図書館カフェでスモーブローを君といっしょに食べたかった

美木間

第1話

 スモーブローを初めて食べたのは、図書館のカフェだった。

 カフェめぐりが共通の趣味で知り合った彼とのはじめての小旅行で訪れた関西の水の都のライブラリーカフェ。


 北欧スタイルのオープンサンド、スモーブロー。北欧のサンドイッチでよく見られるのがオープンサンドタイプだと知ったのは、子どもの頃に読んだムーミンやピッピなどの北欧の児童文学からだった。

 ムーミンたちは、フィンランドのメーデーの飲み物シマを飲みながら、アンチョビーと玉ねぎやマーマレードのオープンサンドを食べていた。リンドグレーンの「長くつ下のピッピ」シリーズのイングリッド・ヴァン・ニイマンの挿絵版では、たき火を囲んでオープンサンドにかぶりつく子どもたちが描かれいている。

 当時の日本では馴染み深くなかった分子ども心を惹きつけた。


 スモーブローを食べられるカフェが大阪にオープンしたとの情報を知り迷わず旅のプランにそこを加えた。インテリア雑貨などで注目されるようになって今ではライフスタイルの定番の一つにもなりつつある北欧スタイル。ただ、食に関してはまだ体験できる場所はそう多くなかった。

 私は京都のブックカフェめぐりの後にそのカフェへ寄りたいと彼に告げた。 就職して資金をためていずれカフェを開きたいと思っていた私は、流行中のものから流行の兆しのあるものまで気になるカフェがあれば旅先でも足を運びたかったのだ。


 図書館にあるカフェというのも魅力的だったが、そのカフェのある図書館自体も魅力的だった。

 大阪の文化経済の中心地、中之島界隈。中之島は、堂島川と土佐堀川にはさまれ東の天神橋から西の船津橋、端建蔵橋までの約3キロほどの島だが、その周りにも明治から大正期にかけて建築された豪奢な建造物が並び、大阪の繁栄の軌跡を辿ることができる。観光水上バス、芳しいバラ園、大阪市中央公会堂など写真映えする景色を眺めながらのそぞろ歩きにもいい水辺だった。

 中でも、大阪府立中之島図書館の偉容は目を惹く。

 以前関西の友人に見せてもらったその図書館のある場所大阪中之島のライフスタイルマガジンの特集記事を見て興味を持ったのだった。


 ――橋を渡る人の「街事情」マガジン―—そう冠された『月刊島民 vol.82』の特集記事「中之島図書館はすごかった。」には、歴史、建築、書庫、本と人というテーマで、大阪市立中之島図書館の「すごさ」について紹介されていた。私はナカノシマ大学のホームページからその号のPDFをプリントして持参していた。携帯機器で呼び出せばすぐに情報を手にできるが、なぜか紙媒体で持っていたかったのだ。





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