上にて鳴らす

灰色重なる世界から一筋見えるのは何か。

竜だ。世界よ我ここにあり、雷鳴一喝と咆哮をあげては灰の世界へ突っ込んでいく。

恐ろしい、それでいて美しい。


どんなに遠くにいる人も、

恐ろしい竜を見れば家に逃げ帰る。

家屋に入って覗き見る女子供も、

一声鳴けばたちまち身を竦める。

竜とは畏怖の象徴なのか。


いやいや、

竜は雨を呼ぶのだ。

雨を降らすこの神を、

どうして畏怖の象徴と例えられようか。


崇められしこの竜が、

雨を生み出す訳では無いが。

竜は雨を呼ぶのだと、人は言う。


ぽつりぽつりと振り出す雨を、

あの荒々しい竜が降らすのかよと。

雨がなくたって竜は鳴くさと、

僕は現実が見えてるように呟いた。


雨は竜を呼ぶのだと人は言う。

竜は雨を呼ぶのだと人は言う。

呼んでいないと僕は言う。


偶然が重なっただけなんだよ。

竜は雨を呼べないし雨も竜を呼べないよ。

たまたま、たまたま、

それでも結びつけるんだ。

恐ろしい竜が何もしないわけ無いだろうと、

勝手に想像してしまうのだろうさ。


祭り上げられた神は鳴らす。

迸るそのエネルギーをチラつかせながら、

俺には力があるのだと。

私達はそれを信じる、結び付ける。

だから私は、

竜になりたいと思うのだ。

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