中編
凛としたハッキリとした声がパーティー会場に響く。それは罪を咎められ断罪されている最中の令嬢から発せられた声だとは思えないほど耳障りの良い綺麗な声だった。
「なによりも、そんな馬鹿げた理由で私との婚約が簡単に破棄出きると思っているなんて殿下の脳みそは空っぽなのですか?いくら顔だけのノータリン王子とはいえそれはないですわよ。もう少し知恵を絞って下さいませ」
あぁ、彼女の声だ。と感激していると、まるで子供をあやすかのようなにっこりとした微笑みを向けられた兄……メリーサの婚約者でありこの国の第1王子は怒りで顔を真っ赤にした。
「なっ……!よりにもよって自分の罪を棚上げし俺を馬鹿にするなど……!」
「罪?それは先ほど殿下が馬鹿面しながらおっしゃっていた馬鹿な発言のことですか?
なんだったかしら……そうそう、私がそこにおられる顔と胸の大きさしか取り柄の無い脳みそスッカラカンの子爵令嬢をいじめた罪でしたわね?申し訳ありませんけど私はそんなに暇ではありませんの。それにそのスッカラカン女が私に階段から突き落とされたと証言された日付と時間に私は城の地下室におりましたので物理的に無理ですわ」
「はぁ?!なんでお前が城の地下室なんかに……いや、そんな嘘を誰が信じるか!お前がルルーナに嫉妬していたことはわかっているんだ!」
「嫉妬……。私が?なぜ?」
きょとん。と、本当に心底わからないと言う顔でメリーサは首を傾げた。
「お、お前は俺がルルーナを寵愛しているから嫉妬してルルーナに酷いことをしたんだろうが!いつもいつも、早く結婚して欲しいと王妃になりたいと言っていたじゃないか!俺を愛しているか「それは、違いますわ」……へ?」
「殿下がそのスッカラカン女を寵愛なさろうが子供を作ろうがお好きになさいませ。私の望みは殿下と結婚して王妃になり、国王と王妃しか入れない“真実の間”に入りたいだけですわ。だから、婚約破棄は受け入れられないと申しましたでしょ?王妃になれないと私の悲願が達成できませんので……。私はお飾りの王妃になり公務も全部致す所存ですし嫉妬など欠片もしておりません。どうぞ存分に真実の愛を育んで下さいませ」
ため息をつきながら「この馬鹿王子は何をいっているのかしら?」と困った顔で呟くメリーサ。どうやら本当に婚約者のこともその浮気相手もどうでもいいようだ。
「まったくこれでは契約違反でしてよ?現国王……殿下のお父上にもそうお約束していましたのに……何も言われませんでしたのかしら?」
「……ち、父上は、お前を大切にしろと……だが、俺は真実の愛を貫くために、ルルーナを守……だから……」
「では勝手にこんなことを致しましたのね?私がせっかく人間のルールを守っていましたのに……台無しですわ。ねぇ、ルルーナ子爵令嬢」
「えっ」
「あのままおとなしく殿下と交際なさっていれば、王妃にはなれなくても側妃として公務などの仕事は一切せずに贅沢三昧出来ましたのに……わざわざ私を陥れようとするなんて、本当に馬鹿ですわねぇ。お二人とも馬鹿でスッカラカンでとてもお似合いでしてよ」
そう言われたスッカラk……ルルーナ子爵令嬢は醜く顔を歪め「……なによ、いつも澄ました顔をしてムカつくのよぉ!」と叫び、近くにあったワイングラスをメリーサに向かって投げつけた。
「危ない!」
それまで成り行きを見守っていた僕は思わずメリーサの前に飛び出し、投げられたワイングラスを顔面に受けたのだった。
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