第38話 「燃え盛る狂鬼再び」

雨昵一家とジン、バクマルは仲間達のいる

焔高に戻るともちろんこっぴどく叱られた。


「今度勝手な行動したらマジで激おこだかんねー」

「ふぁ、ふぁふかっはほ……」


何故かジンだけ負傷しているのをお構い無しに

アカネにボコボコにされていた。


「せっかく回収出来たバイオシートも

いざと言う時に使えなくなってしまうわ……

アカネも傷増やさないでよね」

「ウチはこのアホ共をしつけただけだしー」

「だからってやりすぎよ……」


今回の身勝手な行動で負傷した者達は

すぐに回復し事なきを得た。

結埜も全身の至る所が折れてしまって臓器も

負傷してしまっているがバイオシートのおかげで

丸一日で回復する見込みだ。


「それにしても八蘇木君とイチカは大丈夫かしら」

「すぐにでも彼らの捜索に出向きたいが

今の状況では返って俺達も危ない!!

己の弱さが不甲斐ない!!」


レイとセイヤはもちろん他の仲間達も

ミカドとイチカの安否を心配している。

しかし、黒神アンユが現れてからの異形は

格段に強さが増している故に捜したくても

捜しに行けないのが現実だった。


「皆様!逃げて!!」


勢い良く小屋から出てきたハオリが叫び

何事かと振り返ると小屋全体を覆うほどの

火柱が上がった。


「結埜!!」

「行くなユアサ!!」

「離せッ!!タカオミ!!バジオ!!」

「……ったくツイてねーな」グビッ


小屋にいた結埜を助け様とするユアサを

何とか取り押さえるタカオミとバジオ。


火柱が消え小屋は跡形もなく燃え尽き

現れたのは目覚めた炎狂飢鬼えんきょううえきユキマサだった。


「血を寄越せ……血ィィィイ!!!!」


狂鬼化状態のユキマサは炎を纏った拳で

近くにいた雨昵一家目掛け殴り掛かる。


「おっとさせないぞぉ!!『絞鎖光縛こうさこうばく!!』」


カズイチの技で地面から出てきた

光の鎖で縛られるユキマサ。


「さっ!今のうちに!!」

「助かった!!二人共一旦退避だ!!」

「わかった……」


絞鎖光縛はユキマサの力で解けそうになっている。

しかし、大人しく逃げると見せかけてユアサは

ユキマサに攻撃を仕掛けてしまう。


「ダメです!!ユアサ様!!」

「くたばれイカレ野郎!!『氷掻裂爪ひかれっそう!!』」


ユアサの攻撃が届く前に絞鎖光縛が解かれ

ユキマサは手から火球をユアサに放つ。


「クソが!!」

「ユアサ!!この馬鹿野郎が!!『昇流八風しょうりゅうやつかぜ』!!」


咄嗟にバジオは新技を出し上手く発動。

ユキマサの放った火球がユアサに当たる前に

上空に飛ばされ分散し消えた。


「貴様……殺す……」

「うっしゃー!早いとこ逃げよーぜー!!」


雨昵一家は退散、他の仲間達も既に散り散りに逃げ

ウタカタは責任持ってか、その場に残っている。

そして育ての親を見捨てる訳にはいかない

ハオリもウタカタと共に残った。


「何とか皆さんの逃げる時間だけでも稼ぎます……」

「ウタカタ様も無理せずに逃げて下さいませ」

「ハオリさんこそ戦えるほど回復していないでしょ」

「そうですね……すいません……

お力お借りさせて頂きます」


ユキマサは全身に炎を纏い、

勢い良くウタカタ達に飛び掛る。


「ハオリさん下がって!!」

「はい!」


泡塞血威あぶくみけつい!!』


ウタカタはバックステップしながら

太刀を振るい触れた瞬間に割れ高熱の血水が

噴き出す泡を出しカウンターを狙う。


しかし炎を纏ったユキマサに通用せず

カウンターを受けながらそのまま突破し

ウタカタの首を掴みグラウンドに向かって

思いっきり投げ飛ばす。


ウタカタは地面に深くめり込んでいるが

更にユキマサは追撃してウタカタの身体の上に

飛び降りた上に何度も踏みつける。


ハオリ急ぎウタカタとユキマサの元に走り

攻撃を止める為に回復し始めたばかりの

少ない力で対抗する。


「お父様!!やめて下さい!!『呪縛心寒じゅばくしんかん』!!」


ハオリは両手の狐手を合わせ、

ユキマサの動きを何とか封じるも時間の問題だが

ウタカタが目覚めるまでこの技に全力を捧げる。


「お父様……目を覚まして……!!」

「グゥ……」


長くは持たない技を気を失いそうになりながらも

何とかユキマサを縛り続けるハオリ。


「『地制沈撃じせいしんげき』だお!!」


ユキマサは頭部に攻撃を受け更に

地面に全身沈んで動きを封じられている。


「イチロ様!!どうして!!」

「イチロ様だなんて照れるお~//もちろん!!

美女二人を助けに来たんだ……お!」ニカッ!

「イチロ様……ありがとうございます!」

「どういたしましてだお!こんな上手くいくとは

思っていなかったけど、よかったお」フゥ~


イチロは地面にめり込むウタカタを救出し

ハオリの元に行く。


「すいません……イチロさん……

私ももう限……界……」

「ハオリンよく頑張ったんだお……ゆっくり休むお」


ウガァァァア!!!!


「うぎゃぁぁぁあ!!!!」


ユキマサの叫び声と同時に火柱が上がり

周囲の地面を吹き飛ばし脱出して来てしまう。


「おおおおおお!!起きるんだお!!

ハオリン!!ゆっくり寝てる場合じゃ

なくなったお!!今すぐ起きるんだおぉぉお!!」


「イチロ君……ハオリさんと逃げて……」


気絶していたウタカタが目を覚まし

イチロとハオリの前に何とか立ち上がる。


「ヒメ様無茶だお!!!!そんなボロボロじゃ

勝ち目なんてないんだお!!!!」


「大丈夫……私も狂鬼化すれば戦える……

だから……巻き込みたくないから……逃げて」


そうこうしている間にユキマサが

勢い良く殴り掛かってくる。


「ヒメ様!!クソぉぉぉお!!」


ウガァァァア!!!!


立っているのがやっとのウタカタの前に

イチロは両手を広げて待ち構える。


「イチロ君!!」

「ヒメ様……さよならだお」


ユキマサの拳が当たり炎がウタカタの前で

メラメラと燃え盛る。


「さよならじゃねーよイチロ……」

「ミ、ミカドぉぉぉお!!!!」

「ミカド君……よかった……」


ユキマサの攻撃を受け止め

ミカドは平然と立っていた。


「やっぱ狂鬼化した状態で目が覚めたか……」

「ミカド……何ともないのかお?」

「おう!こいつのおかげ!」


ルーン!!


ミカドが半歩ズレるとユキマサの攻撃を

受け止めている異形がいた。


「いやぁぁぁぁ!!このタイミングで

異形は終わったお!!終わったお!!」

「落ち着けって!こいつは俺達の味方だ!」

「へ?味方……?」


ルンはユキマサの掴んでいる腕をそのまま

上下に振り回し身体をベチベチと何度も叩き付け

遠くに放り投げる。


「後は俺達で何とかするから離れていてくれ」


イチロはウタカタとハオリを両肩に担いで

せっせと離れて行く。


ユキマサはムクっと立ち上がり

全身に纏う炎を激しくなびかせ走ってくる。


「炎狂飢鬼ユキマサ!!そろそろ目を覚ませ!!

行くぞルン!!」「ルーン!!」

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