27 ???の回想
どんなに夢を見ても、どんなに希望を見出そうと探しても、其処には暗い影と絶望があった。
幾度となく、繰り返し頭を叩きつけるのは後悔と言う二文字。
大人に成って、歳を取る迄が大事な時期なのだ。其の時代を無下にした付けは大きい。
夢見がちな少年なんてのもまやかしで、其の実は、只の負けず嫌いの子供。
バカな子供だ。
這い上がれるか何て分からない。
只単純に取返しが付かない事も或るという事だ。
若ければ大抵の事は如何にか成るし、又次があるやと先延ばしに出来た。歳を取るほどに先延ばしのきかない世界が待っていた。
新鮮な空気なんてのも、何処か冷たく、色の無い。けれど確かに人の匂いを消し切れない会社も働き口も、どんなに真面目な人間でさえ、人と言う生き物で或る事実から逃れられないのだ。
「人間くさい。」
思わず、吐き気がした。
どんなに偉い人も、偉そうな上司も、可愛い部下も人間だ。
そして、違う嘘の匂いに包まれている。
軽薄な雰囲気の漂うなかで、無機質に業務をこなす、其処には、完璧を目指しながら完璧には成れない、人間が居た。
「優しい人なんてのは、都合のいい言葉だ。」
親切なんて言葉も都合のいい言葉だ。
全て、は偽りの行動。行為。本物何て血の繋がりくらいのものだ。
「最終的には家族にさえなろうとする。」
人間か。
どんな場所でさえ、人は特別を求める。
血の契約を求める。
「ありがたそうに、其れも、謝りながら、恩さえ感じて感謝している。」
人間か。
不思議な生き物だ。
争いを避ける。
衝突を避ける。
偽りだと知りながら、根本が解決していないと分かりながら、背中が寒いくらいに完璧ではないと分かっていながら、日々を過ごしている。
不安を恐怖を補うように、憑りつかれた様に、夢中に成って、自我を保とうとする。
「震える事さえ忘れて、現実逃避の世界を現実に変えようとする。」
正気が保てないのだ。狂っているのだ。
「だって、そうだろ。」
信念だとかで、己を自己洗脳しなければ、其の精神は弱って、朽ち果てて死んで終うのだ。
嘘で創られていたとして、其の嘘が酷く綺麗で、面白くて魅力的であったとすれば、人は、嘘によって変えられる事も出来るのだ。
如何したって、真の栄光は掴めない。
そんな観念に囚われる。
終わりが来るとすれば死ぬ時なのか。
既に終わっているのか。
繰り返しているのか。
「終わり方ってのが大事なのさ。」
次のステージに行くのには、必ず終わる必要がある。
終わりを楽しみ、味わい、慈しむ。
きっと、死んだ処で何も変わらない。
「今を全力で生きられない人間は、生まれ変わった処で何にもなれないさ。また繰り返すだけだ。」
捨てられない。
捨てられないのは、過去だ。
大切な過去は捨てられない。
「思う事がある。」
仮に全てを捨てて、違う事を始めればどうなるのだろうかと、結果はかわらないのだろう。
きっと、上手くは行かない。
不完全を抱えて、憎しむのだ。
「やりなをしが効けばどんなにいいだろうかとは思う。なんども無制限に挑戦出来ればと思う。」
諦めだけは悪い私には、努力でどうにかなることは、好きだった。
けれど、時間という壁があった。
「時間が無くなれば、努力も出来なく成る。」
この世だ。
時間の制約。
引き換えに得られるものもあるはずだ。
世界は時間と引き換えに全てを得て居る。
失う代わりに得られるのだ。
全てなのかも知れない。
時間が無ければ、何も得られないのだ。
「本当にそうか・・・。」
分からない。実際は、違うのかも知れない。
もっと、違う見落としているこの世界の制約が存在しているのかもしれない。
色々な物を失った私にはもう分かりたくもない。
「何時かはこういう日が来ることは分かっていた。」
大事な人が死んだり、友達が結婚したり、其の友達が友達で無くなったり、妹や、弟、姉や兄が結婚したり、両親が死んだり、離婚したり・・・。
「事故が起きたり、災害に巻き込まれたり。」
全ては、初めから決まっていたのだろうか。
生きる事に何の意味があったのだろう。
はじめから決まっているとしても、経験する必要があったのだろうか。
「僕がどういう死に方をするのかも、決まっているのだろうか。」
自分の意志は、本当に自分の意志なのだろうか。
決まっていたのではないのだろうか。
そういう風に考える事も、そういった行動をとる事も。
最終的にする事も、死ぬ時も。
「バグでも、起きない限りは運命は変えられないのかも知れない。」
バグ。
世界の欠陥。
世界が完璧でないとすれば、運命にも欠陥があるはずだ。
しかし、其れ等はきっと是正されるのだろう。
元の姿に、歪んだ世界は、簡単に時間をかけてあるべき姿に是正される、きっと其れは、まるで生き物が怪我を回復する時の様に。
予め決まっていた設計図に戻っていく。まるで巻き戻しをしているように。
やはり、情報は時間の制約を受けないエントロピーなのだろう。
受け継がれていく、奇跡なのだ。
永久なんて言葉は、嘘だろう。
情報でさえ、一杯に成ると、消去する必要が出てくるのだから。
「無限なんてのが存在しない限り、永遠なんてのも存在しない。其れは架空の、数学の世界のはなしだ。」
想像できるものは実在するのだろうか。
考えて居る事は、実際に何処かで起こっている事なのだろうか。
私たちは、何処かの世界の神なのだろうか。
全ては夢なのか。
明日死ぬ。
そう分かっていれば、如何するだろうか。
如何するのだろう。
死ぬと分かれば、人が変わるだろうか。
危険を感じれば、必死になるだろうか。
時代の流れの中で、なつかしさを覚える。
戻ってこない子供時代を懐かしむ。
大事な青春の時代を思い出す。
大人に成れば、何処か新鮮さが無くなった。
フレッシュな心は、消えて無くなったのか。
何処かに、置いて来たのかも知れない。
心からの叫びを。
煌めく世界のありようを。
光の反射する美しい世界を。
光を通さない、薄暗い世界で、真実の心を片隅に隠して、別の夢を見て居る。其れが大人だと思い込んで。
「思いっきり笑えなくなったのは・・・。」
何時の頃からだろうか。
笑わなくなったのは。
泣かなくなったのは。
喜ばなくなったのは。
「世界に見切りをつけたのは、何時の頃だっただろう。其れならばいっそ違う世界を創って其処で暮らそうと思ったのは・・・。何時頃からだろう。無いものを在るものに変えて、世界を彩ろうとしたのは何時からだろう。」
ないならば作ればいい。
世界が私を否定するのならば、私は別の世界を創り出す。オリジナルの世界を創り出す。
「おかしな話だ。世界自体が変わってしまうなんて事は。」
それほどまでに、光で照らしたかったのだろう。
純粋な喜びを、楽しさを悲しさを怒りを世界に表したかったのだろう。
「世界が私だって思いたかったのだ。」
あるはずのない話だ。けれど、私の世界にしたかった。
其れだけの願い事。
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