第36話 「隊列を成す異形」
急いで地面にめり込んでるジンと戦々恐々とした
表情で気絶しているバクマルを叩き起すミカド。
二人はすぐに目を覚まし、まずミカドが
生きている事に驚き、ミカド自身もそういえばと、
自分が心臓を貫かれた事を思い出すが
今はそんな事はどうでもいいと
イチカと異形がどうなったのかを
聞き出そうと必死なミカド。
「俺は暴走したイチカに一撃でやられた後は知らん」
「俺もイチカが異形を……」
「異形が!?異形がどうしたんだ!?」
「あれ……」
バクマルが指差す方向に目をやると
ぐちゃぐちゃになった異形だった物が
砕けた地面の上に転がっていた。
「あんだけビクともしなかった異形が……
これをイチカがやったって事か……?」
「そうだ……」
「イチカは……イチカはどこだ!?」
「異形を倒した後に俺も襲われて……
その後は分からない……」
ミカドはとある事を思い出す。
暴走して正気に戻った時に手足が崩れるように
負傷していた事、あれが暴走による影響だとしたら
あのまま暴走していたら塵になってしまうのでは
ないかと不穏な考えがよぎった。
「イチカ……イチカ……」
「しっかりしろミカド!!イチカの捜索は後だ
今は戻ってバクマルの傷を治さねーと!!」
「先行っててくれ……」
「ダメだ!!お前一人で異形に出くわしたら
どうすんだ!!戻るぞ!!」
「いや……俺はイチカを探す……」
「……勝手にしろ!死んでもしらねーぞ!!」
ジンはバクマルに肩を貸し
ミカドを置いて仲間達がいる焔高に戻る。
ミカドは一人になり悲しげな表情で空を見上げる。
空は暗雲……、ミカド自身の今の心の様だ。
ミカドは首をブルブルと横に振り
嫌な考えを吹き飛ばす。
「生きてる、今見つけてやるからな」
ミカドは立ち上がり歩き出した。
一方、雨昵一家は隊列を成す異形と交戦中だった。
「くだばれ異形共!!『
タカオミの攻撃が異形の隊列に突き刺さるが
なんの反応も示さずただ真っ直ぐにタカオミ達の元に
ひたすら前進してくる。
隊列を成している前進してくる異形は
一メートル程の大きさで人の様な形をした
生命感のない泥人形の様な物だろう。
本体を見つけられずタカオミ達は苦戦していた。
近づけば異形が手に持っている槍で集団で
襲ってくる、離れていれば異形はタカオミ達を目指し
ひたすら前進してくるだけ。
隊列を成す異形を攻撃して壊しても
壊した分元に戻る、強敵な感じではないが
厄介なあいてだ。
「結埜!お前もなんか技ないのか?」
「確かに神格化してもらったんだけど……皆が言う
エネルギーみたいなものは全然感じなくて……」
「そうか……タカオミの遠距離攻撃も効果がない、
俺の技で倒してもすぐ復活しやがる……」
ユアサは横で平然と酒を飲むバジオを
お前も何かしろとでも言う目線で見ている。
「なんだよ……俺は攻撃する技なんかねーぞ」グビッ
「少しは戦う意志を示せよ……」
「しゃーねーなーやってみっか」グビッ
バジオは隊列を成す異形の前に立つ。
「あんま近づきすぎんな!!」
「わーってるよ~」
『
バジオが送風で一番先頭の異形一体を
右に進路を強制的に変える。
釣られて後ろの異形達も進路を変えた。
「ガッハッハッ、おもしれーおもしれー」
しかし直ぐに送風が解けてタカオミ達の方へ
進路を戻し進んでくる。
「俺に出来んのはこんくらいだ」グビッ
どうしようも無くなりこのまま異形を連れて
仲間達の所に戻り何とかしようとした時。
タカオミ達の後方から中なものかが現れる。
「何を遊んでいるのですか五黒一家」
声の方え振り向くと長年戦ってきた
大陸防衛軍『
「怪物ワラワラいるや~ん思たら
もっとじゃまくさい
異形諸共消したらええ?」
「よしなリオナ、今の私達は自由だ……
もう神黒鳥とやり合う理由はないよ」
―――
最初に声を掛けてきた小柄でおかっぱヘアーの
女の子は女神鳥第三部隊長『
訛りの効いた言葉を話す角の生えた鬼の女の子は
第二部隊長『
三人目の女性は『
第一部隊長で亡くなった五黒マサの姉だ。
―――
「やっぱりお前ら生きてやがったか……」
ユアサはさっさと失せろと言う様な表情。
「そりゃ生きてるさこんな得体の知らない怪物に
殺されてたまるか、ところでマサはどうした」
「話は後にしてまずはこの怪物始末せえへん?
ゆっくり話てる暇あらへんやろ?」
リオナの合図で隊列を成す異形を囲むように
至る所から女神鳥の隊員達が姿を現し一斉射撃で
異形達を殲滅していく。
「女神鳥……まだ、こんなに生きてんのか」
ユアサは驚いた。女神鳥の隊員はおよそ
百人近く生き残っていた。
「それじゃダメだ!こいつらはすぐに元通りに……」
タカオミは女神鳥に忠告するが
何故か元通りにならず、全ての異形が消えた。
その後、タカオミはマサの姉であるマヤに
マサが一家の為に犠牲になった事を伝えた。
「そうか」
(最後までお前は家族想いな奴だな……)
「ほなウチらはもう行くわ自分らの顔を見てると
虫唾が走るさかいね」
「同感です早く死んで下さい」
「ミズキちゃ~ん俺らを助けといて何を
言ってるんだ!素直じゃないね~」グビッ
「助けたんじゃありません、殺すべき敵を
殺した迄のことです」
「お~!て事は俺はもう殺される対象じゃ
無くなったってわけだ~」グビッ
「今死にますか?」
ミズキはバジオの喉元に切っ先を突き付ける。
「よしなミズキ、神黒鳥と戦う理由はなくなったんだ
生かして少しでもこの怪物を減らしてもらう方が
私達の仕事も減って楽になる」
「それもそうですね」
女神鳥達は去っていった。
「マサの姉貴冷てぇ~な~
あれが家族を亡くした奴の表情かよ」グビッ
「しょうがないよ、すぐには受け入れられない
だけだと私は思うな……」
クヲォォォオン!!!!
突如、独特な叫び声が聞こえ振り向くと
新たな異形が出現していた。
「ようやく本体のお出ましか!!
お前ら気引き締めて行くぞ!!」
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