2-⑶

 向こうのお家に着くと、水島君のお母さんが笑顔で迎えてくれた。女の子なので少し驚いた様子だったけどね。


 最初、算数の宿題から始めたんだけど、私はやっぱり、あんまり解らなかった。けれど、水島君は丁寧に説明してくれた。


「ごめんね、ウチは馬鹿だから、あんまり解んなくて」


「大丈夫だヨ、本町は頭悪くないんだから、最初から少しづつやってゆけば、解るようになるって」


 普段と違って、とても優しかった。良かった。お陰でだんだん興味わいてきたかも。今まで、学校の授業なんて興味なくて、絵ばっかり描いていたんだけど。お昼のご飯の時も、お母さんが話しかけてきて色々と聞かれけど、私は嫌じゃなかった。水島君にも知っていてほしかったから。


 帰る時に


「明日も来ていい?」って聞いてみた。水島君と一緒に居るのがすごく心地よい時間だったから。


 彼はお母さんにそのこと伝えてくれた時、すごく喜んでくれた。明日のお昼は何がいいか聞かれたんだけど


「とても、おいしかったので、おばさまの作るもんだったら、私は何でもいただきます」


 ちょっと、ぶりっ子し過ぎたかな。こんな風に言うなんて、自分じゃぁないって、言った後、少し後悔した。気持ちが浮ついていたせいかも知れない。


 駅まで送ってくれた時、


「絢チャンってよんでいいかな」


「じゃあ私もモト君ってよぶネ、私にはチャンはいらないヨ」


 帰り道、にゃにゃしていたと思う。モト君が、もっと身近になれたんだから。この時は、まだ、あそこまでモト君を追いかけていくとは自分でも思っていなかったかな。


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