第18話 「憎しみの稲妻、鬼現る!!」

夜勝刃家が壊滅して唯一生き残った

ユウシンを連れて急ぎ八蘇木山へ戻る。


しかし、ソノミの言っていた半透明の異形が

ユウタ達の前に立ちはだかってしまう。


「クソ、見つかったか……」

「これがソノミさんが言っていた異形ね……」

「なんか確かにデカいですな」

「父さんやっちゃえーーー!!!!」


半透明の異形は体長五メートル程の大きさで

瓜状の形をしている。所々虹色に発光していて

見た目はデカいだけのまんま海月だ。


半透明の身体の為、異形の、弱点であるコアが

内部の中心にあるのが確認できる。


建物をすり抜けながら空中を浮遊して

移動している所を見るに物理攻撃が効かなそうだ。


「まずは私が様子を見てきましょう」


アキラが海月の異形の元に土埃を

巻き上げながら猛ダッシュで接近し、

勢いで内部のコアを叩き割ろうとするが

コアに届かず地面に落下する。


「惜しい!!でも行けますよ!!アキラさん!!」


アキラが体勢を起こそうとした時――


「ウッ!!ウガァァァア!!!!」


海月の異形の身体から四本触手が飛び出し

弾丸の様な速度の触手でアキラを何度も殴打する。


「あれで皆の体を抉ってたんだ……」

「父さん!!」

「行っちゃダメ!!ミナトちゃん!!!!」


父親の命の危機に思わず飛び出すミナト。

レイもミナトを追って何の策もなく

海月の異形に近づいてしまう。


「やめろーーー!!!!」


ミナトは勢いよく海月のコアを目掛け飛び上がりるが

力不足で全くコアに届かず異形の体内から地面に落下

それと同時にミナトにも触手飛んでくる。


「ミナトちゃん!!」


レイは回収した刀で触手を斬りつけ

軌道を変えようとするがそのまますり抜け

ミナトの腹部を触手が貫く。


もう一撃がレイに向かって飛んで来た時に

虫の息のアキラがレイを突き飛ばし

ミナトに覆い被さるようにして意識を失くす。


「そんな……あんなの倒しようが無いじゃない……」

「クソ……アキラさん……ミナトちゃん……

俺が不甲斐ないばかりに……雪ヶ原先輩、

ユウシン君と一緒に逃げて下さい……」

「なに言ってるの!!あなた残して行けないわ!!」

「このまま皆で死ぬ訳には行かないでしょ……

俺が注意を引いてるうちに逃げて下さい、

俺も後から必ず追いつきます」

「死なないで……」

「大丈夫ですよ……イチカ残して死ねないんで」


ユウタは道に転がる石を短剣に変えて

海月の異形目掛けて投げる。

しかし、手から離れた剣はやはり元に戻ってしまう。

石ころは海月の異形の体表に強く当たり波紋が大きく

全身に広がっていく。

アキラとミナトに向いていたヘイトがユウタに移る。


「ダメか……先輩早く逃げて!!」


レイは渋々ユウシンを抱えて八蘇木山へ走る。


「マジやべぇ……」


海月の異形の触手がユウタ目掛けて飛んでくる。

間一髪で交わし続けている間に、

飛んでくる触手が地面に当たる瞬間だけ水分が

凝固して触れる事ができる事に気づく。


ユウタは地面に触手が当たる瞬間に石ころを

海月の異形に投げ付けてみると、さっきと違い

波紋が小さいのを確認。


「よし!斬れる!」


石を拾って機動力を損なわないように短剣を作る。

触手が凝固したタイミングでユウタは斬りつけるが

切断された触手は直ぐに結合して元に戻る。


別の触手が焦るユウタに容赦なく襲い来る。


ギリギリで短剣を大きくして盾にするが吹っ飛ぶ。

海月の異形の触手がユウタを猛追する。


(クソ……体が動かねぇ……)

