第27話 カナちゃんと肝試し
親友のカナはちょっと変わってる。
でも、どこがって聞かれると少し困る。それってとても説明しにくくて。
例えばクラスのみんなが肝試しをしようって言って盛り上がってた時のこと。
「来週の土曜日だって。カナも肝試し行く?」
「行かない。サクラちゃんは?」
「私は怖いのダメだから行かない。カナは怖いの大丈夫じゃなかったっけ?」
「怖いのは苦手だけど、学校の怪談は怖くないから大丈夫。でもママが夜に出かけたらだめって言うからやめとく」
「そっかー」
肝試しはうちの学校の名物で、クラスの親睦会としてよく企画される。
当日は希望者だけが学校に集まって、先生の解説付きで校内を歩き回る。当然漫画みたいにこっそり夜の学校に忍び込むとかはできない。
参加しなくても翌週には友達からいろいろ聞くことになるので、まあまあ全員楽しめる企画だ。
「けどさ、うちの学校の怪談は案外怖いよ。音楽室のガイコツ模型とか」
「あれは昔、生物の依田先生が当時いた音楽の先生に告白するために置いといたってママが言ってた」
「今もこの学校にいる、あの依田!? そもそも告白するのにガイコツ模型って」
「『うっかり置き忘れてました』って取りに行って声をかける作戦」
「うっかり置き忘れないよね!」
「職員会議でめっちゃ怒られたらしいよ」
「やはり」
「その時の音楽の先生が依田先生の奥さんです」
「噓でしょ」
「勢いって怖いわねえってママが言ってた」
「そっちの怖い話か!」
そういえば、怖い思いをすると冷静な判断力が無くなるらしい。
気を付けよう。
「じゃあ、夜になると13段しかなくなる職員室横の階段の話はどう?」
「あそこの階段は15段ある。2段も減るのはラッキーだと思う」
「いや、怖くない?」
「減るだけなら、うん。怖くないと思う」
「そう言われればそう……なのかな?」
カナは力強く言い切った。
うっかり騙されそうになるなあ。
勢いって怖い。
「じゃあさ、肝試しの日に西校舎の壁の穴から赤い光が見えたら告白成功、青い光が見えたら失敗するっていう話は?」
「西校舎の壁の穴から見える方向に信号があるんだよ。赤信号と青信号のタイミングだけと思う」
「それはそうなんだけど。……でもさ、あの交差点の信号機って夜けっこう早い時間に赤の点滅信号になるよ?」
「え?」
「あ、そうか。カナってめったに夜に外出しないから知らないのか。あそこの信号はこの高校の生徒専用みたいなものだからね。下校時間以降は点滅信号になるんだよ」
「……ってことは?」
「信号が青になることは、普通ならないね」
「つまり告白は絶対に成功する!」
「……なるほど」
つまり、カナってちょっと変わってる。
でも前向きだし凄くいいやつなんだ。
だからまあ、ちょっとくらい変わってても、やっぱり親友!
【了】
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