第49話  オリハルコンオーダーズの使者

2012年5月8日


 陽気もすでに寒気を取り除き、上半身があらわとなる

軽装の時期を迎える。

世の中の不可思議な現象を除けばいつもと同じ風景で

初夏の前の風が身を横切ってゆく。

だけど、そんな気候は自身と避けるように

すれ違わせて流れている。

自分は過ちを犯した。

無実の人を30人も切り刻み、過失といえども

心を宿した自身が凶行を許してしまう。

だけど、扇動せんどうを犯した者もいる。

そいつらオリハルコンオーダーズを討伐するために

今を凌ぎ、生きている。

必ず何かが起こると気を持ち続けるも、

機会はおのずと待っているだけでやってくる。



「マナがいた痕跡が見つかった?」

「都笠図書館よ、あの子が持っていたACが

 館外周囲で発見されたの」


 科警研お馴染みの部屋で主任とカロリーナが

報告について話していた。

都笠図書館周囲で生えている木の1本の穴に

マナが所有していたACがあったという。

あたかもこちらに気付いてくれとばかりな形跡で、

戦闘があったのか分からないが少しだけ目立つように

置かれていた。

彼女1人でそこまで行った理由は分からないけど、

行方不明になった理由もそこにある可能性が浮上した。


「あそこにまだ悪魔がいたんだな・・・。

 光一だけじゃなく、マナまでも!」

「ちょっと落ち着きなさいよ!

 悪魔がいたなんて言ってないでしょ?」

「どういう事だ?」

「このACは五色米みたいに経路を知らせるために

 設置するタイプなの。

 自分の身に何かあった時に備えて、

 味方に居場所を見つけてもらう結晶があったのは

 あたし達にそこにいる事を伝えるためでしょ?」

「救難信号みたいなものか。

 という事は、マナはそこいらにいると」

「あの子行きつけだった所で何かを発見したんでしょ。

 だから、わざとあたし達に気付かせるために

 落としていったのよ」

「図書館内に・・・」


現在3つ見つかって最初の木から花壇の中、

館内枠の下に落ちていた。

それぞれの経路からして閉鎖されたはずの場所に向かって

示されたかのように小さく光る。

もしかしたら、もしかしなくてもマナは都笠図書館にいる。

ひょっとしたら、光一の件を追っていたのかもしれない。


「当時の事件については私もよく理解できないわ。

 あんたの同期は本の中に封じられたって」

「直にこの目で見ました・・・。

 ヤギ型の悪魔が出現したのは自分のせいで、

 けじめとして巻き添えに」

「魔術書から悪魔が出るなんて初耳よ。

 光一が持ってた本は発見できなかったんでしょ?」

 AC絡みだと一般警察や自衛隊は応じようと――」

「別にいい・・・俺が行く」


自分は安心決定あんじんけつじょうにそこへ行くと言った。

覚悟というものは身に余る行動を起こしやすい。

しかし、今は解決への道を歩いていきたかった。

あんな事件から、使命感をもち始めてゆく。

何かせずにはいられない。

体にまとわりつく罪悪感を少しでもまとわりつかせない

ように、足を動かしたい。

たとえ危険と分かっていても、そこへ向かう気が

なかなか消えずにいた。


「聖夜!?」

「いいんだ、場所にも覚えがあるし。

 それに、ちょっと個人的に用もある」

「1人だけで?」

「ああ、ちょっと単独で行きたいんだ。

 また強力な悪魔が潜んでいるかもしれない。

 自分がどれだけ成長したかってのも確かめたいし。

 だから、皆は待っててくれ」

「主任?」

「許可するわ、先偵するつもりなら万全に行きなさい」

「あたしは外で待機してるから、早く戻ってきてよ!」

「ああ」


余計な世話をされたくないのも本音であるものの、

自分の犯罪行為を緩和してくれたから、

周りのサポートに感謝しつつ現地へと向かった。



 都笠図書館、ヤギ型悪魔の放火で閉鎖された施設は

火災という名目で表では処理された。

しかし、建造物は崩壊せずに残されていて、

ライトを照らして電気も付いてない状態と分かる。

入口ドアのガラスを剣で鋭利に切り落とし、侵入。

倫理観も考えずにすんなりと館内に入る。

マナが残した複数色の結晶はおそらく中でも

あると思いつつ、目を下に向けて見ると。


(ACが落ちている)


やはり、ついてこいとばかりきらびやかな信号が入る。

むやみに落ちているのではなく、置いてある。

時にはテーブルの底や本棚の隙間に埋めて

道標のようにアピールしていた。

不審に思いつつ続けて探していると、

壁を背に並べられた本棚に突きあたる。

何も無い・・・はずもなく、床の擦り傷を見つけて

動かせそうなのが分かった。


(扉が?)


スライド式な隠し扉のようだ。

こんな所にドアがあるなんて知らなかった。

角度からして地下へ続いている。

着いたドアを開けると高さ20mもあるホールが存在。

壁から天井まで奇妙なレリーフが描かれていて、

奥には2人、知るぞ知る同級生達がいた。


「マナ・・・?」

「聖夜さん!」


しかし、マナだけは同じ位置にはいない。

彼女だけは上部に張り付けにされていた。

この様な状態に仕向けたのは真下にいる者。

消えたはずの同級生の姿で状況はすぐに判明できた。











「久しぶりだね、聖夜君」

「やっぱりお前か」


白峰光一が本を片手に冷ややかな目で見て発言。

自分はここに来る前からこいつが関与しているのを

察知していた。

図書館という時点でもう予想しかけていたが、

マナを誘拐する、しそうな動機も日頃から身近にいた

図書委員長しか考えられなかったのだ。


「マナが帰ってこない理由も、ここが絡んだ事で

 なんとなく気付いた。被害者面をしてちゃっかりと

 人知れず閉鎖したここで生きてたのか?」

「今回だけここを選んだだけだ。

 自宅には戻れない、計画に支障をきたすからね」

「残念だったな、マナをさらったつもりだろうが

 俺達にバレたからもう逃げ場もなくなるぞ!

 お前、一体何なんだ?」

「オリハルコンオーダーズの者といえば良いか。

 結晶の理で新たなる世界を築く者達。

 僕自身も個人的に行動を起こす術として

 根城にするには秘匿性の高い場所が必要でね」

「なんだと!?」


光一は晃京を占拠していた謎の組織、

オリハルコンオーダーズと関わる者だと言った。

疑いを逸らそうとヤギ型をわざと召喚しては封じ、

自身への目を逸らすために本の中で隠れ続けていた。

いや、正確には本の中じゃなくACの中。

常識を超えた法で悪魔と同じように潜んでいた。

まるで捕まらないとばかり自信満々な顔。

常に近くにいた同級生が晃京を支配した者だとは。

真意は分からないが、こんな所で噓をつくのも無理解。

おとしいれた者の1人がようやく姿を現した。


「なるほど・・・やっと会えた。

 お前らのリーダーは誰なんだ!? 言え!」

「そんな重要な情報を教えるとでも?

 僕は今ここにいるのは1つの答えをハッキリするため。

 君と折り合いを付けようと来たんだ」

「俺に用だって?」


自分に用があるのは適性者だから。

縁があるにしろ、人間も結晶の中に入る方法がある。

ならば、破壊不可能な都庁内にリーダーがいるのか。


「対決したくて来たのか?

 自分の設備を壊してまでこんな戦う場所を?

 お前が事件を起こした奴らと・・・なぜだ!?」

「君がいなくても、いずれここは廃棄するつもりだった。

 僕の父は政治家で書記として活躍、

 同時に異国文献の排除に躍起になっていた。

 多文化否定的で言論統制のためにな」

「言論統制?」

「晃京は日本最高の情報管理場所。

 しかし、2000年より資料体制も変わり、

 媒体も改変の道を余儀なくされる。

 古く、不必要なものを徹底排除しようとしていた」

「本からメディアへとかか。

 そこから逃れようとして破壊がてら

 ここにかくまってたんだな。

 個人でやってた黒魔術の邪魔をされないよう、ここに?」

「この本は元々オリハルコンオーダーズの所有物。

 偉大なる賢人の遺産を守ろうとしただけだ。

 それに比べれば、この館の価値など無に等しい」

「まったく大胆な手段を選ぶな、金持ちってのは。

 一軒を焼くまでよっぽど価値があるのか、その本は?」

「査察から逃れるために関係する書物を秘匿ひとくした。

 それがここ、都笠図書館。

 禁書目録を厳重に保管し、あえて迂回して備えていた。

 前にも言ったろう、葉を隠すなら森の中と。

 父の好きな統制コードの中に、

 少しずつ魔術のイデオロギーを埋めてゆくんだ」


ヤギ型の悪魔を召喚したのも、本の中へ入った事も

全ては芝居と隠蔽。

隔離されたエリアの確保のために仕向けていた。


「でも、今の時代で情報管理なんて

 晃京だけでこなせられるのか?

 オリハルコンオーダーズに加担するメリットなんて。

 お前は父に復讐するために?」

「僕はただ、ボスの方のイデオロギーに賛同しただけさ。

 あの人は現代における民の在り様に御冠おかんむりしている。

 分からず屋の父に対する警告も含めて

 ここを攻撃した」

「な・・・家族の施設をわざと」

「しかし、マナ君に気づかれてしまった。

 本に仕込んだACを知ってオリハルコンオーダーズの

 手がかりをつかもうとして」

「逆の裏取りでヘマうってバレた。

 で、誘拐して口封じで殺そうとしたのか!?」

「そんなテロまがいな事をするとでも?

 僕は彼女を迎え入れようとしてるだけさ。

 高い潜在能力をもつ若きAC適合者。

 オリハルコンオーダーズの一員に相応しい」

「ヤギはちゃっかり俺を狙っていたけどな!

 あの時からおかしいと思ってたんだ。

 マナの方には一切火を飛ばしていなかったしな」

「マナ君を手にかけて何のメリットが?

 クラスの委員長、図書副委員長として働いていた。

 いつも僕は彼女を気遣ってあげてたんだ!」

「それで、なんで俺を狙うんだ?」

「僕は代替に過ぎないからさ。

 組織に入ってから知った・・・作戦成就のために。

 実は・・・もう1人必要な存在がいた」

「もう1人?」

「優秀な僕すら凌ぐ素質をもつ者がいるナンテ・・・

 リーダーは君を待っているゥ!」

「・・・・・・俺を?」

「僕は・・・納得できない!

 だから、個人で城を築こうとしただけさ。

 彼らの目的を促し、邪魔の入らない空間を。

 この姫君と共に」


光一は裏声に変わり叫ぶ。

今回の件はオリハルコンオーダーズの指示ではなく、

個人で起こしたらしい。

マナを強引に参加させようと計画した。

確かに今まで自分よりも光一と一緒にいる時間が多い。

ACと立場のよしみで参加するつもりなのかと思うも、

こんな縛り付けて同行している様にも思えず。

彼女は想像通りな返事をした。


「私はそんな気はありません。

 オリハルコンオーダーズは人を侵食する凶行です。

 あなた達の側に加わるつもりもありません」

「それを言うなあアァ!

 今の世界こそ凶行の真っただ中だ!

 民主主義の限界を迎えて、欲と思惑の場と化している!

 僕達は乱れのない配列へ正そうとしたいんだ!

 そのためには君のような優秀な人材が必要なんだ!」

「悪魔を出して正義もへったくれもないだろ。

 お前達の主張はただの独裁だ。

 それにマナは嫌だって言ってるだろ?

 強引な勧誘は嫌われるぞ?」

「時代をみろジダイヲォォ!

 文明の発達の全てはインテリジェンスで始まる!

 頭脳をもつ者こそが優秀な存在なんだァ!」

「・・・・・・」


知識の力で世界をどうにか変えたいようだ。

頭脳と結晶の関連がよく分からないけど、

オリハルコンオーダーズは優秀な人材を求めているようで、

自分も適性者というから、当然いつかは目前に現れる。

今回はカタチを変えて1人と会っただけだ。


「タイミングを図って本の中で隠れてたのか。

 国会議事堂前の術もお前が仕組んだんだろ?」

「気付いたか、僕の能力を国の中枢で示したかったんだ。

 君を逮捕させて世に出さない方法を選んだが、

 警察は頼もしい味方がいるようだね。

 僕の黒魔術、どうだったかな?」

「ああ、まんまとはまった。

 皆の助けがなければ、俺はここにいなかった。

 人をACに変えようとでもしたか?」

「現代人は塊に成りたがっている。

 自らの意思をもたず、何かに乗りかかっては

 周囲との同調圧力を生み出したがっている。

 デモの様にな」

「あの女の政治家も利用していたんだな?」

「そうだ、クレームだけで世の中を動かせると

 思っているんだからな。ただ、便乗しただけだ」

「・・・・・・」

「どの道、こんな民主主義なんて共倒れに終わるだけ。

 それも旧体制に阻止された・・・。

 ここで、君を駆逐して僕が優秀だという事を

 ワカラセテヤルゥ!」


光一が5m跳び上がり、バックステップ。

学力は学園TOPクラスなのは知っていたが、

運動はそう目立ってできる方ではない。

ACの力を借りているだろう身体能力のそれは

人並みなんていう動きではなかった。

オリハルコンオーダーズの一員はどれくらいの実力か。

光一が片手を上げた。


出でよ、墨沼の亡者達よFfamvehvanurur


手の平から5つの頭蓋骨がゆっくりと出現。

ただみついてくるだけなので、

グリーンフローライトで小刻みにかわして

ピエトラで一体ずつ斬り落としてゆく。

光一の肉体を剣で直に付けるのは気が引けるが、

向こうはためらう素振りなく危害を加えにきている。


(これが闇の力か)


唯一の木刀であるミストルティンで戦いたいが、

重たくてまともに振るえず。

手持ちの結晶で今まで扱ってきたように、

あらゆる動きで対抗するだけだ。


刈り取れ、日陰の響骸よdongraphunmalsgraphdon


その瞬間、黒い渦が視界に入る間もなくドクロ顔の

黒いローブをまとった悪魔が出現。

周囲が暗くなりかけるが、レッドスピネルで炎を出して

悪魔の動きを一瞬止める。隙にリビアングラスの瞬発力で

死神型もろとも光一の身体を吹き飛ばした。


「コォオオオォォ!」

「イイィフィィィッ!」


死神型は分散、光一は壁に衝突。

怪しげで強力な魔術を使っているものの、

召喚に頼ってばかりか隙が多く、複数の性質をもつ

ACの適性としてはこちらが有利のようだ。

得体の知れない属性を操ろうとも、実際に制御するのは

あくまでも肉体をもつ人間に変わりない。


「理想をかかげるのは良い事だ。

 だけどな、一方的な主義じゃ分かってもらえないぞ?

 テロリストと一緒だ」

「グッ・・・勉強嫌いな君には分かるまい。

 今の社会には不必要な成分が蓄積している。

 如何に無駄を省くのかが統計学の問題なのだよ」

「それで悪魔をけしかけていたのか。

 特定の奴らばかり狙っては少しずつ削り落として、

 人の命すら測りにかけてたんだな!」

「だからとはいえ、直接的な支配では人は救えない。

 歴史の独裁者達と同様な手では同じ結末を迎えるだけだ。

 結晶にすがり、密からう者こそ救われてゆく。

 すぐには理解できないだろう、僕達の崇高な理念など」

「はあ・・・」

「だから、今の時代にコソ示しをアタエルべきなんだ!

 他の生物にはない人間唯一のインテリジェンスを、

 知識者の恐ろしさをオシエテヤル」


光一は現代社会の在り方に不満を吐露とろ

政治、民主主義の乱れをなげき、

オリハルコンオーダーズのリーダーの理念の下で、

実現を図ろうとする。

知識人振っていたのは前から知っていたが、

いつも黒い本を持ち歩いているのが気になった。

都笠図書館で隠そうとしたのは噓だったのだが、

魔術書で実際に何をしようとするのかまでは不明。

頭脳派なのは分かるが、悪魔に巣喰すくわれては

元も子もない。

理由は何であれ、連中の野望に乗っかるつもりはない。


「ズノウズノウズノオオオォォ、エオ″オ″ォ」


直立二足歩行する黒いトカゲ型に変身した。

5mくらいの二足歩行の状態を保ち、

自身の肉体を悪魔の身に包み込み、再戦するつもりで

立ちはだかる。

光一は正気を失っているのか、

何がなんでも自分を負かそうと悪魔に身をゆだねたのだろう。

当人の体ではないなら、クラーレで弱らせる方法を選ぶ。

過去の出来事もあって殺傷はしたくないから、

神経毒だけでも与えて機動力を奪うしかない。


「ミトメロ、ズノウニヨルシャカイノテンカンヲォ!」


巨体を相手に正面から向かうのは危険。

片腕を振り回して後ろに下がり、

リビアングラスを発動、後ろに回り込む。

剣を振り下ろした瞬間、

床から黒い針が3本突き出る。

回り込むと知っていたようにトラップを仕掛けて

自分の動きが止まった時につかまれた。


「しまった!」


見るからに光一は闇の力を用いている。

単純に考えても、光が効きそうと一考。

だが、ミストルティンは光を放つ気配すらない。


「ダメだ、光らない!」


脱出しようとクラーレで斬り続けるが、

この黒い結晶の塊に毒がとどく様には見えなかった。

ピエトラに切り替えて斬るが、石化する様子がない。

ラーナも、青い気泡が途中で消えてゆき、

ミストルティンの重さで腕が上がらなくなってしまい、

胴体の隙を許してしまう。

トカゲ型の腕が自分の左胸に向かう、そして。


ズブッ


「ゴフォッ!?」


爪が突き刺さった。

衣服もろとも貫通して、大型の膂力りょりょくで容易く

脂肪を破る。


「聖夜さんッ!?」


マナの叫び声が室内に響く。

してやったりと想定内に、トカゲ型の光一は

淡々とした口調で宣言した。


「ニンゲンノドウリョクゲン、テイシスル。

 クロノテキセイハコチラニアリ」


自分の体を床へ放り出す。

結晶の性質がどうであれ、巨大な物理攻撃の前には

たったの一撃で止められてしまう。

呼吸もままならずに痛みも次第に消えかかる。

このまま死を迎えるのかと、無念に満ちた時だ。











リバーストーンから白の膜が広がる。

血液や痛みも止まり、何もなかったかの様な状態へ戻った。


(あれは・・・お父様の?)


マナは白き奇跡の詳細をすぐに察知。

あまりにも度を超えた現象に、光一が叫ぶ。


「ナンナンダ、ナンナンダキミハァ!?」


オリハルコンオーダーズですら肉体の活性制御は

難しく理解できていないのか、驚きおののく。

連中はおろか、自分も理学の覚えのない結晶の奇跡には

納得の範疇はんちゅうに入れてない。


「聖夜さん、私のACを!」

「分かった!」


ゴールデンラブラドライトをミストルティンに接して

握り直すと刃が眩しく輝きを見せた。

仕組みを答える間もなく脚を斬る。


「セイヤァッ!!」


凝縮された中にある何かは自分の手で握った重さが

軽くなってゆくのが分かる。

光の剣は結晶内部に幾度も反射。

闇の格子エネルギーは消耗して黒の表面が

光で押し返されて拡散する。

ボロボロに崩れながらも、トカゲ型のボディの動きが

ゆっくりと求めるようにマナの方へ向かう。


「マナハ・・・ボクヲ、アイシテルンダ・・・ボクヲ」


5mの巨体は粉々に砕け散った。

紫色に反射した黒のACもろとも上下に分かれ、

重力と反重力それぞれに分解する。

光一のボディの姿は見えない。

同級生が言い放った最後の一言は偽りなき本音。

一方的思念による結末はこの様な身の解散に終わる。

自身も悪魔も残ることなく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る