吹っ飛ばされて壁に体を強く打ち付けてしまい

全身が麻痺してしまっている。


触手が迫りもうダメかと思った時、

ユウタの前に意識を取り戻したアキラが立っていた。


触手の打撃を二発受けても微動だにせず

強靭な肉体で耐えるアキラ。


「アキラさん!!」

「ミナトがまだ生きています……

ユウタ君……ミナトを助けてやって下さい」

「それならアキラさんが!!」

「お恥ずかしながら、もう立っているのが

やっとですので……ミナトだけでも……」

「分かりました……」


ユウタは何とか体を動かそうとするが

痺れてまだ動けなかった。

その間アキラはユウタを護る壁となり

海月の異形の攻撃を受け続ける。

強靭な肉体もどんどん皮膚が剥がれ始め

筋肉が露出していく。


「クソ!!動け!!動けよ!!俺の体!!!!」

「せっかく生き延びたんだ……こんな訳分からん

怪物に日常を奪われて、なんの抗いもできず

そう易々と死ねるかよ……今生きている俺達は

こいつらに復讐できるチャンスを与えられたんだ……

無惨に殺されていった人類の憎しみを異形共に

倍返ししてやるんだ!!!!」


ユウタは立ち上がる。

限界を迎えて崩れ落ちるアキラ。


海月の異形の前に仁王立ちする

ユウタの全身からバチバチと稲妻が走っている。


「殺してやる……」


ユウタの内から湧き出る憎悪が

トレードマークのヘアバンドを突き破って

三本のイカつい角となって現れる。


「これが鬼化……」


海月の異形は触手をユウタ目掛けて飛ばす。

とても普通の人間が受けれる威力ではない触手を

素手で受け止め、ユウタは両手にから電撃を放つ

イメージをすると全身の稲妻がバチバチと

大きな音を立て大きくなっていく。


「くたばれ異形……『雷伝らいでん』!!」


触手を伝って電撃が海月の異形の

全体に広がりボロボロと異形の身体が

崩れ落ていき電撃がコアに届く。


「やったぜ……」ドサッ――

力を使い果たし地面に横たる。

「寝てる場合じゃねぇ……アキラさん……

ミナトちゃん……」


小型の異形がユウタ達の周りに集まり出す。


「クソ……もう一回……」

もう一度、電撃で異形を倒そうとするが

小さな電気が手の平からチリチリと出るだけだった。


ユウタの耳に異形とは違う人の集団が

近づいてくる足音が入ってくる。


「テメェも鬼か」


ユウタは視線を声の方に向けると

角を生やし刀を持った不良が立っていた。


「鬼……」


「アカネちゃーん!!ルル達と同じ鬼と

ボロボロの人間見つけたよー!!」

「どれどれ~、何こいつーズタボロじゃーん

てか、鬼の癖に刀ないとかある?オモロー」


「ウタカタ、助けるか?」

容姿が不良っぽい鬼が別の美しい鬼に声をかける。


「死に損ない共は放っておけ邪魔になるだろーが」

「そうですそうです!私達だって手一杯!もう時期

死にゆく命を助けている余裕はなしですよぉ」


ユウタ達を助ける事に反対している

強面のおっさん鬼とヒョロヒョロで

ちょっと気味悪い鬼。


「まだ生きていらっしゃいます、

助けられる命を見過ごす事は出来ません」

そう言うとウタカタと言う鬼と不良っぽい鬼と

アカネと言う鬼が小型の異形を次々と斬っていく。


小型の異形が片付き不良っぽい鬼がユウタの方を

振り向くと、助ける事を反対していた二人の鬼が

ユウタ達を殺そうとしていた。


「おい、何勝手なことしてんだ」

「お荷物になるだけだろ殺して当然」

「そうですそうです!!」

「てかさーアンタらの方がお荷物じゃねー?

ここまで怪物一匹足りとも倒してないしー

その腰の刀はお飾りかよーダサすぎー」


「仲間内で争うのはやめましょう、

助けるのが嫌ならば、お二人は置いていきます」

「分かった分かった残されるのはもっとごめんだ」


鬼同士の一悶着が終わり、不良っぽい鬼が

ユウタに話しかける。


「もう動けんだろ……起きろ」

「は、はい!!」

「この人達を助けたいのですが、

長らく監禁されていたので、今のこの町を知りません、

助けられるのならば、その場所まであなた達を

護ります、治療できる所はありますか」


「あります!俺達が一時的に避難してる

八蘇木山に凄腕の医者がいるので、一緒に

来て頂けると心強いです!!」


「よーし、早速レッツゴー!!

ジンはそこのゴリマッチョよろしくねー」

「こいつホントに人間か……?」


アカネはミナトを背負うする。

「うわーこの子お腹に穴空いてるー

これで生きてるとか人間離れー」


ウタカタはユウタを背負う。


「あの僕は歩けます……」

ユウタは美しい女性におんぶされて

イチカと言うパートナーがいるにも関わらず

ドキドキしている自分が不甲斐なく感じていた。


「まだ完全には回復しきっていないでしょう

それにこの方達は一刻の猶予もありませんから

全力で八蘇木山に向かいますので、

道案内をお願いします」


ユウタ達と鬼達は死の淵にいるアキラとミナトを

一刻も早く火花衣サヤの元に届ける為に

全力で八蘇木山へ向かう。

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