第10話 五年前、筑波サーキットにて
排気効率を最優先に設計されたレース用エキゾーストシステムの爆音が狭い車内を反芻していた。
徹底的に軽量化された車体に、簡素極まりない車内。その中を張り巡らされたロールゲージがピシピシと小さく音を立てながら軋み、チューニングされたエンジンが鋼鉄のマシンを前方へ弾き飛ばす。アクセルを踏み込むと、周囲の風景は公道ではあり得ない速度で後方へと吹き飛んでいった。
気合いを入れて新調したアライ製ヘルメットはベンチレーション付きとはいえエアコンの無い車内では意味を成さず、常に海斗の顔の周りは熱で覆われているような心地がした。しかしながら、海斗の頭はピーキーなレーシングマシンを操るため四肢に的確に指示を送り続ける。
幅の広いアスファルトの路面に、エスケープゾーンの緑、フェンスの無機質なグレー。そして青々と晴れ渡る広い空が、フロントウィンドウに映る殆ど全ての風景だった。海斗の目の前を走る車は、周回遅れやトラブルに見舞われた車両以外は存在しなかった。
五年前、筑波サーキットにて開催された耐久レース。
海斗にとって、このレースは一世一代の大きなチャンスであった。プロのレーシングドライバーになれるか否か、その大一番だ。
今度の大会で表彰台に登れたら、うちの専属ドライバーとして雇ってやる―――そのような言葉で、とあるレーシングチームの担当者から声を掛けられた。幾度も走行会に参加し、時には表彰台に上がる程の実力者であった海斗を、前々から目をつけていたとの話だった。
海斗は柄にもなく舞い上がった。もちろんメーカー直轄のワークス系チームではないものの、レースを齧っている人間にはそれなりに知名度があるチームだった。高名なドライバーも多数輩出しており、プロとしてやっていくには申し分ない環境であることは疑いようもなかった。
普段は切磋琢磨している泰明や隆太もこの時ばかりは精一杯後方支援に協力してくれた。レーシングチームも三人でやってきたことは知っていたらしく、三人にある程度の指導や裁量、さらにチーム所有のレース用車両の貸借を与えられた上での今回のレースだった。言うなれば三人は一つのチームであった。これ以上の厚遇で臨めるレースもそうはない。
遂に俺たちの努力が報われる。海斗は半ば確信した。
海斗のマシンは十ラップ目に一位のマシンをコーナーで刺してから長らく一位を独走していた。耐久レースは刹那的な速さがあれば良いものではなく、走行中のマシンマネジメントを含めた総合力が必要である。だがそこも抜かりなく、適切なタイミングでのピットイン、タイヤマネジメントを意識した丁寧なライン取り等を敢行し、海斗は常に一位を堅持していた。
レーシングチームから貸与されたマシンは、ワイドボディ化されテールには大型のGTウィングが聳え立つような現代的なレース車両であった。空力的には十分にダウンフォースを得られそうな様相であるにも関わらず、幾分かオーバーステアな傾向がある癖の強い挙動だった。普通であれば手なづけるのは困難を極めるだろうが、海斗には十分に制御ができていた。立ち上がりのアクセルオンの際にやや気を付ければ、高い過給圧でドーピングされたエンジン、ドライコンディションに特化された極太スリックタイヤが生み出す速さは言うまでもなく一般車両とは格の違う走りであった。
あとコーナー数個抜ければゴールだ。ミラーを見ても後続車両は確認できない。圧倒的な首位―――このままそつ無くこなせば、チェッカーフラッグが晴天にはためき、プロレーシングドライバー・川島海斗が誕生する。
夢の到達まで、あとほんの少しというところだった。
しかしながら、幾重にも重なる轟音の中、はっきりとした雑音が海斗の中で打ち鳴らされる。
『ねぇ海斗。いい加減にして!またレース行くの?』
