第2話 統合失調症19年目
ゼプリオンという注射を肩に打っている。
平常心が保たれる。
約5年前、僕はゼプリオンと同じ系統のリスパダールコンスタという注射を打っていた。
寛解したと思い込んだ僕は、一般の人の日常に憧れて、朝日新聞の求人広告に飛びついた。
履歴書不要、電話即決
たどり着いた職場は、当時住んでいた八王子から離れた所沢。
通院に不自由を感じた僕は、通院をやめた。
朝日新聞の専売員として働き始めるにあたって、僕は長らく連絡を取っていなかった父に、保証人を頼む。
寛解していたと思っていた。
リスパダールコンスタの半減期は長い、2ヶ月は持つだろう。
はじめの1ヶ月目は順調に過ぎて行った。
配達にも慣れて、飯もうまく...
2ヶ月目 僕は心地よくなり(多分ドーパミンが人より多く流れていたのだろう)
配達所の前でダンスを踊る。
所長に目撃されてしまい。
「踊っちゃダメだよ、変な人みたいだよ」と優しく諭される。
配達しながら妄想し、低空飛行で滑空している烏とカブで並走。なぜか涙がこぼれることを抑えられない。
薬の効力が消えたことにより、感情が戻ってきた。自然なんだと。
安心していた。
3ヶ月目、配達は順調で体力もついてきた。
夕刊を配った帰り、いつもスーパーマーケットによった。
スーパーマーケットブルー
そう呼んでいた時間だ。
しかしその頃から、統合失調症の陰性期
所謂、心の闇(自分以外の社会の圧力)その妄想に支配される。
4ヶ月目が近づいた頃、僕はある朝の朝刊を大きく遅配した。
まだ半分も配っていないのに、続々と配達を終えた同僚たちが戻ってくる。
「どうしたの初柴さん、まだ半分も配ってないじゃないか!」
精神的に不安定になっている、妄想に支配されている僕を見て、明らかに様子が変だと感じた同僚が「今日はもう帰ってもいいから、あとは俺たちに任して。」と助けてくれた。
社宅に戻ると、妄想は悪化した。
今度は被害妄想だ、同僚に殺されると思い込み。大事なものだけ70リットルのグレゴリーのバックパックに詰め込んで夜逃げした。
ホームレスになるつもりだった。
まず、原宿に向かった。
裏原宿の路地でようやく人心地つけた。
(もう、自由なんだ)
人生2度目のホームレス
寝床はホームレスに優しい場所、上野に向かった。
一晩目 1F派出所の前の寝床は選ばずに、コンコースの上、空の見える角で眠った。寝袋にくるまって。
翌朝隣の先輩ホームレスが怪訝そうな顔で、にいちゃんの寝てたところは、皆がションベンするとこだぞと言われる。
それに大事にしていた猫のブロンズを盗まれる。その上、2日くらい経ったのち、他のホームレスの集団からリンチを受けそうになる。
逃げても逃げても追いかけてくる。ブラフマンなホームレス。
怖くなった僕は寝床を上野市街の人気のないビルの前に変えた。不安で不安でたまらない。
飯も食っていない、区役所の炊き出しの情報を手に入れる。
もちのような握り飯、熱い豚汁
上野駅の派出所の前の安全地帯の階段にしゃがみこむ。
ある1人の女のホームレスが座っている。
近づいてみる。するとナンプラーを何十年も発酵させたような、悠久のとてもじゃないが、耐えられたもんじゃない臭い。
僕はホームレスになることを諦めた。
すぐさま、区役所に行って生活保護の申請をする。
川口市のシェルターへと移送される。
妄想に支配されていた状態の僕は、毎日死んでいた。
夢の中、現実かうつつか、優雅に舞う鬼たちを見た。
シェルターから外に飛び出して散歩に行く、帰り道がわからない。
足の爪が剥がれるまで歩いていたら。警察官が職務質問をしてくれた。
警察署にて、僕の情報を検索してもらうと、父が失踪人届けを出してくれていた。
そして、これまた、しばらく連絡を取っていない兄が、東京から埼玉まで(僕は妄想の悪化に伴いシェルターを三度変えさせられた。)仕事を休んでまで、迎えに来てくれた。
父のいる北海道に行くことになった。
しかし、妄想は波を超えたが、今度は妄想の中の親友の1人が僕に、殴られたいがため、ありとあらゆる、筆舌できないほどの煩悩で、僕を冒し続けた。
父と一緒に、これから僕が入る、札幌のシェルターへ出向くため待ち合わせた。
真駒内にて、僕の親友に侵される妄想が、ついに僕の精神を超えて、はじめに歩いてきた男性を、妄想の中の親友だと、信じ込み、殴ってしまった。
すぐに警察に捕まり。留置所に。繰り返される事情聴取、犯罪再現。
僕は妄想の話を、繰り返し警察官に話した。
通常ならば20日拘留とか、なんだろうが、6時間くらいで、現在の病院に転送される。
1ヶ月保護室。その後半年入院。
その後も短い入院を繰り返して
ついこの間は、1年3ヶ月入院して、
今はこうして文章を書いたり。
絵を描いたり。
ジャンベを叩いたりしている。
妄想は、大分落ち着き、1番酷かった頃の、妄想はでない。
薬が効いているのだろう。
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