結晶の従者2

 某区にある厘香の家に着く。

周囲は綺麗に木が並ぶ林に囲まれた間に

厳重そうな仕切りで組織が存在していた。

まるで人目を避けるような位置に建在。

と思っていたら、野太い声がした。


「お帰りなさいませ、お嬢おおぉォッ!」

「彼が適合者、聖夜君よ」

「オメエがか?」


正倉院は晃京最大級の武家。

表向きは天藍会てんらんかいという名で、

要人警護に関する仕事を請け負っている。

防衛省にも同じ苗字の人がいるせいか、

護衛に大きく影響するだけはある。

おまけに外見がおっかない人ばかりいるから、

厘香は1人娘でちょっとやそっとに彼氏なんて

つくりようがないくらい周囲から一目置かれている。

そんな彼女と一緒にいる自分も自分だが、

成り行き上来なければならないから仕方ない。


「それで、厘香の所は何をしているんだ?」

「AC回収はマナちゃんと同じだけど、

 私の所は別の組織と一緒に取り組んでいるわ。

 主に警察と連携して事態解決に当たっているの」

「け、警察と!?」

「でも、晃京が襲われてからは問題も出てきたの。

 自衛隊と警察の間で1つ相違が起きちゃって」

「守る側どうしでトラブルが?」


民を守るはずの組織が障害をもたらしたと言う。

防衛ライン、他県への出入りの設定にゴタゴタが生じて

実動隊の出だしが鈍ってしまったらしい。

しかし、大人の事情で自分達は関われない。

それはさておき、ここもACと関係するというから

どういった経緯いきさつがあるのか。


「警察は俺達に何を?」

「科学警察研究所がACに着手していて、

 私達の家に伝わるものを研究していたから」

「ガサ入・・・いや、正倉院がもっているACも、

 科警研(略称)がこの家と?」

「私の家はラピスラズリを所有する家なの。

 子どもの時見たの覚えてる?」

「あの水色の石か」


直径5cmの楕円形の玉がお堂で大切に敷かれている。

一般公開もしない伝統の家宝だ。

ラピスラズリは過去に聞いていたので存在は既知きちだが、

ACとしての役割は本邦初。

当然、一家が結束するほどの力が秘めているそうだが、

そこの詳細は何なのかというと、

もう1人話し相手をよこすと言う。


カシラァ、例の求人来ました!」


和服で銀髪ポニーテールの男が来る。

彼は正倉院空しょうそういんそら

厘香の兄で組織を動かしている。

中学に入ってから一度も会わなかったが、

いつの間にか偉い人になっていたものだから驚く。


「お、お久しぶりです」

「まさか、お前が適性者だったなんてな。

 態度と素質に差がある奴はそうそういない」

「へ?」

「今日も姉に起こされたくらいだから、

 頭の回転が回しにくいのだろう?」

「!?」


図星を突かれてビクッとした。

実はこの人、目が見えない。

対してか、心が読めるんじゃないかと思うくらい

他人の行動心理を把握できる。

伊達に28歳で組織を引っ張っているだけはある。

ただ、会長はまだ父親が就いている。

父、無影むえいさんが実質TOPであるものの、

最近体調が良くなく、しかもここで数人被害も出てしまい

全てを息子に任せる流れに変わってきたという。

学園の件から順に話して有り様をまとめた。


「そうだったんですか、こんな時に人員整理で。

 無影さんに変わって今回の騒動を閉めようと」

「親父も、もう年だ。

 剣道ばかりやっているが、

 親父は親父で自分の道を行くしか考えてない。

 だから、俺が継いで引っ張っていかなければ」

「警察と自衛隊に何があったんですか?」

「新装備、作戦展開で会議が揉めたらしい。

 他県の工場の運搬も巻き込まれていた。

 不仲もある。

 高橋と武田の間でズレが生じているからな」


先の警察と自衛隊の間で、食い違いがでて

晃京の供給調整に乱れが現れてしまった。

最も悪影響を及ぼすのは食料事情で、

食品工場の交通が鈍くなる恐れがある。

ここは大半が他地方に頼っているので、

すみやかに事件を収束させる事をせがまれた。


「そんな中、科警研が回収に協力しろと要請にきた。

 いずれ、お前にアプローチがくる。

 出来るだけ背中を押してやるから期待しているぞ。

 俺個人としても・・・な」

「女みてえな面してっけど、頭に見込まれた程だ。

 まあ若ぇし、ヘマすんなよ」

「が、がんばります・・・」


防衛ラインについての事情がこの家の主。

2番目の組織の話でさらに厄介な事になった。

今日からこの人達とも縁をもつ事になる。

厘香の家系のすごさを今更ながらに思い知った。

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