家の倉庫が転移装置になったので、女神と四大精霊に農業を仕込んで異世界に大農場を作ろうと思う ~史上最強の農家はメンタルも最強。魔王なんか知らん~
第311話 農業祭、閉幕!! 農家だって時には肉を食う!!
第311話 農業祭、閉幕!! 農家だって時には肉を食う!!
祭の終わりはいつも何故だが少し物悲しいものである。
特に、年に1度しか開催されないものなどは、感受性が高ければなんだか喪失感すら覚えてしまう。
それでは春日黒助を見てみよう。
「終わったか。ふ、ふははっ! やっと終わった! 実に長かった!! これで明日から、また農業に集中できるぞ!! ははははっ!!」
過去最大級に感情を昂らせていた。
ハイテンション時のルルーシュ・ヴィ・ブリタニアもかくや。
高笑いまでしちゃっております。
そんな事業主は置いておいて、1日頑張って仕事をしたメンバーたちは皆、充足感に満たされた表情をしていた。
「やー! 終わったねぇ! 去年よりもずっと忙しかったなぁ!」
「だねー! 鉄人がこんなに働いてるとこ、あたし初めて見たもん! 褒めたげる! えらい、えらい!!」
実は結構仲良し。
鉄人と未美香コンビは健闘をたたえ合う。
既に鍋を洗い始めている、嫁力530000の柚氏。
彼女もご機嫌な様子。
「ふふっ! ツンデレメイドで私が攻め……! ふふふっ! なんだか新しい扉が開いてしまいそうです!! 後でベザルオールさんにラインしなくちゃですね!!」
柚氏は平常運転。
最近、良くないものの拾い食いが顕著である。
ちなみに、現在も鬱アニメ一気視聴中のベザルオール様は、ラインを受信してすぐにネーム作業に入られたと言う。
「イルノ! お疲れ! あんたと一緒だと頼もしかったよ!!」
「ヴィネさんこそお疲れ様ですぅー! やっぱりヴィネさんとお仕事すると安定感が違うですぅー!!」
ポップコーンチームは実に晴れやかな表情。
真冬の空の下、割と薄着で作業をしていたにも関わらず、2人の乙女はじんわりと汗をかいている。
なお、その様子はそこはかとなくセクシーだったため、刃振組のヒットマンチームが出動して平和的に一仕事終えた乙女たちの平穏を守りました。
「黒助! 売上の集計終わったわよ! 確認お願い!!」
「ああ。すまんな、ミアリス。お前にはいつも多くの事で助けられ……ぐはぁっ」
春日黒助、地面に膝をついて胸を抑えながら倒れ込む。
最強の男のまさかの事態に近くにいた鬼窪も駆けつけ、ミアリス様と一緒に慌てふためいた。
「あ、兄ぃ!? どがいしたんじゃ!? 兄ぃほどのお人が、よもや昏倒するっちゃあ!! こりゃあただ事じゃないで!?」
「お願い! 死なないで、黒助!! あんたが今ここで倒れたら、最終決戦はどうなっちゃうの!?」
ミアリス様は遊戯王を知りませんが、感覚で「このセリフ言わなきゃ!!」と悟ったそうです。
「……なんだ、この売上は。この冗談みたいな額が、1日の売上と言うのか? いや、ミアリスの仕事はいつも完璧だ。つまり、これは偽りなき事実。ふ、ふははは……」
今度は敵にしてやられてヤケクソになったルルーシュみたいに笑うクロちゃん。
それでは、表彰式が始まります。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「本年の農業祭! 栄えある最優秀店舗賞に輝いたのは! 春日大農場です!! 2位との差はトリプルスコア!! 素晴らしいですね!! では、代表の春日さん! 賞状を……春日さん?」
もはやこうなる事は決まっていた。
そこに存在していたバッドエンドに向かって、ただ愚直に歩みを進めた結果なのである。
ただ、売上が中古の軽自動車くらいなら買える額だった事実は、春日黒助メンタルを叩き割った。
なお、彼の最強のメンタルが敗北したのはこれが初めてである。
農協の催しでメンタルを砕かないで欲しい。最終決戦、どうするの。
「あ、ええと。代理でわたしが受け取らせてもらいます! あ、皆様、いつも黒助がお世話になっております! ミアリスと申します!!」
「ああ! 良かった! ミアリスさん! えー! こちらは春日大農場の副代表兼、将来はもっと親密になられる可能性の高い、ミアリスさんです!」
「も、もう! 岡本さんってば! ヤメてくださいよ!! もぉぉ!!」
「ひぐぅっ!! な、なはは……。いやはや、力強い照れ隠しですなぁ……」
