言ってしまった 5

「このお店の『milk tea』と言う名前の由来は、結子さんがミルクティーが好きだったからなんです」


(あ…やっぱりそうなんだ……)


初耳だったけど、色んな話を聞いていてそんな気はしてた。


「開店間近だって言うのに、お店の名前にもなっている看板商品のミルクティーがなかなか納得の行く味に出来なくて、何度も失敗していたんです」


「三毛さんでも失敗するんですね」


今の三毛さんからは想像が付かない。


「そりゃ、しますよ。たった今もしました」


鼻の頭を掻きながら、ハハハと笑う。


「最初の頃なんて、失敗続きでした。結子さんが店の看板商品をミルクティーにしたいって言い出してからは何度も何度も試行錯誤を重ねて。でも最初から上手くなんて淹れられないから、大量のミルクティーが作られる。流石に飲みきれないとそれを廃棄しようとしたら、先程の実森さんの様に結子さんに止められたんです。『捨てるなんて勿体無い!ミルクティーが泣くわよ!』って……」


「ああ……」


確かに、さっき私も同じこと事を言った。


「そんな事を言われたら廃棄出来なくなってしまって、それからしばらくは二人でミルクティーを嫌と言う程飲みました。それこそ、もう一生分ってくらい」


その時の事を思い出しているのか、三毛さんがクスクスと笑う。


「でも、なんとかオープンの前日に納得の行くミルクティーが出来て、今こうして皆さんや実森さんに提供出来ている訳です」


「そうだったんですか……」


ミルクティーは、三毛さんにも結子さんにも特別な物なんだな。


「あ、すみません。長々とこんな話……」


「あ、いえ……」


三毛さんがちょっとバツが悪そうに鼻の頭を掻いた。


「こんな話、誰にもした事無かったのにどうしたんだろう……?」


と言いながらブツブツ呟いている。


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