第106話 強敵


 そして俺たちは再度戦いの場へ突っ込んでいく。


 魔物たちと戦って、理解した。

 さっきよりはるかに手強い。格好もさっき戦っていたやつらよりもきちんとしているし、武器もよいものを使っている。

 コンビネーションもある。俺もそれに対抗するように、ニナと一緒に戦う。


 ニナが魔物たち複数体に攻撃を受けてしまう。攻撃の太刀筋から、ニナが俺たちの中で一番劣ると理解したのだろう。


 そして、ほかの魔物たちも次第にニナに攻撃を集中し始め、だんだんニナは押され気味になり、後退してしまう。


「ニナ!」


「先輩、私が行きます!」


 それでもニナは無理やり前に突っ込んでいく。

 そんなわけにはいかない。ニナは、俺と比べると体力も魔力も足りない。ここで攻撃を受ければ、間違いなく致命傷になってしまう。


 敵は強力な以上できる限り戦力は消耗させないでいきたい。だから、ニナを失うわけにはいかない。



「ニナ!」


 慌ててニナに向かって叫ぶ。敵たちはニナの方が俺やエリアたちより組み伏しやすいと理解したのか戦力を集中させてくる。


 最初はニナも何とかしのいでいたものの、徐々に押され気味になってしまった。俺も何とかニナのところに行こうとするが、目の前の敵がまだ多くて行くことが出来ない。

 そして──。


「キャァァァァァァッ!!」


 魔物たちの攻撃に耐えきれずニナの身体がのけぞる。そして、好機とみるや後ろにいたデュラハンがニナに突っ込んでいき、ニナに攻撃を仕掛ける。


 ニナは攻撃を受けきれず、ふっとばされてしまった。まずい──。

 このままではニナがどんどん攻撃を受けてしまう。


 仕方がなしに目の前に敵を無視してニナの方へと着込んでいく。


 そしてニナと魔物の間に立ち、攻撃を受ける。



 無理やりな体制で攻撃を受けた。俺もニナも後方に吹き飛ばされる。完全には防ぎきれなかったが、何とか致命傷は免れた。


 しかし、倒れこんではいられない。

 敵たちは、絶好の機会と言わんばかりに傘になって襲ってきた。


 全く、魔王軍の奴らはいつもそうだ。弱みを見せた相手には、一気に強くなる。要するに弱いやつには強い。

 そして、勝てない敵とみるやすぐに腰が引けて逃げ出す兵士が出てくる始末。


 基本的に、弱い奴には強く、強い奴には弱いのだ。


 だからこっちが少しずつ強さを見せていけば、こいつらはだんだん恐怖心が生えていき逃げ出していくのだ。


 油断せずに、1体ずつ倒していく。集団戦なら強さを発揮するが、ニナと一緒に敵を分断して1対1を作り出していけば、十分に戦える。個人の実力自体は、そこそこ強いといった感じで十分勝てる強さだ。


 ニナはすぐに立ち上がり、戦いに加わる。


「すいません」


「いいよ、それより──頑張ろう」


「はい! 先輩」


 ニナの表情が、はっと強気なものになる。まずは、気持ちを前に向かすことだ。

 油断せず、実力を出していけば負ける相手ではない。


 俺もニナも、すぐに立ち上がって前を向いた。もう、目の前にはデュラハンやオークなど魔物たちが迫ってきている。


 焦ったりせず、ニナと一緒に徐々に相手を追い詰めていく。


 それから、敵が半分後のまで減った時、事件は起こった。


 デュラハンにオーク、灰色の光をまとった闇の騎士たちが一斉にコクリと意思を合わせるかのように頷く。


 何かが起こると判断しすぐに身構えた。そして──。


 バッ!!


 一斉に周囲の魔物たちがニナに向かって襲い始めたのだ。さっきもそれはあったが、今回は速度が違う。


 まるで、全員が意思を共有しているかのように──。慌ててニナの方に駆け寄る。


 ニナは動揺しつつもしようとするが、敵の数の前に圧倒され、体を吹き飛ばされてしまう。地面を転がるように回転させた後、すぐに立ち上がろうとするが、すぐそこにまで魔物たちが迫っていた。


 すぐそこまで近づいていた俺は、ニナの元へと飛び込んでいく。間一髪でニナと兵士の間に割って入り、ニナを後ろに突き飛ばしてかばう。しかし攻撃をかわし切れずに方に傷を負ってしまった。


「先輩!」


 ニナが思わず叫んでこっちへ向かって来る。すぐに、叫んで言葉を返した。


「来るな! 戦いに専念しろ」


「あ……」


 ニナは、驚いたのだろうか、言葉を詰まらせてしまった。当然だ、戦いの最中だ。動揺して隙を見せていてはそこで敵に付け込まれてしまう。


 特に、敵からはすでにニナの方が倒しやすいとバレてしまってる。現に、後ろには魔王軍の兵士。


 ニナ、それに気づいたようで慌てて対応。


 エリアとビッツも、こっちに応戦してきた。


「まったく、ニナちゃんは詰めが甘いねぇ」


「エリアさん、すいません──」


「まあ、少しずつ強くなればいいよ。今は、一緒に戦おう」


 ビッツの言葉を皮切りに、俺たちは反転攻勢に入った。

 後ろではビッツとエリア、背中合わせに俺とニナがタッグで反撃。


「ちょ、ちょっと!」


 不思議と、息はぴったり合った。デュラハンたち魔物を、少しずつ倒していく。敵はニナを狙おうとするが、俺が割って入りそうはさせない。

 奇襲というのは、相手の想定外をつく代物。


 だからこっちがそれを理解していていれば何の問題もない。

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