無自覚で黒助の代わりに一矢報いたミアリス様。
照れ隠しと言う名のガチ殴りで岡本さんに腹パンかましました。
それから笑顔で賞状を受け取って戻って来たミアリス様の指揮の元、全員で撤収作業を開始。
刃振組の構成員たちも率先して手伝ってくれたため、30分ほどで片付くと言う、最後まで有終の美を飾る春日大農場。
「お前たち。すまなかった。俺としたことが、少しばかり心を折られた。もう大丈夫だ。この敗北が俺をまた1つ上のステージへと引き上げてくれた。2度と負けん」
農協に心をへし折られた惨劇をパワーアップイベントにしてしまうのが最強のメンタル。
「さて。では、行くか。既に予約は済んでいる」
黒助の言葉を、春日家の一同はすぐに察した。
「ひょー! これが楽しみで毎年手伝ってるまであるんだよねー!!」
「また、このニートは。たまには鉄人さんもお金を出してください」
「やたー! おいしーよね! あそこのお店!! いっぱい食べるぞー!!」
一方、コルティオール組は全員がハテナ顔。
「未美香? これからどっか行くん?」
「そっか! リュックさんたちは知らないんだ! あのね! 農業祭の後はいつも焼肉食べに行くんだよ!! すっごい美味しいの!!」
素晴らしい仕事をした者には、相応の報酬が与えられるべきである。
売上をごっそり持って行かれても、春日黒助の方針はブレない。
「鬼窪。お前たちも来い」
「ええんですか!? ワシら、16人もおりますで!?」
「構わん。むしろ、突然呼んだのに手伝ってくれたのだ。当然だろう。だが、車を出してくれると助かる。乗って来たバスにお前たち全員は入りきらん」
焼肉屋へ移動開始。
肉は全ての苦しみと悲しみを洗い流してくれる。
◆◇◆◇◆◇◆◇
飲酒が可能な者は酒を、そうでない者はジュースをグラスに注ぎ、乾杯をしたら至福の時間が始まる。
昼食も軽くしか食べていない一同。
腹が減った時に食べる焼肉ほど生を実感できるものはないとさえ言われている。
「うまー! なんだこれぇ!! すげぇ! やべぇ!!」
「それはね、ハラミだよ! おいしーよね!!」
「イルノ? なんで冷やしトマト頼んでるんだい? 寒くないかい? 温度計見たら、3℃だったよ?」
「トマトちゃんを見かけたら食べずにはいられないですぅー!!」
「兄さん! 野菜盛りの追加、注文しますか? あ! ビールもですね!!」
「柚葉ちゃんは良いお嫁さんになるねー! 僕が保証しちゃう!」
「鉄人さんはろくでもない人間になりますね。私が保証してあげます」
「まあ、落ち着け。せっかくの肉だ。仲良く食べよう」
一同、結構高い焼肉店を満喫中。
刃振組のメンバーも遠慮しながら「いや、しかし黒の兄貴に遠慮するのが失礼なんじゃ!?」とパラドックスも抱えながら、結局美味しく頂いている。
だが、ただ1人。
ミアリス様だけは箸が進まない。
これまでに食べたのは玉ねぎとキャベツとカボチャのみ。
「どうした。ミアリス。食欲がないのか?」
「あ、違うの。あのさ、わたしね。焼肉って初めてなのよ」
「ああ。そうだろうな。コルティオール組は全員がそうじゃないのか?」
「うん。そうなんだけどさ。なんていうか、野菜より優先してお肉食べたら、野菜に対しての不義理になるんじゃないかって思っちゃって……」
春日黒助の心が震えた。どうした、最強のメンタル。さっきから不安定過ぎる。
「ミアリス……! お前、いつの間にそんな気高き精神を……!! 敢えて言おう。肉を食え。そして、野菜と一緒に食え。肉と野菜はお互いを高め合ってくれる、最高の相性なのだ。俺とお前のようにな」
「そうなんだ! じゃあ、食べてみるわね!! あむっ! わー! 口の中でとろける!! 美味しい!! 本当だ! 野菜と相性抜群ね!!」
なお、この日の夜。
自宅に帰ってお風呂に入ったミアリス様は、そこでようやく「あ、あれ!? わたし、なんかすごい事を黒助に言われてなかった!?」と気が付いた。
どうして良いのか分からなくなった女神様は、とりあえずイルノを呼んだ。
駆けつけたイルノに全裸で「わたし、どうしたらいいと思う!?」と叫ぶミアリス様。
イルノさんは答えた。
「まず服を着やがれですぅー。慌てて駆けつけてものすごく損した気分ですぅー」
農業祭編。これにて完結。
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