049:嫉妬

クラスメイトが出てくるので胸糞かもです。。



☆★☆★☆★☆★



 Sランクになってから初めての登校日になった。

 正直どんな反応になるのかドキドキしてる自分がいる。

 だって今まで無能だと思ってたクラスメイトが、突然Sランクのハンターになったんだよ?

 ついに俺のことを認めざるを得なくなったでしょ?

 っていうか、別に認められなくても良いんだけど、それでも無能呼ばわりされるのだけは辞めてほしいっていうのが本音だ。


 ガラリ


 教室に入って自分の席に着席すると、周りのクラスメイトが俺を見ながらコソコソと何かを話しているようだった。

 俺がSランクになったことを噂してるのかな?


 どれどれ、どんなことを話しているのかな?

 興味ないふりをして耳を傾けてみる。



「ねぇ、あの人仲間にパラサイトしてSランクになったんでしょ?」


「あぁ、そう言われてるよね」


「テレビでもペテンじゃないかって言われてたよ」


「あいつマジで恥晒しだよな。良く学校に来れるよな」



 こ、こいつらぁ!!!

 確かに凛音が掲示板で、俺のことをパラサイト呼ばわりしてる奴がいるって言ってたけど、まさかクラスメイトまで俺のことをパラサイト呼ばわりするとは……。

 過去にレベル1をずっと更新して、優吾たちのパーティをクビになったという事実が、ここまでの信用を貶めることになるなんてな。


 早いところドローン配信して、こいつら全員に目にもの見せてくれるわ!!!!

 俺がパラサイトじゃないと知って驚くが良いわ!!!




 ―




 昼休みとなり凛音と一緒にいつもの屋上へ行こうとすると、秋篠雄馬と北条陽春、そしてその取り巻き共が俺の席までやってきた。

 どうやらその中に美湖と真田さんはいないみたいだった。


 今クラスで俺が何て呼ばれているか知っている凛音は、彼らから守るように俺の前に立ってくれた

 しかし、そんな凛音に「大丈夫だから」と伝えて後ろに下がってもらう。

 凛音は少し心配そうな表情を浮かべるも、大人しく俺の後ろに行ってくれた。



「神楽くんって、クランのメンバーに寄生してSランクになったんでしょ? 優吾くんたちみたいに真面目にハンターやってる人たちに申し訳ないって思わないのかな?」



 こいつは秋篠たちの取り巻きの一人のモブAこと山崎卓郎だ。

 ちなみに、1年のときに俺に「無能」って言われてることをわざわざ教えてくれたやつである。



「山崎。そんな言い方は良くないだろ」


「何でだよ? こういう誰かに寄生するパラサイトに優しくする必要ないじゃん」



 って、このモブAはなんでこんなにも俺のことを敵視してるんだ?

 俺が疑問に思っていると後ろから凛音が「山崎くんは、いつも神楽くんにテストで負けてるんだよ。自分は勉強しかしてないのに、ハンターやってる詩庵くんに負けてるのが悔しいんだと思うの。まぁ、他にも色々と嫉妬してるのかな」と小声で説明をしてくれた。

 まぁ、どうやら山崎にも聞こえてたようで、「か、勝手なこと言いやがって……」と肩をプルプルと震わせながら呟いたが、秋篠が「ちょっと、山崎くん黙っててくれ」と言われると、体をビクリと震わせてそのまま沈黙した。



「まぁ、山崎の言う通りだと俺も思うよ。一緒にダンジョンに潜った優吾くんたちにも話を聞いてきたけど、最後まで神楽くんたちのクランって戦ってなかったんでしょ? しかも、その場には君たちしかいなかったらしいしさ、ペテンで勝ったって思われても仕方ないと思うんだよね」


「優吾もペテンだと思ってるってことか?」


「彼はパラサイトとも言ってたね。どちらにせよ、今までのこともあるし神楽くんのことは誰も信用してないんだよ。それは俺たちだけじゃなくて、ハンターギルドの掲示板を見ても明らかだし、ニュースでも君たちの疑惑で持ちきりだよ」


「それで、お前は一体何を言いたいんだ? 俺にそんなことを伝えてどうしたいんだよ?」


「神楽くんが本当にペテン師ならさ、Sランクを辞退して欲しいんだよ。山崎くんも言ってたけど、他のハンターたちに申し訳ないって思わないのかい?」



 秋篠は俺のことを見下しながら、当然だろと言わんばかりの口調で言ってきた。

 その言葉を受けて、周りの取り巻き共も「そうだ!」「ペテン師は恥を知れ!」と言葉で俺に攻撃をしてくる。

 俺はそんな奴らを一度見渡すと、大袈裟にため息を吐いて口を開いた。



「Sランクは辞退しない。俺たちは恥じるような真似は一切していないからな」


「おまえは……」



 秋篠が口を開こうとしたのを、俺は「まぁ、最後まで話を聞けよ」と遮った。



「要するに、俺にSランクの実力があれば問題ないんだろ? 俺たちが世間から何て言われてるかも知ってたよ。そのバッシングを黙らせるために、次に潜るときはダンジョンプレイで配信する予定なんだわ」


