第25話 釘バット
イアーグの街にある武器防具屋の一つ。レベッカの装備屋。
俺はここに、オシャレをしたリリアと一緒にやってきた。
「ここですか？」
「うん。よいしょっと——」
「ごめんなさい……剣と鎧を持って貰って」
俺はリリアが身に付けていた剣と鎧を袋に入れて担いでいた。
リリアは自分が持つと言ったのだけど、今着ている可愛らしい服に合わないので俺が持つことにしたのだ。
っていうか重いなこれ。
リリアは軽々と身に付けていたし、剣を振り回していたのに。
さすが人間の上位種エルフって感じ？
武器防具屋に着いて、大きく口を開いた入り口から入ろうとしたとき、店内から出てきた人と肩がぶつかる。
俺は袋を抱えたまま倒れそうになった。
「あっ……申し訳ありません。私のせいで——
大丈夫ですか？」
「あ、はい」
「では、失礼します」
ちょこんと挨拶をして去って行く少女。
焦る俺と違い、まったく動じない——感情の乏しい少女だった。
一瞬触れたことで、俺のスキルが反応し勝手に診断を始めていた。
《名前：エリシス・ブラント
職種スキル：
神官：
神官：
神官：
神官：殴打 LV 51
神官：
神官は聖女の下級職と言われている。
勇者パーティには聖女職がいた。
世界で数人という大変珍しい存在だ。
でも、レベルはこのエリシスって子の方が高いな。
聖女は誰でもなれるわけではなく一定の資質が必要。
神官職もそうだが、神に祈りを捧げる関係上、信仰心が重要らしい。
立ち去っていく少女を俺とリリアが見つめる。
少女の所作はとても綺麗で、貴族なのかもしれないとも思った。
清楚で可憐。
神官着をまとう姿はそんな言葉がぴったりだ。
——ただ、一箇所を除いて。
「フィーグさん、先ほどの女性、変わった武器を持っていましたね？」
「ああ……あれは木製の棍棒に釘を打ち付け、攻撃力を増した『釘バット』だ」
「釘バット？」
「うん。釘バット」
アレで殴られたら痛そうだな。
神官は血が出るという理由で刃物を武器に使わないと聞いている。
この前戦ったスキンヘッド神官も
そこにきて、釘バットである。
木製の棍棒にたくさんの釘が打ち付けてある武器だ。
サボテンをもっと凶悪にしたような見た目だが……。
あんな武器で殴られたら、大量に血が出るんじゃないか？
それって神官職や聖女が使う武器なのだろうか？
「フレッドさんが言っていた件ですが……さっきの人どうですか？」
フレッドさんは冒険者パーティなら、回復役が必要だと言っていた。
確かに勇者パーティにも聖女がいたわけで、回復役がいれば心強い。
「う……そうだな……。追いかけるにしてももう姿が見えないから、また会ったら声をかけてみようか」
「はい！」
どうしてあんな武器を使っている理由が知りたい。
女性だから木製武器を好むとしても、殺意溢れ、威嚇するような武器じゃなくていいはずだ。
戦闘になるといきなりヒャッハー♡とか言ったりしないよな？
……いや、あんなにお淑やかな神官だ。それはないとは思うけど。
たぶん、彼女とはまたすぐにでも出会うような気がした。
☆☆☆☆☆☆
「こんにちは。久しぶり、レベッカ」
「わあ……フィーグっ。ほんと久しぶりね！」
訪れた武器屋で店番をしていた女の子が俺に抱きついてくる。
彼女は幼馴染みのレベッカだ。
元気ではあるのだが……どこか無理しているように見える。
「お、おう……依頼を受けたんだが……どうかしたのか？」
「うん……来てくれてありがとう」
そう言って、レベッカは目を伏せた。
じわりと涙が浮かんでいる。
「お、おい……大丈夫か？」
依頼にもあったけど武器・防具職人のおじいさんのことで、かなり悩んでいるようだ。
————————————————
＊作者からのお願い＊
カクヨムコンに参加しています。
★で称えていただいたり、フォローいただけると嬉しいです。
女装したらヤバいことになった……「よしっ💕ぎゅっとしていいですか？♥」
https://kakuyomu.jp/works/16816700429237953848
↑カクヨムコン参加作品のラブコメです！
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます