人喰い熊 2

ぼろぼろの刃に太陽光が当たり、地面へ反射する。


その光は地面の無造作な大小の石ころに当たり、乱反射する。


こんな刃では棍棒のように叩く事しかできない。


すぐに勝敗を決めないように、熊は傷だらけに負傷させて、人には使い古した剣を持たせるのだろう。


さて、始めようか。


世直しヒーローショーを!


熊は前足を踏み込み、ジュに突進する。


熊が目の前に差し掛かった。


ジュは剣を下ろして、目を閉じた。


熊は勢いのまま私の左腕を噛んだ。


左腕の骨に熊の牙の鋭さが響く。


予想以上の痛みに顔を歪める。


歓声が止む。


熊の攻撃を受け止める行動が余程予想外だったのだろう。


噛まれた傷口からじわりと血が溢れ出る。


血は腕の腱の凹凸に沿って、指先へさらさらと流れ、ぽたぽたと滴る。


「もう大丈夫だ。ずっと怖かったんだね」


ジュは激しく噛み付き離さない熊の顔を見て優しく言う。


熊の黒目は、おどおどと揺れ動いている。


「マル! いくぞっ」


ジュは叫んだ。


「はい!」


鎧の首元の隙間から、ぬめりとしたスライムが顔を出した。


そのスライムは、ジュの首をかぷっと噛む。


スライムはジュの中に取り込まれて姿を消した。


ジュは空に剣先を掲げた。


「観客よ、見ろ! 動物に恐怖を与え、人は怖い存在だと植え付けてきた姿だ!」


ジュの声は闘技場に木霊して、空へ鋭く突き上がった。


「ジュ! それ以上、出血しては危険です」


マルの声がジュの体の内側で聞こえる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る