第56話 アイカの不満(2)

「や、やめろ! 触るな! 触れぬなぁ! 私の唇や肢体(身体)に……。頼むからお願いだ……」


「いいじゃないか別……。お前と俺との仲。仲ではないか……」


「いいや! 駄目だ! 駄目だ! 頼むから。私の髪や頬、首筋……唇や舌にも。お前の唇、舌、掌を当て、這わし。触れ、触る事はしないでくれお願いだ。た、頼むよ……」と。


 女、女性に触れ触らせ、キスをさせろと迫る男に対して拒む、拒み続ける女性の声と台詞が聞こえてくる。きたのだ。


「…………」


 でも、こんな感じだよ。男、と、いっても? 大変に大きな体躯を持つ、オーク種族の男性のようだが。


 同じ種族、オークの煌びやかな飾り、冠や耳飾りに、首飾りと、己の肢体を所狭しと、出した。白銀色を主体とした艶やかな皮防具を身に纏う。高貴な女性らしい者の拒否、拒み、諫め。最後は自分に触り、触れ、キス……甘えないで欲しいとの願いを無視、拒否しながら。高貴な女性へと、優艶に戯れ甘えてくる。くるのだ。


 だから高貴な女性は困り果てた顔、様子と、優艶な仕草──。

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