轟音の中、ハンマーで頭を打ち付けられたように彼女の苛立たしげな声。
その声を、当然海斗は知っていた。
当時付き合っていた彼女の声。ただし、後に付き合う事になる翠とはまた別の女性だった。
その女性とはずっと良好な関係であったと思うし、同棲もしていた。だが、全体的に地のついた生活を好む性格だったらしく、最近は海斗のレース活動に対し露骨に嫌な顔をすることが多くなっていた。
今日だって前々からレースに行くと言っていたのに、そんなバカな予定は取り止めにして有名なFP主催の金融セミナーに行こうと言い出したので、大喧嘩に発展したのだった。
だ、駄目だ・・・今は考えるな。自分で自分に言い聞かせ、海斗は次の第一ヘアピンのために減速を開始する。第一コーナーから第一ヘアピンの間隙はや蛇行した線形であり、ライン取りが難しい。しかし、この日のために山のように練習に積んだ海斗には何ということは無かった。アルミ製のブレーキペダルを踏み込み、ショートストロークのシフトノブを素早く一段階下げる。
スピードを殺さぬよう、最低限に浅い舵角でイン側の縁石を掠めるように駆け抜ける。
その時また声がした。
『え?レーサーになれるかもって?あんたさぁ、いつまでそんな夢見てるの?大人になってよ!』
強く激しい口調で叩きつけられた言葉。その時の彼女は海斗の夢に一切の興味も理解も示さなかった。そんなことはとっとと止めて現実を生きろと日々言い続けていた。そして、それは海斗の内面をズタボロに傷つけた。
フルバケットシートに縛り付けられた体は、急激な減速と高速コーナリングをもってしても動くことはない。
続いてのダンロップコーナー。しかし、海斗の心は大きく揺れ動いていた。
粘度の高い罵りは頭の内側に張り付き、こんなレースの最中であっても海斗の精神にダメージを蓄積させていく。そのせいで、シフトワークをミスした。タコメーターはレッドゾーンの範囲をブルブルと鳴動し、甲高いエンジン音でマシンが悲鳴をあげた。
それと同時に、とどめのような彼女の言葉が海斗の頭を殴打する。
『私たち別れよ?あなたとじゃこれからの未来が見えないの。それに、悪いけど私他に好きな人ができたから』
空っぽの海斗は、レース以外のものに心を支配されたままアクセルを踏み込んだ。そこで事件は起きた。
何度も駆け抜けた第二ヘアピン。その立ち上がりで、海斗の駆るマシンは急に姿勢を崩した。強大な馬力を持て余した後輪がグリップを失った。これまで前方向に向いていた加速度が、やおら横方向のそれに変化したのをドライバーたる海斗ははっきりと感じ取った。マシンは派手なスキール音と白煙を伴って滑り始めていた。
オーバーステア気味なマシンの特性は頭でも体でもきっちり叩き込んでいたつもりだった。しかし、海斗の心がグラグラと揺れ動いたとき、それは牙を剥いたのであった。
「しまった!」
ヘルメットの中で海斗は叫んだ。
頭で考えるよりも早く海斗の両の腕はコーナーアウト側へハンドルを切り、右の足裏でアクセルを吹かした。ほとんど脊髄反射的な動作で、愛機シルビアであればこの動作でどうにか姿勢を制御できた。だがこの時既に何もかもが手遅れだった。
あまりにもカウンターステアの舵角が大きすぎた。次にマシンは一転してコーナー外側に鼻先を転換し、先程までの反動で逆方向にスライドし始める。ドリフトにおける所謂"振り返し"の状態に陥っていた。マシンはとうに修正が不可能な状態に陥っていった。為す術なくマシンはくるりと百八十度回転し、進行すべき方向に対してテールを向けてエスケープゾーンへ突っ込んでいく。目まぐるしく風景が変わるフロントウィンドウを目にし、ドライバーたる海斗の頭は完全に思考停止した。
