第116話 可愛い王様の嫉妬と怒り!(8)

 ジャポネの女王シルフィーの変貌した恐ろしい形相と様子を彼女、黒装束を身に纏う間者の女性は横目で『チラリ』と見る。確認をすれば。彼女の口から自然と『ウフ』、『フフフ』と笑みが漏れてくるのだ。


 それも他人の耳……。いくらシルフィーがエルフであり大変に耳が良い。良く聞こえる種族だとしても。女王さまに聞こえるか、聞こえないかぐらいの、笑みを密かに漏らすのだよ。この闇の紛れることが可能な彼女は、声音すら紛れることが可能なぐらいの微笑を漏らすのだ。


 自分自身が、女王シルフィーに告げ口をしたことで彼女の視線が己の主である二国の男王、白馬の王子さまへと視線が向き変わり。他の女性と優艶に戯れている姿を見て確認──。


 それ、そのこと、行為に対して、いつもの美と時の女神! ジャポネの誰にでも優しく労りある。女神の微笑みを日輪の如く振り撒く。穏やか寛大、温和な女王シルフィーさまではなく。嫉妬心に狂う。怒り狂っている。己の顔を強張らせ、歪ませながら。恐ろしい形相をしている女神、女王のことを彼女は、「(フフフ、いつも何食わぬ顔をしながらすまし顔……。何が楽しいのか、嬉しいのか知らないが? 意味も無く微笑んでいるこのシルフィー(ひと)も。やはり女性……。女なんだ……。自分の亭主の浮気現場、最中を見て、嫉妬心に怒り狂い。己の顔色を変え、歪ませているから面白い。面白い……。あああ、笑える。笑えるから本当に……)」と。

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