ドキッ☆JDの24時間生配信!
Case1:山崎あかね その1
そのアプリと私が出会ったのは、暇つぶしにカフェで面白そうなアプリはないかスマホのページの中を漁っていたときのことだった。
「んー、パズルゲームばっかりやるような頭じゃないんだよなぁ……」
動画サイトの広告などでよく出てくるようなパズルゲームのアイコンを華麗にスルーしながらどんどん下のほうへスクロールをしていく。
ふと、大きい文字で『共有』と書かれているアイコンが目に付いた。最初はただの共有するだけのボタンかと思ったのだけど、タップしてみたらどうやら、これもアプリの一種らしい。
アプリの名前は……
「パーソナルシェア?」
共有に特化した専門アプリ【パーソナルシェア】。
「共有アプリかぁー」
共有という機能なら、どこのアプリだってあるし、それとの差はあるのかと私は興味津々で【パーソナルシェア】のページの文章を読む。
《パーソナルシェアは何でも共有できます。
貴方が共有したいもの全てを共有できる魔法のようなアプリ、それが【パーソナルシェア】です。
さぁ、今すぐ魔法のような体験を始めましょう!》
「共有したいもの全て……」
そのキャッチコピーに惹かれ、私はアプリをダウンロードすることにした。
スマホの画面に『共有』と大きめな文字で書かれたアイコンが映し出される。そのアイコンをタップして、アプリを起動した。
***
【パーソナルシェア】の世界にようこそ!
このアプリは貴方のことについて様々な事柄を共有できるアプリです。
まずは、貴方の名前を入力してください(本名でもハンドルネームでも構いません)
***
良くあるアプリでのテキストを流し読みしながら、私は名前を【茜】として登録をした。
***
次に、【パーソナルシェア】で共有するものを入力してください(共有したいもの全て入力することをお勧めします)
***
テキストの下に入力する箇所とボタンのみのシンプルなページが出てきた。
共有するもの……。
勢いでダウンロードしたのはいいが、何を共有させるかを考えていなくてふと入力する指が止まった。
SNSのコメントはそのアプリで出来るし、動画だって共有ボタンがある。日々の食事記録……とかの需要は全く無いだろう。
いざ考えてみるとなかなか難しいなコレは。カフェの中にて短時間で考え付くわけが無く、私は家に帰って自室でゆっくり考えることにした。
家に帰り、カバンを投げてベッドへと倒れこんで、再びパーソナルシェアを起動させる。画面は何を共有するかを入力する画面から再開された。
延々と頭をぐるぐるさせながら何を共有させようか悩む。私が共有してみたいものはなんだろうと、あたりを見回しながら考えていると、壁に貼ってあったポスターに目が留まった。
それは海外の街の風景を写しだしていたポスターだった。
「そうだ」
そのポスターを見て何かを思いついた私はアプリに共有したいものを入力した。
《視覚》
と。
私は色んな風景を見るのが好きだ。SNSでも出かけた先の風景を写真にとってアップしたり、見てよかった風景の写真を共有したりしている。
でも、写真を撮ったときに奇跡の瞬間を見逃して悔しい思いをすることも多いから、視覚を共有できれば、きっとシャッターチャンスを見逃すこともないだろう。
共有するものの入力を終え、次のページにアプリは移っていた。
***
共有する対象を選んでください。(個人を入力すると申請通知が相手に入ります)
***
共有する対象か。どういう感じで共有されるか説明が無いことに若干の不安を覚えた私は、申請通知が来ないように全員と選んでしまった。
まぁ、これなら興味が無い人は共有したものを見なくていいわけだし、そっちの方が安全だろうと考えたからだ。
***
名前【茜】
共有するもの【視覚】
対象【全員】
ではじめます。よろしいですか?
***
アプリの最終確認画面が映し出される。私はさーっと読んで、【はい】というボタンをタップし、アプリの登録が完了する。
***
アプリの設定が完了しました。ようこそ、【パーソナルシェア】の世界へ。それでは良い共有ライフをお楽しみください。
***
アプリはこんなメッセージを残して閉じてしまった。
え? それだけ? 他に何も無いの? と私は再びパーソナルシェアを起動するが、すぐ画面が待ち受け状態に戻ってしまうのだ。
もしかすると、SNSに連携されているのかもと自分が持っているありとあらゆるアカウントを探してみたけれども、【パーソナルシェア】と連携したと思われる痕跡は一切無かった。
もしかして、共有させるつもりだけのアプリだけだったのかな? あーあ、偽者のアプリだったのかー。とがっかりしてしまい、その勢いで【パーソナルシェア】のアプリを削除してしまった。
「あー、折角一生懸命考えたのに損した。別のアプリをさがそ」
私は落胆モードのまま、またアプリのページから違うアプリを探すネットサーフィンをベッドの上で始めたのであった。
今思えば、私のこの軽率な行動が最悪な出来事を招いてしまったと思っている。
しかし、もう全て遅かった。
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