第35話 兵器
「〝
五十基の【ターレットマン三号】(この時代では資材の規格が合わなかったので再設計したマイナーチェンジ版だ)を一斉起動して配置する。
さらに、それをガードする【盾でまもる君】も並列で五十基、同様に起動して配置しておく。
魔力をごっそりと持っていかれたが、
「ノエル様がすごい」
「そりゃノエルがやる気出すとああなるわよ。“魔法使いに世間話の時間を与えるな”なんて格言があるけど、ノエルの場合は“魔技師に猶予を与えるな”ね」
「ひどい言いようだ……」
ひどく苦くて、後味は吐き気がするほど甘いこの飲み物は、父が調合レシピの特許を持つ強力な薬だ。
残りは三本。それが僕という人的リソースの限界となる。
「【
二つの攻撃的
【
【プロト
「ねぇ、ノエル。宿でもずっと触ってたけど結局この真四角のは何なワケ?」
「『兵器』だよ」
そう、【プロト
広義には武器の範疇ではあるが、これは僕の理念に合わないと考えて途中で開発をやめていた。
あまりにも、傷つけることに特化した
「これの事は、父さんに黙っていてほしい」
「どうして? どんなものなの?」
姉の質問に、少し詰まってから僕は答える。
「この内部には攻撃的な
僕の言葉に唖然とした様子の姉が、僕と【プロト
「魔技師の技術を高めるのが面白かった。何ができるのかと突き詰めるのが面白かった。魔法を使える姉さんを、父さんを見返したかった。……でも、こんなもの作るべきじゃなかった」
だってこれは、人を幸せにしない。
僕の目標は、人を幸せにする
僕のように魔法を使えぬ人が、
これは、そんな人たちを大量虐殺者に変えてしまえる兵器だ。
だから、開発を中止しながらもずっと自戒として持ち歩いてた。
「でも、出してきたのね?」
「うん。これが僕たちの後ろにあるものを守る力になるから」
「うん。やっぱりノエルって……」
「──きた……!」
姉の言葉を遮って、僕は【
右目につけたモノクルには【ゴプロ君1号】が捉えた
そろそろ【
「姉さん、チサ! 僕が合図するまで前には出ないで!」
「足止めは?」
「
映像の向こうで大群の先端が崩れる。
草原の土の上、突然つるりと転倒した先頭に
そして、それらは後続に踏み荒らされて瞬く間に肉片に替わっていく。
「〝
やや動きが鈍った先頭集団に狙いをつけて、【
引き金を十回ほど引いたところで、色とりどりの
「ノエル様!」
前に出ようとするチサをそっと制止して、小さく息を吐きだす。
「チサ。今からとてもひどいことをするけど、僕を嫌わないでね──……〝
【プロト
膨大な魔力消費に浮遊感と眩暈が同時に訪れて足をつきそうになるが、食いしばって
この
がぱりと上部を勢いよく解放した【プロト
必中魔法〈
「すごい……!」
遠見もできるチサが、どこか放心した様子で前方を見ている。
同じ光景を僕も見ていた。自身と【ゴプロ君1号】の目によって。
悲鳴と共に焼け落ちる
爆ぜる【
毒煙でのたうつ
阿鼻叫喚の地獄がそこに在った。
それを見ながらも二本目の
気付けがわりにちょうどいい。まだ、戦いは終わっていないのだから。
「崩れた! 行ってッ!」
状況に呆然としていた姉とチサ、そしてアウスがハッとしたように動き出した。
僕も【
大群中央部に放った今の一撃で、
加えて、仕込んだ〈
こちら有利のまま、この“
──……アレさえ、何とかすれば。
そう考える僕の視界には、悠然と歩いてくる
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