蒼井霧雨 ~私が子供達に伝えたいこと~ 巻の二

京衛武百十

全方位にケンカ売る形になるような考え方がおかしいって言うんなら、どこかに、<何一つ間違ったことを言わない、完全に完璧に正しい勢力>がいるってことでしょ? どこにあんの?そんなそんな勢力

 しっかし、私みたいな考え方してると、

『全方位にケンカ売ってる』

 みたいに言うのがいるけど、それっておかしいんだよね。

 だって、全方位にケンカ売る形になるような考え方がおかしいって言うんなら、どこかに、

 <何一つ間違ったことを言わない、完全に完璧に正しい勢力>

 がいるってことでしょ? どこにあんの? そんな勢力。

 それぞれが、正しい面もありつつも、同時に、間違ってる、おかしい部分があるから、どれか一つがこの世の全てを牛耳るわけじゃないんでしょ?

 だったら、問題点を詳細に検証していったらみんなどこかしら間違ってておかしいって話になるじゃん。てか、それが事実でしょ?

 私は、私自身と私の家族と私にとって大切な人達の味方ってだけで、それ以外のどの勢力の味方でもないよ。

 右も左も中道も売り手も買い手も男も女も、どの<勢力>にも、私は専属しない。私は私。他人の価値観に縋って、尻馬に乗って、自我を維持したいとは思わないんだ。

 そんなことしてたら、私は、彼とは一緒にいられなかった。

 <人の世の理>から外れた彼とはね、

 彼と一緒にいるためには、目の前の事実と向き合うしかない。誰かに自分を肯定してもらうのを待ってたら、期待してたら、駄目なんだ。自分で考えて理解して受け止めなきゃ。

 私を私として、彼を彼として、ただ事実を受け入れ、その上で自分にできることを探っていくしかない。

 もっとも、それができるようになるには、誰かの助けが必要だけどね。

 幸い、私は、その<誰か>と出逢えた。

 いや、きっと誰もがその<誰か>にどこかで出逢ってるんだと思う。そこで拒んでしまうか、向き合うか、の違いだけでさ。

 私は向き合うことができた。それが今の私を作ってくれてる。

 家のことも子供達のこともほとんど彼に任せきりで決して立派でもないけど、アニメ化された作品があるわけでもなくて世の中の誰が見ても<成功者>だと言ってくれるような人間じゃないけど、少なくとも私は、自分が生まれてきたことを良かったと思えてる。

 彼に出逢えて、彼を受け止めることができて、子供達と出逢えて、子供達を受け止めることができて、自分の生に意味があったと思えてる。

 だから他人に難癖付けて罵倒して蔑んで、相対的に自分に価値があるように見せかけなくても済んでる。

 それが嬉しい。

 だから、『自分だけが正しい』『間違ってるのはいつも他人の方』とか思わずに済んでるんだ。

 それが誇らしい。

 そして、それが自分一人の力でできたことじゃないと理解できてることがまた誇らしい。

 その上で私は創作に臨むんだ。


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