第36話
「えっとですね。お兄様。ここは……」
「うんうん」
僕は上機嫌な小夜に勉強を教えてもらう。
さっきまでは見たことないくらいに不機嫌だったのに。
どうしたのだろうか?
悠真と神奈が知恵熱を出して倒れてしまったので、僕が小夜に勉強を教えてもらうことになったのだ。
前回は全然勉強しないでテストに望んじゃったから、今回は真面目に勉強して学年一位を目指そう。
僕は黙々と問題に取り組み、わからないところがあったら小夜に聞いてを繰り返した。
■■■■■
「んー」
僕は手を一旦止め、大きく背伸びをする。
もうかれこれ3時間くらいは勉強していた。
ずっと同じ体勢でいるの辛い。
「ねぇ、君たちはいつになったら勉強を再開するの?」
僕は部屋の隅っこでスマホを弄っていた二人に視線を向けた。
「「ギクッ!」」
二人はピッタリとタイミングを合わせてビクつく。
「え、えっと……その……」
神奈が目を泳がせる。
「帰る?」
小夜がびっくりするくらい冷たくどすの利いた一言を神奈に浴びせる。
……小夜?
いつもの優しげな声はどこに消えてしまったの?
最近冷たい声多くない?
びっくりだよ?
「やります!勉強をやらせてください!」
神奈はすごく俊敏な動きで土下座の態勢に入る。
……今、僕と似たような力まで使って動かなかった?
「……ッ」
ほら、見てよ。
いきなり神奈が土下座するから小夜が眉をひそめているじゃん。
「いやぁ。わりぃ。わりぃ。じゃあ風和。俺に勉強を教えてくれよ」
悠真は一切悪びれる様子を見せず、僕の隣に腰を下ろし勉強道具を広げる。
「ん。いいよ」
僕は一旦自分の問題集を下げて、悠真が机に広げた勉強道具に視線を向ける。
「……え?」
神奈は呆然と勉強を始めた僕と悠真を見る。
「……あ、あの……風和?べ、勉強を私に教えてくれな、い……?」
「ん?今僕は悠真に教えているから。小夜に教えてもらってよ」
神奈がゆっくりと小夜に視線を向ける。
小夜は身体のすべてを使って不機嫌だということを表現していた。
「来い。教える」
小夜は簡潔に告げる。
「はい!」
神奈は俊敏な動きで小夜の隣に座った。
だからまた力を使っているよ。
少しは隠そうとしようよ。
確か君たちの組織も表社会から存在を秘匿しているんでしょ?一般人にあの化け物のことが知られたらパニックになるとして。
そんなことを以前耳にしたことがあるような気がするよ。
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