22 バルマのカローナは試験にて、目覚める。

計算能力けいさんのうりょくの限界。


 五次方程式ごじほうていしきの解。特殊な楕円関数だえんかんすう


 「分かるか、バルマ、数学者たちの叫びが。」


 トーラス、繋がる空間。トポロジー。多次元。


 「分かるか、バルマ。この世界の空間が、図形が其の真実が。」


 全ては、密度と言う確率かくりつなのだ。


 バルマの思考は過熱した。頭から蒸気が出て、身体中が熱く、焼けて死んでいた。


 

 

 菓子太郎は、機械を作る優しい、技術師に遭った。其の技術師は、丁寧ていねいに鉄を打っていた。


 「物質は生きてる。ちょっとした温度の調整、打ち方が違うだけで、創ったものの

強度も、出来も変わっちまう。」


 感覚の世界なんだ。其れは経験と感覚の世界。職人の世界。


 分かるんだ、隣の部屋で創っている合金が呼んでる、あと十秒で出来上がるってな。


 そして、突然の様に閃くんだ。新たな発明品を、まるで其れは、電の様に。分かるか。此れが。御前には。


 「永久機関なんて作るのは不可能さ。だが、極限まで其のエネルギー効率を上げる事は出来るんじゃねーのかな。」


 気づくとまた、何か作ってる。改良に改良を重ねて、此処まで来た。御前の親父さんもな。


 此の力、御前になら託せそうだ。


 やるよ。


 「クレフー。灰色の魔術師の資格を。」

 

 

画レ虚は、空を見上げていた。


この世界は狂ってる。


デジャブ。


ルサンチマン。


唯物。


唯心。


認識。


七つの大罪。


十戒。


空。


唯一神。


汎神。


死への存在。


ぱぷていのコン、


輪廻転生、


永劫回帰、


アルケー、


自然科学、


奇跡、


偶然、


運命、


予定調和、


合理、


経験、


大儀、


罪、


罰、


善悪、


心理、


愛、


嘘、


本当、


情、


音楽、


数、


自然、


人工、


生物、


非生物、


意識、


神経、


ギャップ、


確率、


絵画、


文・・・。


 一日は二十四時間、一年は三百六十五日は八千七百六十五時間、それがあと何年続くかのか・・・。


余りにも短い命だ。


ずっと、思考していた。


目の玉をくるくる回転させて考えて居た。


どうせ死ぬのならば、最後まであがいて、死にたい。


できることならば、全てを知りたい。


知り尽くして、そして、救いたい。


未来の私を、そして、生き長らえたい。



「今の私に言える事は、其れだけだ。沢山経験して、考えて、其れを一生の財産にして、如何か、死ぬべき未来を変えてくれ。」


 思考の中で、私の哲学は、此の世の理を覆す程の知識と、其の知恵を求めていた。死ぬ其の瞬間まで、私は、知恵を絞っていた。


 如何すれば助かるか。


 只、其れは、無様な人間の、不完全な人間の、この世の理不尽に対する抵抗だった。


 栄える事もあれば、孰れは滅びゆく。


 生れ、年老い、そして死にゆく定め。


「其れでも、足掻き続ける。可能性を見出して。」


 不可能な技術を可能にする術を探して。


 空想の世界の中でも。


 現実の文明の中でも。


永遠なんて無いと分かっていても、其れを追い求める。


馬鹿みたいな生き方だ。


「合格だよ。」


「君は、何度も自殺を試みた。生きる事に絶望していた。此の世界に絶望していた。けれど、創造を決して辞めなかった。寝食を忘れてでも、世界に自分を残し続けた。身を粉にしてね。君こそ、白の魔術師にふさわしい。そして、生命を司る紫の魔術師の適正も或る。此れは、未だこの世にない、魔導だ。此れをどう使うかは、キミシダイだよ。僕は、大精霊、ミルカ。以後お見知りおきを。では!!!。」


そうして、画レ虚は、目を醒ました。



起きると其処には、菓子太郎とが居たが、カローナとバルマは、死んでいた。


「一体此れは・・・。」


「試練に耐えられなかったものは、死ぬ。そして、再度生き返る場合も或る。」


 寅次郎は言った。


「諦めなければ蘇り。また挑む、其の中で、見つけるしかない、自分の望みの核となるものを。」


ドクン!。ドクン!。


「始まったか。再起動だ。」


カローナとバルマは再び本に吸い込まれ消え


そうして三日の時が過ぎた。カローナは目を醒ました。


「待たせて悪かった。分かったよ、温度の意味が。」


 温度の意味。其れは、燃え尽きない心の熱さ。


冷静に対処する心の冷たさを完全にコントロールする事。


温度魔法の神髄。黒の焔と白い氷の力存分に使わせてもらうぞ。


カローナはライトグリーンの魔術師の称号を得た。


それから二週間が過ぎた頃、バルマが目を醒ました。


「俺は・・・。」


一体、誰なんだ。俺は・・・。


分からない。無の世界で、ずっと問題を解いていた。


無の世界から答えがやって来た・・・。


あの感覚は一体・・・。


ネイビーの魔術師の力なのか。空っぽの心だ。そして、力の抜けた無駄のない思考。

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