第28話 裏の境界

 裏の部屋の夢を見た。


 裏、というのは、自分の母親が破産した父親が残した金で何とか買った旅館で、約六年で出る事になったが、小さい頃はそこにいた。


 そこは、近所の家との境界で狭い路地があって、泊まる部屋ではなく、今から思えば、女中部屋か布団部屋に使う所だったのだろう。


 そこに老いた父親と二人、日がな一日、過ごしていた。


 老いた、と書いたが、自分が53歳の時の子供だから、今の自分と大して変わらない年齢だ。


 自分の原風景を思うと、あの頃の旅館暮らしが良く出てくる。


 裏の部屋と言っても、窓は大きく、路地には雑木が植えてあった。


 夢の中で、大きな窓と違う方向の、違う角の方向に窓があり、眼鏡をかけた少女が二人、笑いかけて、しきりに、遊びに行こうと誘ってくる。


 夢の中で寝ると、起こされて、その二人がまた、遊びに行こうと誘う。


 そこは路地で行き止まりだという事が判って行ったから、行かなかった。


 路地を回って、表に行こうという事だったのかもしれない。


 もし、そこ抜けて行っていたら、どうなっただろう。


 

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