第23話 久しぶりの一人の時間……だったのに
妹と付き合い始め……改めて思うがすげえパワーワードだな。
とにかく俺と妹は常に一緒にいた。
妹も俺も意識的に一緒に居ようとしているからかも知れない。
でも、やはり一人の時間は欲しい物で、例え何十年と一緒に暮らす夫婦でもそう言う事は思う……らしい。
そして最近妹の様子がちょっとおかしい……。
いや、例えでも冗談でもアニメのタイトルでもなく、おかしいのだ。
恐らくだが、妹は少しずつ気が付いているのかも知れない、俺への想いに、自分の勘違いに……。
でも、俺と一緒だとそう言った事も考えられないだろう。
そして俺と一緒にいる為に、妹の人付き合いが減っているのもまた事実。
だから俺は妹に言った。「たまには友達と遊んできて良いんだよ?」
たまには俺から離れ、気晴らしした方が良いと思い、そう言うと、妹は一瞬悲しい顔をして、そして俺から何かを感じ取ったのか素直に頷いた。
一を聞いて十を知る。
俺の事に関して、いや、これは友達でもそうなんだろう。
聡明な妹はこれを実践しているかの様に何も言わずに俺を見てニッコリと微笑んでくれた。
だから考えてしまうのだ……俺との事は俺との関係は誰にも言えない、誰にも相談出来ない。
どんなにコミュニケーション能力が高くとも、どれだけ交遊範囲が広くても……これだけは自分で考えなければいけない。
いや、俺と二人で……二人だけで解決しなければならない。
そして栞は今までずっと一人で悩んでいたのだ。
だから今は二人で悩み二人で可決しよう、いや、したいって俺は思っている。
そして、それはそれとして……。
俺は現在高校1年、つまりは思春期真っ盛り……彼女持ちとはいえ、相手は妹だ。
このたぎる思いをどこかで発散しないと、いつか爆発してしまう。
体育会系とは現在無縁な俺、やはり運動よりもそう言った事は雑誌等で発散するより他は無い、いやそもそも運動して発散とか都市伝説だから!
え? 今時スマホで? まあ、そうなんだけど、やはり画面が小さいと興奮がって、何を言わせる!
俺はアナログ人間なの! パソコンも持って無いの!
まあ、そのついでに漫画や雑誌等も買うので……電子書籍? なにそれ美味しいの?
と、誰に突っ込んでいるのかもよくわからず、前半のシリアスっぽいのはなんだったんだと自分に突っ込んでみる。
まあ……要するに、たまには栞とは別行動で一人で本屋に行きたいって事だ。
そして、俺に言われ、本日栞は友達と出掛けて来ると言って朝から家を出た。
つまりは千載一遇のチャンスがやって来たわけだ。
俺は栞が家を出たのを確認すると、直ぐ様着替え、続いて家を出た。
向かうは地元に駅中にある本屋。
二駅先に大きな書店はあるし、こんな地元じゃ誰かと遭遇する可能性も捨てきれ無いが、今は時間の方が大事。
さっさと買って妹が帰ってくる間に……。
俺はいつもとは違い、足に羽が生えた如く、脱兎の様に駅に着く。
「あら、こんなところで奇遇ね」
そして誰かの陰謀なのか、駅にはまるで俺を待ち伏せしていたかの様に会長(金髪バージョン)が立っていた。
会長はあの観覧車の時の様に、おしとやかなお嬢様風の学校とは正反対の格好で、クラブにでも行くような、漫画に出てくるキャバ嬢の様な、紫色の派手なスーツにタイトなミニスカート姿で俺の前を塞ぐが如く威風堂々、まあ簡単に言うと偉そうに立っている。
「誰が偉そうによ!」
「あれ?」
会長ってエスパー? テレパス? やべえ、俺の妄想駄々漏れ?
「ふ、ちょうどいいわ付き合いなさい」
「お、俺はちょうどよくは」
「何か予定でも?」
「ああ、そうデートに」
「ふ、あんたを相手にする女なんて妹以外いるの?」
「いるわ!」
「じゃあ断りなさい、行くわよ!」
会長は俺の腕をむんずと掴むと、その容姿からはあり得ない程の力で俺を引きずって行く。
「いや、ちょっと、俺は本屋に……あああ」
誰か助けてと周囲をみるも、皆見て見ぬ振りで足早に駅に向かい歩いていく。
ああ、こんなところで他人には無関心の現代を都会を感じるなんて。
俺は困っている小学生女子がいたら、捕まってでも助けるからな!
だから誰か俺を助けろ!
そう願うも正義の味方なんていなかったとばかりに俺はモーニング終了間近の喫茶店に連れて行かれた。
「くっそ、なんでモーニングは豆が出ないんだ……」
コーヒーよりも豆が有名な某喫茶店にてド派手な女子とお茶をする。
しかも俺を引き摺り連れて来たが、会長はゆったりとコーヒーをすすり、俺を見もせずボーッと窓の外を眺めている。
「あ、あの……なんか話があるんじゃ?」
直ぐに帰るつもりだったので何も食べていないのを思いだし、モーニングコーヒーに無料で付いてくるパンを齧り、卵をパクりと口にして会長に向かってそう聞いた。
「私のも食べていいわよ」
「あ、すみません……」
思わず出た会長からの優しい言葉に、目上だった事を思いだし俺は感謝の意を示し会長のパンを自分の元に引き寄せた。
会長は高貴な王女様の様な微笑みで俺を見ると、また寂しそうに外を眺め出す。
俺はパンを齧りつつ、その会長の美しさに思わず見とれてしまっていた。
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