エスケープゾーンには突っ込んできた車両の勢いを止めるための小石が敷き詰められている。しかしながら、海斗のマシンはそのままの勢いで盛大に小石を巻き上げながら滑っていく。このまま最外縁のフェンスに激突することを覚悟し、海斗は体を強張らせた。しかし、激突の衝撃を感じることはなかった。幸か不幸か、フェンスギリギリで海斗のマシンは停止した。
しばらくの間、フロントウィンドウから今しがたマシンが巻き上げた土煙しか見えなかった。それが晴れると、首位陥落した自分を嘲笑うように次々と後続車両が走り去っていくのを海斗の目が確認した。それをじっくりと見せつけられながら、海斗はノロノロとマシンを発進させるより他なかった。
レースが終わった後の海斗は惨めだった。
声を掛けてくれたレーシングチームの責任者は一言二言、今回の話はなかったことにしてくれという旨の冷め切った言葉を突きつけ、海斗の前からあっさりと引き上げていった。
そして、三人以外誰もいなくなった出場者控室に戻った海斗に待っていたのは気色ばんだ隆太からの罵倒だった。
「うーん、何と言えばいいかなぁ。お前には心底失望したっていうか、ムカッ腹が立つというか・・・」
「す、すまない。お前らの助けがありながらこんな結果になっちまって」
隆太は古びたパイプ椅子にふんぞり返って座り、海斗に言葉を投げかけた。口調は穏やかなものの、言い終わりにタバコの箱を乱雑にテーブルへ叩きつける。思わず、海斗はびくつかせた。
「俺は寝食を惜しんでお前をサポートし送り出した。片やお前は女にも振られ、プロのチャンスも棒に振った。確か、去年もそんなことあったよな?本当にお前は本番に弱い奴だな、え?」
「それは・・・」
「まま、いいんじゃないか?それ相応の覚悟しか無い奴がそれなりの結果を得る。至極真っ当じゃないか?何にも問題なし!全て予定調和!な!」
隆太の声は不気味なほど快活で弾んでいた。だが、終始海斗と目を合わせなかった。そして、言葉の隙間に挟まれる苛立たしげな溜息や頭を乱雑に掻く様から見るにつけ間違いなく、隆太は怒っていた。激怒していたとさえ言ってもよい。悔しさと申し訳無さで打倒されそうな海斗は、隆太の丸々した体から放たれる怒りの空気にただただ蹂躙されるよりなかった。
「お前の取るに足らねぇ弱っちぃメンタルのせいで、俺の労力は全部水の泡。だけど気にすんなよ。俺は今日のこと忘れてやるからよ。ついでに、お前というダチがいたってことも綺麗さっぱり忘れてやるよ」
「いや、それは・・・」
「おいおい、なんとか言ってくれよ!まるで俺がお前を虐めてるみたいじゃあないか。そんなことしてないよな?な!」
隆太は海斗の腕をバシバシ叩いた。新調したレーシングスーツが小さくギュウギュウ音を立てて鳴いた。
情けないことに、海斗はもう泣きそうだった。彼女との別れ、掴みかけた夢が手の中から零れ落ちたこと、そして友人からの心無い言葉。悪いことが幾重にも重なって重層的に海斗の心を襲い、そして打ち壊した。成人男性という肩書だけが、海斗の涙腺から涙が流れ落ちるのを押し留めていたといっても過言ではない。
その時、それまでテーブルの縁に体重を掛けて事態を静観していた泰明が静かに二人の間に割り入った。
「おい隆太。もうそれくらいにしとけ」
泰明も海斗と目を合わせなかった。だが、海斗に対して怒っているようには感じなかった。海斗には泰明の大きな背中しか見えなかったものの、むしろ敵意は隆太の方に向いているように見えた。
それを受けて、隆太は小さく低調な笑いを吐き出した。
「おやおや。お前が人の失敗を庇うとはなぁ。珍しいじゃん。明日雪でも降ったら責任取れよな」
「勘違いしないでほしいけど、俺は別にこいつを馴れ合いで擁護する気はないよ」
泰明は隆太を見据えたまま手をポケットに突っ込んでガサガサと音を立てて何やら探していたが、ややあって「あ、そういや禁煙してるんだった」と呟き、手持ち無沙汰を紛らわすよう腕を組んだ。
「お前の言う通り、こいつが結果を出すべき時に結果を出せなかったっていうのは事実だしな。だがな、言い方を考えてたら?って話だよ。そんなんじゃうまくいくもんもいかないぞ。俺らチームだろ?ミスをした他メンバーへの慮りってのはすべきだろ」
「えーっと、何で俺が攻められてるんだ?俺らがチームだって言うなら、ポカしてチームの足を引っ張った奴を厳しく断罪するのは当然だろ?違うか?」
「お前の言い分は間違ってねぇよ。実際、プロだったらこのしでかしは怒号モンだろうよ。でもさ、俺らは言うてアマチュアレーサーだろ?楽しく走って無事に帰れる。それじゃあいけないのか?」
「いやいやいやどんだけ甘ちゃんなんだよ。こんな無様な結果でおめおめと引き下がれってのか?それともそんな生半可な気概でプロの世界に行けると思ってんの?レース舐めんなよ」
隆太と泰明は言い合いの末、睨み合った。
この一年前までは普通に三人で峠に行ったり飯を食いに行っていた。それこそ、泰明が言った楽しく走る、をモットーに走りに向き合っていた。だが、このレースの少し前から少しずつその関係性に摩擦が生じ始めてきていた。
隆太はここのところ走りを究めようとする意志が強く、他の二人への言葉も刺々しい。事あるごとにプロという言葉を多用し、走りに対して妥協した態度が少しでも見受けられれば容赦なく檄を飛ばすのが常であった。
一方で、ストリートでは硬派な走り屋として名が通っていた泰明は、このところは往時のストイックな言動が嘘のように角が丸くなっていた。これまで通りの車好きは変わらないものの、峠にも来る頻度は目に見えて少なくなりつつあった。
とはいえ、先程から隆太に散々言われ、泰明は明らかに気分を害したようだった。意識してかせずか、先程よりも声量が大きくなる。
「それじゃあ言わせてもらうけどさ、お前、最近二言目にゃあプロプロって言うが、それってそんな大事な事なのか?」
「は?大事かどうかという次元の話じゃないだろ。それが全てだよ」
「うん、やっぱりお前の考えには賛同できんな。俺車好きだよ。でも最近思ったんだよ。好きな世界に厳しさとか緊張感とか、そういうの持ち込みたくないんだよ。これまで俺ら、楽しくやってたじゃん?もっと気楽に、肩の力抜いて車好きをやってく方向で行くことはできないか?」
「泰明・・・最近のお前の態度には目に余るものがあったが、そこまで腐ってたとはな・・・とことん呆れ果てたよ」
「へぇ、随分言ってくれるじゃん。お前、チームのスーパーバイザーにでもなったつもりか?」
泰明は相変わらず余裕たっぷりに口元を綻ばせながら隆太と対面する。隆太からして見れば意識が低い雑兵にも劣る存在たる泰明が、まるで優位に立っているかのように振る舞っているのが気に入らないらしい。遂には勢いよく立ち上がり、近くにあったテーブルを掌で思い切り叩きつけた。
「お前!ヘラヘラ笑うんじゃねぇ!いいか?!走りに楽しさなんか必要ねぇ!レースは勝つためにやってんだよ。勝つためだったら他は何もいらない。もちろん、お前が言ってる楽しさとやらもな!分かったか?分かったなら二度と俺の言うことに口出しするんじゃねぇ!俺の言う事を聞け!」
大きく短い音が鳴り、小さな部屋はわずかながらその残響に包まれる。
人の怒号に対しても、泰明は臆する素振りは見せず、腕を組んだままだった。そして数秒が経過した後、隆太から目を逸らして大きく溜め息を吐いた。
「少し前から思うところはあったが、どうも相容れないみたいだな。悪いけど、俺は下りるぜ」
「おいおい、本当にもう来ない気か?正気か?」
「あぁ本当だ。お前とレースやってても楽しくねぇしさ。それに・・・まぁちょうどいい機会だから言うけど、俺最近彼女できてさ。正直結婚も考えてる。遠征費とか参加費は、プレゼントとか交遊費に充当したいからレース活動は引退するわ」
「あぁそうかいそうかい!そりゃあせいせいするね!俺もお前らみたいな女に惚けているような意識の低い奴らとレースするのなんかまっぴらごめんだ!悪いが、お前らとは今後一切つるんでレース活動しないぜ!」
隆太は怒鳴り声を発した後、泰明と海斗を大型魚のようにギロリとした目つきで交互に睨みつけた。少しして、テーブルに置いていたタバコとライターを鷲掴みし、出口へ向かって憤然とした足取りで歩き始めた。
「どこ行くんだよ?」
「お前らには関係ないよな?!クズどもが、俺に話しかけんじゃねぇよ」
隆太の進路をパイプ椅子が阻んだ。しかし怒りに支配された隆太はそれを荒々しく蹴り飛ばした。椅子は勢いよく吹っ飛び、近くにあったテーブルや自販機に勢いよくぶつかって盛大な音を立てた。
「待て待て。椅子くらい戻してけよ」
泰明の呑気な声を無視し、隆太は姿を消した。
遂に危惧していたことが起こってしまった―――悔しさと悲しさがないまぜになった負の感情に打ちのめされる中、海斗は二人が決定的に断絶させる様を見ているしかなかった。
泰明は隆太が消えた方向を向いてこめかみの辺りをカリカリと掻いていたが、やがて何も言わずに先程椅子を拾い上げ、元の場所に戻した。
「海斗。あんま気にすんなよ?」
「・・・泰明もすまねぇ。こんな事になっちまって」
「自分を責めるな。もう終わったことをネチネチ攻める隆太が良くないよ」
泰明は直立したままの海斗の肩を優しく叩いた。
だが、続け様に厳しい言葉が飛んできた。
「しかし・・・この頃浮かれ上がってたお前にも夢を目指すことがどういうことか、ちったぁわかったんじゃないか?夢を追うってのはさ、色々と捨ててかないといけないんだよ。それが本当に幸せなのかどうか、俺は疑問符を付けたいね」
柄にもなく泰明は人生論のようなものを吐いた。いつもであれば一笑に付す海斗であるが、気持ちがどうしようもなく低位にある今の状況ではどうしてなかなかその言葉は響いた。
レーサーになるという夢。そのために彼女を失った。友人も失った。
そこまでして達成する夢の先には、本当は何があるのだろうか。
その時の海斗には分からなかった。ただ、弱音を吐くことだけが唯一できたことだった。
「俺は・・・俺はどうすればいい?」
「俺に聞かれてもな。ただ・・・」
泰明は海斗と目を合わせずに、遠くに聞こえるレーシングカーのくぐもった咆哮を聞きながら続ける。
「俺としちゃあ、一緒に面白おかしく車好きやらねぇか?と言いたいね。さっきも言ったけど、別にプロだけが全てじゃないんだ。もっと状況似合ったやり方で楽しめばいいじゃないか?」
「俺は・・・」
「すぐに答えを出そうとするな。別に期限があるわけねぇんだ。ゆっくり考えろ」
結局、隆太はその日以降二人の前には現れなかった。
風の噂では、街を出てどこか遠くの街にある有名なショップへ入社したという話だった。それがレース業界で有名なあのメテオール関西だということを海斗たちが知るのは、随分後のことだった。
その日、意気消沈した海斗がアパートに戻ると、部屋から彼女のものは綺麗さっぱり消えて無くなっていた。さしずめ、今日という日が来ることを見越して少しずつ荷物をまとめていたのだろう。情けないことに、海斗は目の前のレーサーの夢にかまけ、そんな変化にすら気づいていなかった。
そして泰明と海斗は、最もプロに近づいたあの日以降レース活動から縁遠くなり、やがて前のように峠に繰り出すことも無くなってしまった。
あれから五年。隆太との再会により、海斗の心は大きくあの屈辱の日に揺り戻される事になったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます