僕が昭和の時代に助けたのは物の怪や宇宙人ではなく精霊様でした
かず斉入道
第1話 前置きは人の優しさ
「お兄ちゃん、未だこんな夜遅くまでいたのかい?」
漆黒の闇の中を黙々と作業する僕の耳へと優しい声……。そう掛け声が聞こえてきた。
(……ん、誰だろう?)
僕は自身の首を傾げながら、声をかけてくれた人物の姿を確認する為に後ろを振り向いた。
(あっ! 所長さん)
そう、僕が後ろを振り向けば、このお店……。中国山地の中腹ぐらいになるだろうか、この辺りは……?
まあ、そんな山奥の小さな田舎町に位地する場所にある小さな農協の金融と購買部の所長さんが、作業中の僕──。この農協の購買部の店先をお借りして珍味、豆菓子、お菓子、ドライフルーツを販売させてもらっていた僕──。その片付けの最中の僕へと、所長さんは気を遣って声をかけてくれたのだ。
だから僕は作業をする行為を辞め、手休めしながら。
「は、はい。未だお店の片付けが終わらないので、僕はいました」と言葉を返す。
「ああ、そうなのかい、お兄ちゃん……。じゃ、気をつけて帰るんだよ。車で事故をしないようにね……」
農協の所長さんは優しい声音で、僕へと労いの言葉をくれた。
「は、はい! 所長さん! ありがとう御座います」
僕は所長さんの優しく、気遣いある言葉を聞き、歓喜しながら言葉を返し終えれば。
「所長さんも帰り。車の運転には気をつけてお帰りくださいね」、と、僕も所長さんに車の事故には気をつけてくださいと言葉を返したよ。
だから農協の所長さんは僕へと「ありがとう」と「来月もまた出店の方を宜しくねっ」と言葉を返しつつ、手を振りながら。自身の愛車が停めてある駐車場へと向けて歩き出し、漆黒の闇の中に消えて行き──。彼の姿が見えなくなるのだが。
僕はその間──。所長さんの背に向けて『こちらこそ、来月も販売の方をよろしくお願いします』と告げ。
その後は所長さんへと深々と頭を下げ続け。彼の姿が暗闇で見え無くなればまた、この漆黒の闇の中──。僕は黙々と作業を続けるのだ。
「ふぅ」、
「はぁ」、
「がんばろう」と、僕は独り言を漏らしつつ、白い息を吐きながら、この中国山地内の、真冬の寒い夜の中を僕はまた作業……。自身の出店した商品を空き箱の中へと詰める作業を黙々と行い始める。
◇◇◇
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます