第27話 2-17 第2章最終話 救国の英雄
少年は再び立ち上がる。
頭からは血を流し、体はぼろぼろ
なのに、その目は死んでいない。
ゴブリンの王を見据えるその少年は、刃を構えて前を向く。
その熱く燃える瞳には、微塵の恐れも映さない。
「護国刀 閻魔
彼が名付けた彼だけの武器です。
この国を護りたい。あの悪魔のような存在を裁き
バラバラになりかけているこの国を救いたい。
そういって彼はこの刀に名をつけました。」
八雲が、刀の名と意味を語る。少年の思いを日本中に伝えるために。
ゆっくりと少年は怪物へ歩き出す。
そして、少年の護るための戦いが始まった。
「すごい」
絶望していた記者達からは、心の声が漏れる。
あの化け物に一歩も引いてない。
あの破壊の化身のような、存在の攻撃をすべて受けきっている。
「勝てるのか? 人間があんな存在に。」
椅子から落ちて立ち上げれなかった記者が立ち上がる。
少年の勇気をわけてもらったかのように。
「たおしてくれ。頼む。そいつを倒してくれ!!」
いつしか会見の間は、少年への声援でいっぱいになる。
テレビの向こうの視聴者たちも同様に、日本中の人々が応援する。
少年は斧に飛び乗った。
物語でしか見たことのないその動き 人間技じゃない。
「いけ! いけ! いけーーー!」
いつしか顔を下に向けるものはいなくなっていた。
届く。彼の刃ならきっとあの化物に届く。
国民の期待を一身に背負う少年は、期待に応えるように少年の刃は
破壊の権化の怪物の喉をつらぬき、薙ぎ払う。
そして怪物は糸がきれたかのように、力なく地面に倒れた。
勝った?勝ったのか?
光の粒子となる怪物をみて、少年の勝利を確信する。
「「勝ったー!! うぉぉぉぉぉ!!」」
記者達の声は会場を揺らし、テレビの向こうの視聴者たちも一斉に声を上げた。
その日、日本で一人の英雄が誕生した。
一人の少女だけの英雄は、この国の英雄に変わる。
SNSでは、トレンド一位に湧き上がり、記者たちは少年の情報を少しでも集める。
その映像は、日本、いや世界中で話題となるがそれはすこし先の話。
ここで映像は終了した。少年は、勝った。あの存在に。
その事実だけを残して。
まだ夢から覚めないような記者たちを起こすように、八雲が口を開く。
「彼は、御剣剣也
正真正銘の高校一年生です。」
記者たちは、我を取り戻し八雲の話を聞く。
「魔獣の誕生と同時に世界にある異変が起きました。
それが彼のような特別な存在の誕生です。
彼はその中でもさらにスペシャルですが、その説明は後程。
この映像を見られた方は、もうお分かりでしょう。
現状あの魔獣達に対抗できるのは、彼らしかいません。
人類の兵器が効果が見られない今、対抗できるのは彼らのみ。
特別な力を与えられた、もしくは勝ち取った神に選ばれた人類の希望
世界では彼らをGod childrenとも呼びます。
日本語で、神の子と。
そしてその、神の子達は、今私が把握しているだけでも日本に150人以上います。
彼らは、特別な力を与えられたとはいえ、今までは普通に生活していた学生たちです。」
八雲は机を強くたたき、訴えるように大きな声で話す。
「しかし!
この世界の異変に対抗するためには、彼らの助力なくしては不可能なのです!
なので私は作ります。学園を!
彼らを教育し、彼ら自身で助け合い、高め合うための機関の設立を!
ここに私は
日本が揺れる。
対抗手段がないと思われていた魔獣たちへ立ち向かう少年たちの教育機関
希望の学園の設立に。
大臣の発言は、いきなり聞いていたら誰も賛同できない話だっただろう。
高校生を戦わせるなんて、世論が許さない。
しかし今では、あの映像を見た後では、必要ないなど言える人はいなかった。
いつ現れるかわからない魔獣に対抗する手段が、彼らしかいないのならば
彼らの成長の場所は必要だろう。
世論を味方につけたその学園の設立は、異例の速さで可決された。
******************************
翌年 20XX年 春
神の子学園は、世論の祝福と共に開校した。
入学者は254名
日本中のナンバーズが集まったその学園の門に
御剣剣也は立っていた。
桜舞う季節に、役目を終えた花たちが最後の仕事と言わんばかりに
少年の周りに舞う。それは、まるで彼を出迎えるように。
少年は一歩を踏み出した。
その一歩の先になにがあるかはわからない。
正しい道かもわからない。
しかし、確かに自分の意志で前に進む。一歩を踏み出す選択をする。
その選択を正しいものにできるかは、少年の在り方次第。
この世界の行く末を案じながらも、この先になにがあるのかを案じながらも
少年は、今はただ新たな時代の幕開けに胸を躍らせるばかりだった。
あとがき
これにて第2章完結です。
第3章も順次アップしていきますが、ここまででよかったと思われたかた★をいただけると励みになります。
ではまた3章の終わり際でお会いしましょう。
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