第22話 レーゾンデートル
気がついたら自分はココにいた。
いつ、どこから居たのかなど知る由もない。
この場所がどこかすら理解できずに存在していた。
体の中心、詳しくは分からない箇所に少し硬い何かが
埋め込まれたかの様に感じる。
いや、トンネル。空洞からこの場に来た様にも思える。
始めからここにいたのではなく、水の中にいたつもりが
出口に着いたようで気泡が漂う辺りを見回していた。
直方体の仕切りで、向かいはボヤけて見づらいが
円柱の透明なモノがたくさん置いてある。
自分はきちんと呼吸をすることができる。
何故、それができるのかはよく分からない。
よくよく思えば、自分は物を“観る”ことができる。
この器官は辺りを認識できる器官の1つなのだろう。
体という認識をもつよう植え付けられた。
これはおそらく、この“世界のようなもの”で
確認していくために必要な部分なのであろう。
今、自分の前に何かが横切った。
白い衣のように見えたが、一瞬なので良く分からなかった。
自分の下部に何か違和感が生まれた。
太い棒が2本、それらの間に割れ目もある。
いや、生まれたのは自分の新たな体の一部のようだ。
“細長い棒の体が5つ”ある。それらは手前に向かって
折り曲げることができるようだ。
何故、それができるのかは分からない。
が、自分の体の感覚が1つ1つ増えていくたび、
“生きている”感じがしているようだ。
先ほどから疑問に思っていることがある。
“自分がこの場所から動けない”ことである。
体の一部分は動かせていても、
体全体は移動することができないようだ。
体の一部で手前にある透明な物を叩いてみた。
目に見えないが、何かがあるようだ。
また新たに自分の体に異変が生じた。
自分の一番下の方で“細長い棒の体が2つ”出てきた。
突然このような体が生まれるのがある意味恐ろしいと
一瞬思ったが、すぐに慣れた。
自分のモノだと理解できれば、
恐れる必要はどこにもないからだ。
喜びか恐怖なのか、なぜそういった感情があるのかすら
理解することができない。
ただ、“体がそこにある”だけなのかもしれない。
今の自分に必要なのは“その理由を知りたい”という
感情だけだった。
そのとき、自分の体の内側からあらたな感覚が生まれた。
それは“体ではなく、エネルギーのような何か”だ。
自分は身の内より発生の勢いを頼りに、
先ほどできた全ての体の全てを出し切り、
エネルギーのようななにかと共に
透明な物にありったけ叩いてみた。
キレツが見え、
ガッシャアアアアアアン
「ふわ~あ」
カロリーナは病院の一室で目を覚ます。
借りている個室に太陽光が射して、朝と認識。
たまによく見る夢で何の事か理解できていない。
だけど、気にも留めていない。
考えても答えがでないものは放っておくのがモットー。
それにしても、感覚というものは不思議だ。
目で周囲を見て、耳で音を拾って、鼻で匂いを嗅いで、
足で歩いて、手でつかんで、口で食べて話す。
つまり、世界の情報を知るための器官で、
別に人に限った事でもない。
陸上の気体をかき分けながら“生きる”という、
活動するにあたって必要不可欠な行為なのだ。
「ほっ!」
小さなACを人体模型の目の中に投げ入れる。
いつもスポッとはめるのがこだわりで、
氷の刃を悪魔に必中させる練習・・・のつもりだ。
それが終わると、着替えて朝食。
朝ご飯はブロック形の栄養食と栄養ジェル。
そういえば味覚もあった、でも食べ飽きている。
夜勤明けのリリア先生から任務の知らせがきた。
「おはよう、カロリーナちゃん」
「起きてるわよ、定時連絡はまだ見てなかった。
新情報は何かあった?」
「ACらしき結晶が検出されたわ。
文涼区のビル4階に挟まってるみたい。
ソーダライトの可能性がある、回収お願いね」
「はいはい」
青のACが検出されたようだ。
いくつあるのか、七色から拡散した粒を
ここではかつての組織と違って口うるさく言われないので、
急かさずに支度を始める。
自分の得意分野の色を我先と言いたいところだが、
悪魔の出現もありえる。
ACレベルからして、どうせ大した相手じゃないだろう。
1人でもこなせる仕事だけど、それだけではつまらない。
最近、他の塊と連れていきたい気持ちが増している。
今日も聖夜を引き回して一緒に回収しようと
ロビーから外に出て活動を始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます