ウサギさんは騙せない

優しすぎて嘘がつけないウサギ

ご飯の量も、

普通より欲しくても「普通で」と言う

大変なことも

「大丈夫ですよ」と言ってしまう

そんなウサギ


裏表がないからウサギはいいように扱われて

困っても笑うし、つらくても笑うし

みんなから馬鹿にされてた


正道すぎるウサギ

綺麗なものをいじめたくなる動物は

彼を見ると、どつくのだ

「いいこちゃん」て

暴力なのにウサギは、ちょっとヘラヘラして

少しイラついた


「もっとワガママ言っていいんだよ」

「……僕が一番ワルいからいいんだ」

「どういうこと?」


ウサギは黙ってしまって

僕は何もわからなかった


次の日

どついた子が壇上に立たされ

「暴力をはたらいた悪い動物」と晒された

悪いことをすると怒られる

ウサギを信頼する動物は、彼に罵倒を浴びせた

気づいたら罵倒を浴びせる動物の方が多かった

「悪い動物」に従っていたやつらも責め立てて


僕は「ああ」と嘆息した

ちょっとした戯れ、いや暴力だけど

ほんのちょっぴりウサギに悪いことをしたら

どんなにウサギが「悪くない」と言っても

みんな「悪い動物」にされちゃうんだ


ウサギは俯いていた

周りには慰める動物が群がっていた

僕は悪いと思わないけど

ウサギにとっては、これが一番辛いんだ

しっかりしろ、なんて言えない

「そういう」のがウサギだから


ウサギの味方は誰も居ない

だから「一番ワルい」とウサギは言う

今度は「さみしい?」と聞いてみたい

だって、ウサギは誰も騙せない

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