獣人族の護衛(12月3日分)

次の仕事が決まった。獣人族の商人の護衛だ。

これは少し珍しい仕事だと組合で言われた。

獣人族は東方の砂漠に住み、商売以外で他国人とは関わらないらしい。

商売をするのが小柄なフェアル、護衛をするのが大柄なティトンと呼ばれる者たちで、身内しか信用しないそうだ。


ともあれ話は決まったので、護衛頭ごえいがしらであるビィーリャに話を聞いた。

今いるのはジェロースという国で、地図で言えば大陸の中心からやや南だ。

行き先はセラムで、ここから真っすぐ西に向かい、大陸の端まで行く。

その国は浮上大陸に住むエルフ族と、唯一ゆいいつ交易を行える国だという。


だが旅立ってすぐ、運悪く狼型の凶獣に襲われた。

しかも3頭で襲ってきて、少し前方へ向かった2頭を追って護衛の多くが離れた隙に、残りの1頭が真横から飛び出してきた。

小柄なフェアルを狙ったようだ。

俺はギリギリ間に入ったが、肩を噛まれ爪で腕を裂かれた。

他の護衛が駆け戻って来て、なんとか追い払えた。


戻って来たビィーリャは、俺の怪我を見て驚き、薬を取り出した。

だが俺の体には薬も魔法の治療もほぼ効かない。

そう言うと非常に困った顔をされたが、止血すれば割とすぐ傷は治る。


包帯を巻いてそのまま護衛を続け、1時間後にビィーリャに傷を見せた。

傷跡はまだあったが、ほぼ治っていた。

余計に驚かせてしまったが、彼は同時にホッとしたような顔をした。

よほど心配してくれたようだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る