「大したことないダンジョンに潜ったって意味はないと思うけど?」


「嚥獄だよ」


「え?」


「だから、嚥獄に潜るって言ったんだよ」


「はは、君が嚥獄に潜るって? 面白いね。分かった。その配信を見させてもらうことにするよ。せいぜい死なない程度に頑張ってくれよ」



 秋篠が笑いながらその場を去ると、取り巻きたちも「あいつ死んだなぁ」と笑いながら後をついて行く。

 そして、最後まで残っていた北条が俺の肩を叩いて「マジで死なないようにね」と言葉をかけてくる。

 しかし、それは決して心配している訳ではなく、完全に楽しんでいる人間の声色だった。




 ―




「はぁ……」


「どうしましたか、詩庵様?」



 屋上で黒衣が作ってくれたお弁当を食べながら、ついつい深いため息を吐いてしまうと、黒衣が心配そうな顔で俺のことを見つめてくる。



「いや、クラスの奴らってなんで俺にあんなに突っ掛かってくるんだろうって思ってさ」


「多分今回のは嫉妬だよ」


「嫉妬? Sランクになった俺に嫉妬してるのか?」


「う〜ん。それもそうなんだけど、Sランクのクランって就職先としてかなり人気があること知ってるよね?」



 凛音が言う通り、Sランクのクランに所属するのは、一流企業に就職するよりも難しいと言われているくらいハードルが高いと言われている。

 しかも、たとえバックアップ要因としてSランククランに入ったとしても、そのクランに所属しているというだけで個人の価値が高まってヘッドハンティングの雨霰状態になるという噂だった。

 そのため学校でも2年から、ダンジョンに潜る課外授業なども行っている。そのため今は全員がハンター登録をしている状態なのだ。



「Sランクのクランって、ただ頭が良いだけじゃ入れないじゃない? だから、パラサイトするだけで簡単にSランクになったしぃくんに嫉妬してるんだよ」


「何よそれ!? 詩庵がパラサイトしてるって本気で思ってるのかしらね?」


「あの者たちは詩庵様のことを穿った目でしか見ることが出来ませんからね。一度たりともまともに向き合った方なんていませんから、完全に詩庵様のことを見誤っているのです」


「うん。あと、優吾くんや秋篠くんたちみたいな、カーストトップの人たちもあんな感じだしね」


「けど、こんなに強い詩庵がちゃんと評価されないのはやっぱり悔しいよ」


「私も瀬那さんと同意見です。あの者たちは本当に許し難いです」



 黒衣は元々俺のことを見てくれていたので、最初からクラスメイトへの怒りは持っていたが、瀬那に関しては怒りを通り越して悔しいという感情になっているらしい。

 その根底にはグツグツと煮えたぎるような怒りがあるのを俺は知っている。



「あぁ、だからこその嚥獄だよ。俺だって言われたままは嫌だしな。だからと言って口喧嘩したい訳じゃないし。だとしたら、やっぱり誰も成し得たことのない嚥獄の30階層を突破して、結果であいつらを殴るのが一番効果的だよな」


「うん。私もそう思うよ! 私は戦えないのが悔しいけど、バックアップは任せておいてよ!」


「あぁ、いつもありがとうな!」


「凛音ちゃんのドローンがなかったら、結果で殴る作戦も出来なかったし。直接戦わなくても凛音ちゃんは本当に無くてはならない存在よね」


「はい。いつも凛音さんには助けてられてばかりです」


「ちょ! みんなちょっと待って! そんなに褒められると恥ずかしいから!」



 凛音は顔を真っ赤にさせて、手を前に突き出してブンブンと振り回す。

 背が小さな凛音がそういうリアクションを取ると、まるで中学生に見えてしまいちょっと罪悪感に苛まれてしまうのだが、瀬那に関してはその凛音を見たいがために揶揄って……もとい可愛がっている。


 こんな俺たちの平和な日常は、嚥獄に潜った後一変してしまうことを俺たちはまだ知らなかった。




☆★☆★☆★☆★


第四章はこちらで終了です!

次の章では詩庵たちが嚥獄に挑みます!

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