ」


犯人は小さく同意した。


沈黙が続く。


橘は立ち上がった。


「どこか行くのか?」


犯人は言う。


橘は無視して本棚へと向かった。


新たに漫画本を手に取り、扉を背もたれにして座った。


「何の漫画本を読んでる?」


犯人の話に対して、橘は無視する。

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