リアルタイム

九乃カナ

第1話 思いついたら12月1日

 12月1日はカクヨムコン開始の日である。九乃カナはパソコンに向かってお知り合いの坂井令和(れいな)さんの手首小説を読んだ。いまレビューを考えているところ。

 ところであるけれど、思いついてしまった。ヘンな小説のネタ。リアルタイム小説。九乃カナのリアルタイムを小説にしてゆく。

 といっても、小説を書くにはパソコンに向かわなければならないわけで。ということはリアルタイム小説はいつだってパソコンの前ではじまり終わる。なんてこった、なんも面白くねえ。

 おっと失礼、9ちゃんねるではなかった。口調をまちがってしまった。


 ほうじ茶はあとひと口で飲み終わる。もう冷めている。足元の湯たんぽはまだあたたかい。えらいぞ、湯たんぽ。


 小説であるからにはなにかイベントが起きてほしいところではあるけれど、パソコンの前にいてなにが起こるとも期待できない。ということは、ネットカフェにでも行ってカクヨムに小説を入力するとか? いや、出掛けたくない。

 ダメだ。家から出たくないのだからなにも起こらない。うん、なにも起こらない小説ということで。なにも起こらなさが面白いと思ってもらいたい。


 九乃カナは後ろでひとつにしばった髪をしごいてなめらかな手触りを感じた。手首小説の影響ではない。ただの癖。髪を触る癖があるのだ。

 他人の髪は触らない。そんなことしたらヘンタイ、セクハラ、と罵られてしまうことだろう。さすがに訴えられはしないと見込んでいる。

 九乃カナはドMではないから罵られてよろこばない。むしろSである。罵りたい。いつもはなにごとにもケチをつけて気をまぎらわせている。


 17:16、ディスプレイの隅で時刻を確認した。18:00には「シタイ?キス:それとも;」が投稿される。その頃は夕食の準備にデスクの前を離れなければならない。メンドクサイ。九乃カナは食欲はあるけれど、おいしいものを食べたいとは思わない。おいしいといってもタカが知れているからである。知っているモノのために高い金を出したりメンドクサイ思いをしたりしたくはない。

 くしゃみ。

 エアコンは働いていない。寒いせいだろう。まったく、使えないエアコンだ。

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