その11

「そういえばファルコン、最初に太郎さんの遺体見つけたのって、ファルコンなの〜?」

 先生の口調があまりにフランクかつフワフワなので、殺人事件の話をしている感じが一切しない。

「ううん、二郎兄。二郎兄、幽霊の声のこと実は結構気にしてたかんね~」

 春子さんはいかにも可笑しそうに笑い声をたてた。

「え〜? 意外なんですけど〜」

「でしょ〜? あの二郎兄がねぇ。でも実際一郎兄が死んじゃったあと、よく一郎兄の部屋に出入りしてたよ〜」

 おれも意外だ。二郎氏は幽霊を信じそうなタイプには見えない。一郎氏の部屋に出入りしていたのは、何かほかに理由があったのではないだろうか……と考え出すと、今度はにわかに二郎氏が怪しく思えてきてしまった。

 もしや後継者の座を急いで手に入れようとした二郎氏が、兄と父親を手にかけたのではないだろうか? 遺体の第一発見者というのも犯人っぽいポジションだし……。

 いや、とおれは首を振った。すぐに結論に飛びつこうとするな。さっき先生に言われたばかりじゃないか。

「ちな、ファルコンはそのとき何してたの〜?」

「へへー、実はあたしも、一郎兄の部屋でお化け撮れないかな〜と思って、一郎兄の部屋にいくとこだったんだよね〜」

「マジで? 勇気パないな?」

「えへへ〜、ワンチャンバズらないかなーと思って。そしたらドアが開いてて、中から真っ青になった二郎兄が出てきてさ〜」

 ファルコン、図太い。

 彼女の話をまとめると、まず二郎氏が太郎氏の死体を発見し、それから春子さんがそこにやってきた。その後、外を通りがかったお手伝いさんも死体を目撃、そしておれたち四人が呼ばれたということらしい。春子さんが見たときには、太郎氏はすでに血まみれで動かなくなっており、一目で緊急事態だということがわかったという。

「そっか〜、ファルコンありがとね〜」

「どもども〜。まぁあたしの印象だけどぉ、パパって最近、二郎兄とギスギスしてたんだよね〜。だから何っていうんじゃないけど一応ね〜?」

 ファルコン、爆弾発言多くない?

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