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 大晦日までうちの仕事は忙しい。お正月の間の分をホテル・旅館に収めておく物があるからだ。夕方になって、ようやく事務所、倉庫の掃除を終えるのが、7時頃。従業員の皆さんが帰った後、私は事務所にお父さんとお母さんに呼ばれた。


 改まって、お母さんが


「絢チャン、聖女学院に入学願書を出そうと思うの。植田先生も推薦入学が、まだ間に合うし、本町さんなら、充分受かりますって言ってくれているし。お父さんとお母さんも、あそこに入ってくれると、本当にうれしいのよ。行くでしょ」


 私は、困惑していた。中学もモト君と一緒に通おうと思っていたからだ。でも、うすうす、お父さんは私を聖女学院に入れたいと思っていことはわかっていた。私が黙っていると


「お願いよ、お父さんとお母さんはあそこに行ってもらうのが、念願なのよ。高校、大学もエスカレーター式で進めるし。お願い」


 私は逆らえないと思った。


「わかりました。聖女学院に行っても頑張ります。行っても、モト君とは図書館で会って勉強しても良いでしょ」と公立の中学はあきらめたが、モト君にはどういえば良いんだろう。


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