第29話

「醜い……実に醜いな」


 僕はなんか適当にそれっぽい事言いながら中に入る。

 壁をぶち破った先にあったのは広い空間。

 そこにはそよ風のような魔力を漂わせる変な大男とストーカーさんたち集団。

 何をしているのだろうか?


「刹那様ッ!」


 ストーカーさんが僕に何かを期待するかのような視線を向ける。

 ……え?僕は一体何を期待されているのだろうか?

 ……教育かな?

 僕はそよ風のような魔力を漂わせる変な大男のほうに視線を向ける。

 この大男は僕と同じく魔力を持っているというのに、使い方がなっていなかった。

 つまり……こいつに魔力の使い方をレッスンしてくれ!っていうことだね!間違いない!


「魔力の使い方を教えてやろう……」


 僕はそれっぽいことを言った後、体内の魔力を開放し刀を抜く。

 そういえば昔もこんな真っ白なところで戦ったことがあった気がするわ。

 なんか子どもたちを使ってエゲツない人体実験していたから潰した記憶が僕の脳髄の端っこのほうにある。

 あー、それがあれか?ブリュンゲルのアジトだったけ?ん?あれ?

 まぁうん。詳しくは全然覚えていないや。

 興味もないし。


「バッ、バカなァ!」


 僕を見て大男は大声を出し、大げさに驚く。

 そんなに驚くことがあるだろうか?


「さぁ、どこからでもかかってくるがいい……」


 僕は構えもせず、自然体のまま立つ。


「なっ……なっ……なっ……」


 大男が僕に切りかかってくることはなく、驚きに満ちた顔でわなわなと身体を震わせながら立っていた。


「そんなのあり得るかァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」


 気合一閃。

 いきなり、大きな声と共に斬りかかってくる。

 おっ。元気があることはいいことだよ?


「足りない」


 僕は大男の剣を弾く。


「アァァァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」


 大男は叫びながら刀を振るい、僕は刀で弾く。

 大男はあの手でこの手で僕に攻撃を与えようと頑張って剣を振るう。

 それを僕はひたすらに弾く。

 ……ちょい暇。

 ……あっ。そうだ。

 僕はくるくると回る。

 刀を持つ手を右手から左手へ。順手から逆手へ。手から足へ。

 ちょっとおもしろい。

 よっ、ほっ、はっ。


「これ以上は無駄だ」


 僕は回るのに満足した段階で大男の剣を弾き、お腹を蹴り飛ばす。

 大男は壁にまで飛ばされた。


「くそっ……ありえない……ありえないのだッ!負けるなどッ!」


 大男は僕を思いっきり睨みつける。

 ふぇ?

 なんで僕のことをそんなに強く睨みつけるの?


「……っ。この甘ちゃんが……」


 甘ちゃん?

 僕は甘いものが好きだよ?


「おらッ!」


 大男は瓦礫を掴むと、全力で投擲した。

 僕の方へと。

 いや、違う。

 僕の後ろの子どもたちへと────。

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