第22話


 でも、ほら。

 築山は過去にたくさんの人を殺しているわけだし。

 しかも自分が実行犯だとバレないような形で。


 能力を悪用したらダメなわけでしょ?

 お前も怒ってたじゃん。

 能力者保護法的にもたぶんNGな事案?


 殺されても仕方ないというか。

 遅かれ早かれこうなっていたような気はするんだよな。

 因果応報っていうの?


「たとえどんな悪人であろうとその人を殺してもいい理由にはならない」


 ぼくはそう思うのね。

 それはどういう理屈で?


「罪を命で償わせるのは間違っていると言いたい。復讐の正当化では?」


 あー、そういうことね。

 お前がずっと言い続けている“命を無駄にするな”的なやつ?


 だって、あのときに同じ飛行機に乗っていた人たちが全員死んでもいい人間だったわけがないじゃん。

 キャサリンの彼女さんとか、何か悪いことをした人ではないでしょ?

 そういう人たちを勝手に、自分の都合で殺してしまった築山は明らかに悪い。


 そりゃあちゃんとした場に出てきて、その罪を白日の下に晒すのが一番だろうけど。

 オチとして殺されるのは変わらない。

 それが被害者の彼氏なのか、あるいは国なのかの違いだけだ。


「……それでもぼくは、彼女の行動や態度で反省の意を示してほしかった」


 反省するならとっくのとうに自首してるでしょ。

 作倉さんがなんでオーサカ支部の支部長に選んだのかまでは……うーん、ちょっとあの人の考えはわからん。


 とにかく、おれがお前に話しお前があの場で言うまで真実は隠し通されていたんだぞ。

 あの場で言って、なんでか知らんけどキャサリンの耳に入って、キャサリンが作倉さんに確認しにいって、結果としてこうなったわけじゃん?

 お前は何がそんなに気に食わないの?

 自分の所属している“組織”の内部で殺人が発生したから?


 どっちみちオーサカ支部はこれで解散だろうな。

 アカシックレコードでも、まあ、結局は解散になるし。

 早まっただけって感じ。


「復讐が正しい選択とは思えない。だが、失われた命は取り返しのつかないものだ。殺された人々は二度と帰ってこない。ただ、ぼくには“死んでもいい”命があるとは、どれほど考えても、理解も納得もできない……」


 ならこう考えてみてよ。

 殺人鬼の命とその殺人鬼に殺された無罪の命とで天秤にかけたとき、殺人鬼のほうが重要で重たいの?

 それは違うじゃん。


 お前としてはさ、命は平等で、同じ重さを持っていると思いたいんでしょ?

 それならなんでその重みを軽視しちゃうわけ?

 どう考えても違う。


 キャサリンのことは責められない。

 凶行に走ってしまった理由もわかる。

 殺人は、時と場合により正当化されるんだよ。


「きみのせいでもあるのでは」


 え?

 まあ、そうね。


 おれがこの世界に介入して、アカシックレコードから得た情報を伝えなかったとしたら。

 アカシックレコードの通りに時間は進んでいただろう。


「ワンポイント、確認しておきたい」


 えーっと、何?

 おれに答えられる範囲でどうぞ?


「アカシックレコードをきみは“正しい歴史”のブックと呼んでいた。現在進行形でこの世界に起こっている事象は“正しい歴史”から逸脱しているのでは」


 うん。

 ここまでにもおれが読んだアカシックレコードでは起きていないイベントがあったわけだし?


 でもさ。

 考えてもみろよ。

 おれたちは“正しい歴史”では殺されてしまう作倉さんを助けたり“組織”の崩壊を防いだりしないといけないわけじゃん?

 要は“正しい歴史”を「それは違うよ」って修正していかないといけない。

 真の“正しい歴史”を築いていかないといけないってことね。










「それは困ります。非常に困ります」



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