第一章 ラスボス戦
第1話 念願の異世界!?
(そろそろラストスパートか……)
ワイヤレスイヤホンから流れる曲が変わった。
オレは右腕のスマートウォッチをチラッと見て時間を確認し、走るスピードを一気に上げた。
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マサヤはジョギングを毎朝の日課にしていた。
引きこもり生活を始めて一年が経つが、約一時間のジョギングは毎朝欠かさずに続けている。
今朝も、いつも通りにジョギングをしていたのだが……。
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『……助けてっ!』
「え!?」
ラストスパートをかけた直後、オレの頭の中に“少女の声“が割り込んできた。
思わず立ち止まって周りを見渡すが、それらしき“少女“の姿は見当たらない。
空耳だったのかなと思っていると、足元に大きな魔法陣が現れた。
「……えぇ!?」
光り輝く魔法陣はみるみる大きくなり、そのままオレの体を包み込む。
「こ、これって……もしかして、異世界転移か!?」
思い返せば『異世界転生・異世界転移』を何度夢に見たことだろうか。
街でトラックを見かけたら妙にテンションが上がってしまうし、何回か衝動的に“一歩“を踏み出そうとしたことだってある。
今の人生には未練も希望も無い。
ただただ、新しい世界で人生をやり直したいと願うばかり。
今の“意味のない日々“を送っている毎日からサヨナラしたかった……。
(……!?)
オレの足元から“地面“の感触が消えた!
ふわふわと宙に浮いている感覚。
(間違いない! 異世界転移だ!!)
胸が高鳴る!
テンションあがる!!
妄想が広がる!!!
いったいどんな世界が待っているんだ?
転移先はやっぱり“中世ヨーロッパ風の世界“なのだろうか……?
異世界行ったら何をする?
まずは冒険者ギルドで登録手続きか?
そうだな。男はやっぱり“冒険活劇だ“よな!
苦難を乗り越えながら強くなるような、男なら誰もが憧れる冒険者生活。
いや“ハーレム展開“も捨てがたいな。
たまたま偶然知り合ったお姫様と楽しく過ごしたい。
ふ、双子のメイドは必ず現れて欲しいな!
そうだな〜、ヒロインはショートカットでとびっきり可愛い子でお願いします。
あ〜、でもやっぱり“俺TUEEE展開“も捨てがたい。
“世界最強“も憧れるよな。
最上級の攻撃魔法に、最上級の回復魔法で無双状態。
変身魔法とかあったら面白そうだな。
滅びの呪文は……やめておこう。
そんな呪文を使う展開は望まない!
何も望んでいないのに、気がついたら“英雄“扱いされたりして。
お金と地位と名誉が転がり込んで来て、周りからチヤホヤされまくる。
“異世界生活“やっぱ最高じゃねえか!
魔法陣の光に包まれたオレは、転移中のほんの僅かな時間の中でありとあらゆる事を妄想した。
心臓バクバク。
アドレナリンどばどば。
ワクワクが止まらない!
(……あっ!)
足元に地面の感触が戻ってきた。
ついに異世界だ!
さて、いったいどんな世界にオレは降り立つんだ!?
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『どさっ……』
前方で何かが落ちるような音が聞こえた。
同時に、オレの足はしっかりと地面を踏みしめて“大地“に降り立つ。
眩い光が薄れてゆき、徐々に視界がハッキリしてくる。
(薄暗い場所だな……。それに、妙に熱気が充満している……)
「来たか!」
「支援魔法を頼む!!!」
「急いでっ!!」
右方向から緊迫した声が飛び込んできた。
「はぁっ!?」
(『支援魔法を頼むっ』て……どういうこと???)
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