夕暮れの河川敷で倒れる君と傷心の僕
出会い
一、
六月のその日は太陽の存在を鬱陶しく感じるほどの晴天。梅雨明け宣言を待つだけの空を見上げる。
右足の膝に張った湿布が捲れて、ジャージに引っ付いて無駄に存在感をアピールしてくる。
ジャージの上から膝を叩いて湿布を無理矢理引っ付けるが、一歩進むと剥がれるので、もうどうでもよくなる。
真っ直ぐ家に帰るのはなんとなく嫌だったので、日頃は通らない川沿いを歩いている。
嫌なこと、悩みがあるときは海に行くと良い、そうお父さんが言っていた。なんでも自分のちっぽけさを実感できて悩みが吹き飛ぶらしい。本当か怪しいけど、やらないうちから否定するのは僕の意義に反する。
でも海は遠いから川を見に来た。
海ほどの広さがなくても、川で十分な程度の悩みなので問題はない。
川沿いにある堤防を下りて、川に近づこうとしたとき河川敷に先客がいることに気がつく。
自分と同じ年齢くらいだろうか? だとすれば十六歳程度のジャージ姿の女の子が自転車のハンドルをギュッと握り、大きく深呼吸をしているのか、肩が上下にゆっくり動くのが離れていても分かる。
意を決したのだろうか、自転車を押し徐々に加速すると、不器用にジャンプしサドルに飛び乗るが、自転車はすぐに進むことを止め、女の子と一緒にバタンと大きな音を立て横に倒れてしまう。
「あっ!」
思わず出てしまった僕の声は、不格好に倒れた女の子に気付かれるのに十分な声量だった。
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