第20話 ダイノラプター
「なにこれ、ちょっとかわいいかも!」
「浮遊型自動撮影
「ネーミングセンス、どうにかならないわけ?」
「……僕はいいと思うんだけど……?」
姉のツッコミを多少気にしつつも、僕はモノクルと【ゴプロ君1号】を同期させる。
これは〈
オリジナルの〈
どちらかというと、飛行可能な〈
しかし、こういった状況での地形把握や、踏み込むのが危険な場所へ調査に飛ばすには丁度いい。
「わたくしはどういたしましょうか?」
「まずは僕がざっと地形把握するから、ちょっと待ってて。ごめんね」
本来、こういった仕事は斥候であるチサの仕事である。
彼女の領分を侵すのは些か申し訳ないが、地図がないとなればまずは周辺地形をざっくりと把握して、ポイントを絞った調査をした方がいい。
これは未踏破区域によく踏み込む叔母と母から教わったことである。
穏やかな風が草原を撫でる中、僕は可能な限りの速度で【ゴプロ君1号】を飛ばす。
いまのところ、集落の北側が把握できればいいので、そう時間はかからない。
「……ノエル様。それは何でしょう?」
「ん? これ? 【
本来は使用者が知覚したものを反映する紙状の
「これは、すごい。魔技師に会うのは初めてだが、こんなことができるのか」
【
池や小川の位置、丘、森の外縁などが正確にわかる地図がそこに出来上がっていた。
「……!」
「どうしたの?」
「
【ゴプロ君1号】には、体色がモスグリーンの
「どの方向? 距離は? 数は?」
「二時方向、五百メートルくらい先の小さな水場に五匹。【ゴプロ君1号】には気が付いてない」
この時点で、いくらかの推測はできる。
普通、
こうして草原地帯の水飲み場に姿を現したということ自体が、
加えて、【ゴプロ君1号】に映し出される彼らは、落ち着きがない。
興奮状態とは言えなくとも、周囲をしきりに気にしているし、仲間に対しても威嚇行動じみた鳴き声も上げている。
周囲に獲物や敵がいるわけでもないのに、イラつきすぎだ。
「やっぱい挙動が変だね。どうする? 姉さん」
「今日のところは、様子見にしましょう。変に刺激するよりも情報が欲しいわ」
「わかった。そろそろ地形の把握は終わりそうだけど、少し監視しておくね」
「わたくしが遁甲して近づいてみましょうか?」
チサの申し出に、僕は首を振る。
「いまのところ、まだ僕が追えるから大丈夫。すぐに動けるようにだけ準備をお願い」
「……承りました」
チサが小さく頭を下げる。
あれ……もしかして、しくじったかな?
頼りにしてるって、言ったほうが?
でも、もし気付かれでもしたら相手は五匹だ。
いくら何でも一人じゃ危険すぎる。
何か口に出そうとした瞬間、そいつは映像に映った。
赤褐色のそれは森の方からのっしのっしと歩いてきて、水場の
「出た……!」
僕の言葉に、緊張が走る。
姉が大剣に手をかけ、チサが身を低くする。
アウスも弓を腰から引き抜いた。
「同じ場所に、すごく大きな
「お手柄よ、ノエル。さすがだわ」
褒められるほどのことは何もしていないが、そんな事を訂正している場合ではない。
「こっちに来る様子はないけど……なんだか、変だ」
「変とは?」
アウスの言葉に、僕は頷く。
「群れの統率者……って感じじゃないんです。どちらかというと輪が乱れてるというか、
攻撃こそしないが、
そんな、
「──グゥォォオオッ!」
その遠吠えは僕らの場所にも聞こえてくるくらい大きく、空気を震わせた。
「ノエル、いまのって?」
「
「今度は何?」
「
【ゴプロ君1号】を少し高い位置にして周囲をぐるりと映すと、森の中や草原、川のそばなどから様々な体色の
「……姉さん、村に戻ろう。あいつら、狩りを始める気かもしれない」
「“
「わからないよ! でも、ここにいたら他の
規模的には“
まだ
だが、嫌な予感がする。
人の味を覚えた獣というのは、人を襲うもの。
それは、魔物とて同じなのだ。
【ゴプロ君1号】を監視に残したまま、僕たちは集落への道を急いだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます